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著…水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』

 水木しげる先生の次女・水木悦子さん、赤塚不二夫先生の長女・赤塚りえ子さん、手塚治虫先生の長女・手塚るみ子さんの対談集。

 「ファンから見た先生方の偉大さ」ではなく、「娘から見た父親としての姿」を知ることが出来る本です。

 三者三様に父の思い出を語ります。

 それぞれ、家庭が経済的苦境に陥ったことがあるそうです。

 仕事が無い時代があったり、会社が倒産したり、経理のお金を騙し取られたり…。

 また、作家の家庭に限らず、どこの家庭も下ネタについての考え方が分かれるところですが、水木家はエッチ系は無くてひたすらおならなどの汚い系の下ネタを好み、赤塚家は子どもが幼稚園児ながらにシンジュク・オンナ・サケという単語を覚えてしまう家庭で、手塚家はあまり下ネタは無かったけれどたまに父親が銀座あたりの大人のオモチャ屋で買ったオモチャをトイレや玄関に置いて人を驚かせていたそうです。
 …人が驚くのを見てニヤリと笑っている手塚治虫先生を想像すると面白いですね。

 また、水木先生が人にあだ名を付ける名人だったことを、わたしはこの本で初めて知りました。
 顔が大きな人を「航空母艦」、頭が細くて坊主頭の人に「ペンシル」と名付け、子どもと「いま誰が来ているんだ」「ペンシルだよ」「おー、そうか。ペンシルか。わかった」と会話していたというのが楽しい!

 赤塚先生はホームレスの人たちに「家に来いよ!」と声をかけて、みんなお風呂に入れてしまおうとする感じ。
 ある時、ニューヨークで赤塚先生が泥酔して路上で寝込んだので連れが起こそうとしたら、本物のホームレスの人たちが「仲間がいじめられている」と思って寄ってきたそうです。
 赤塚先生は色んな意味でボーダーのない人だと思いますが、なんと国まで超えて仲間としての連帯を築けるとは…!

 様々な思い出話から、娘たちから見た父親たちの様子が伝わってきます。

 出来るなら父から見た娘の姿も、水木先生・赤塚先生・手塚先生に対談して大いに語っていただきたいところですが、今となっては皆さん故人なのでそれが叶わず残念です(この本の単行本版第1刷が出版された2010年は赤塚先生と手塚先生は逝去済で水木先生は存命でしたが、2015年に水木先生も逝去)。

 わたしは特に、

「父が何をやっているかは、あまり興味が無かったんですよ」
「だから作品を必死に読み返すんだよね。作品の中にいる父を探すの」
「いまだったら生きていく上で抱えている悩みとか、父に相談したいと思うんだけど。もう、それはできないでしょ。だから作品の中で父が何を考えて、悩んでいたのか、大人になった自分が探す」
(単行本版P22から引用)


 という手塚さんの言葉にグッときました。

 娘が選ぶ父の傑作として、手塚さんが敢えて『ペックス』を選んだのもジワジワきます。
 『ペックス』は読む場所に要注意!!
 周りに人がいる所で読むのはおすすめしません。
 読んだら…終わる!! 社会的な意味で!!

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