ジョン・マスカー監督、ロン・クレメンツ監督『プリンセスと魔法のキス』
友情も、恋も、全てが素敵な映画。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
「あ、エヴァンジェリーンとレイがいる!」
わたしはこの映画を観てからというもの、夜空でひときわ大きく輝く星とそのそばに寄り添う星を見る度に、そう思うようになりました。
『ピノキオ』に出てくる女神さまのことも、エヴァンジェリーンのように思えてくるから、とっても不思議。
この映画には、レイという名前のオスのホタルが登場します。
レイは年老いていて、お尻の光らせ方を忘れてしまうこともあります。
だけど、熱烈な片思い中。
レイは、
「俺がホレてんのはエヴァンジェリーン。どのホタルよりきれいに光ってる。俺は毎晩話しかけてんだぜ。内気な彼女は黙ってる。俺は信じてんだ。いつか彼女と結ばれるって」
と嬉しそうに話します。
更に、
「彼女がいる。誰よりもすばらしいホタルだ。見えるだろ。あそこでキラキラ光ってる」
とウットリするのです。
…夜空を見上げながら。
そう。
レイは星に恋をしたのです。
自分と同じホタルは周りに何匹だっているのに。
「彼女はただの星なの! はるか彼方にある熱い大気の塊よ。真実に気づいたら? 心が傷つく前に」
と友達から諭されても、レイはエヴァンジェリーンに夢中。
この映画の中では、
「それは“望み”だろ。必要なものが分かってない」
という言葉も出てくるけれど…。
恋って、抑えようとしても、どうしようもないんですよね。
だって、好きだから。
客観的に見れば、レイにとって必要なことというのは、星への不毛な片思いを諦めることなのでしょう。
けれど、恋は止められません。
レイはほんとにいい奴で、エヴァンジェリーンの真実を残酷なほどハッキリと教えてくれた友達との友情も、決して揺るぎませんでした。
レイは友達のために闘い、そして…死んでしまいました。
最期の最期まで、エヴァンジェリーンのことを優しく見上げながら。
みんながレイの死を悼む中…。
夜空にまたエヴァンジェリーンが現れます。
それを見た誰もが大喜び!
なぜなら、エヴァンジェリーンの隣に、今までは無かったはずの、美しい星がいたから。
まるで恋人同士みたいに。
幸せそうに寄り添って…。
もしかしたら、エヴァンジェリーンの隣にはその星がずっと昔からあったのかもしれません。
けれど、きっとそれはレイ。
大好きな人のそばでとっても嬉しそうにキラキラと輝く、レイに違いないのです。