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オンラインブックフェア 『パンティオロジー』誕生記念 わたしの人生に寄り添う本3選 そう、それは一番素肌に近いパンティのように。

《ONLINEブックフェア》
『パンティオロジー』誕生記念 
わたしの人生に寄り添う本3選
そう、それは一番素肌に近いパンティのように。


期間:2020年5月30日〜パンティオロジーよ永遠に。
会場:note & 全国の本屋さん(募集中) 
              
本フェアは、アーティスト 秋山あい『パンティオロジー』(集英社インターナショナル)の誕生を記念して開催します。パンティがアートと考現学と合わさることで誕生した「パンティオロジー」。今回は、秋山さんにパンティオロジーに今一歩深く接するためのブックリストを、さらに、現代アーティスト、ファッションデザイナー、バレリーナなど、性別も職業も年齢も超えて、さまざまな方達に、パンティオロジーに倣い「セクシー/リラックス/お気に入り」をテーマに選書していただきました。

「パンティ」と「本」のデリケートな重なりあいをどうぞお楽しみください。

《書籍情報》
『パンティオロジー』
著者:秋山あい
出版社:集英社インターナショナル
出版年月日:2019年11月10日
ISBN:978-4-7976-7380-7
《ONLINEブックフェアとは》
インターネット上で開催するブックフェアです。毎回ひとつ「テーマ」を設定し、老若男女、ご近所さんから著名な方、日本、いや世界中、たまには地球外の生命体も……と、さまざまな方に選書&コメント、そして小文やイラストレーションを寄せていただきます。選者のみなさまは、随時増えていく予定です。このテーマで、この方に本を選んでほしいなという想いでお声がけさせてていただくことを続け、常に成長するブックフェアを目指しています。「本を選ぶ」ことを軸に、選者のみなさまの言葉や哲学に出会っていただき、オンラインブックフェアの読者のみなさまの好奇心の栄養、アイディアの糧、日々のヒントに繋がる場所にしたいという想いがこめています。選書いただいた本は、選者の手元にある本の写真も添えて紹介しています。写真からも、選者と選ばれた本の関係性を感じていただけたら嬉しいです。気になる本は、実際に本屋さんに行って手にとっていただけたら、このうえなく幸せです。  
《はじまる前にご案内とお願いです》
※本記事は有料です。一部無料ですが、ご購読いただくと選者さんのコメントや写真、コラムを最後までお楽しみいただけるとともに、フェアで紹介している本のリスト(PDF)をダウンロードしていただけます。

※本フェアは、選者さんが増えるなど成長を続けます。ご購読者さまには、更新の都度、お知らせメールをお送りいたしますので一緒に成長するフェアをお楽しみください(更新時の課金は不要です)。

※店舗やECで本のフェア開催に興味のある本屋さんには、ブックリストをお送りします。お気軽に、「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

※フェアに掲載されている全ての内容は、営利目的での許可のない転載や二次利用はご遠慮ください(感想は大歓迎です!) 

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それでは!! どうぞ最後まで、

オンラインブックフェア
『パンティオロジー』誕生記念 
わたしの人生に寄り添う本3選
そう、それは一番素肌に近いパンティのように。

をお楽しみください。

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はじめに)はじまりのコラム「いちごのパンツ」
(文:なかむらしょうこ/本屋しゃん)

中学生のわたしは、深夜ラジオが好きだった。
いや、よく考えたら深夜という時間帯が好きだったのかもしれない。みんなが寝静まった家の中。こっそりとリビングに行き、テレビの電源をつける。テレビは妖しく青白く光り、お笑い番組なんかを映しだす。

なんだかイケないことをしている。見ちゃいけないものを見ている。
そんな気持ちになる、あの時間帯が好きだった。
9.11は「タモリ倶楽部」でお姉さんのパンツに心躍らせている時に起こった。

テレビ以上にイケないことをしている気持ちになったのがラジオだった。
ラジオが聴けるCDラジカセを布団の中に忍ばせて聞いていた。音が漏れないように最低限のボリュームで聴くラジオは、DJが耳元でささやきかけてくるようで、ドキドキした。視覚情報がない分、妄想の羽をどこまでも広げることができて、楽しかった。仄暗い布団の中の、わたしだけの声、わたしだけの時間。

小さい頃から、サザンオールスターズが大好きで、必然的に「桑田佳祐のやさしい夜遊び」を愛聴するようになった。
布団の中での桑田さんとの夜遊びは、中学生のわたしにとって結構背伸びしている時間だった。

「どんな時に春を感じますか」
確か、その日のメッセージテーマはこんな感じだった。

桑田さんは答える。
「原坊がいちご柄のパンツを履きはじめたら」
思わず想像してしまったが、きゅんとした。

パンツは、愛も季節も閉じ込めちゃうのね。

『パンティオロジー』で秋山さんも書いているように、パンツからパンティへと変化するターニングポイントがあって、10代から20代はじめにかけてがパンティ冒険期だという女性が多いかもしれない。多分に漏れず、わたしも中学生の頃、冒険をはじめていた。もう、パンツは卒業よ、と。パンツなんて子どもが履くものだもの、と。

しかし、である。

桑田さんが春を感じる原坊のいちごのパンツ。
セクシーでリラックスできて、お気に入りのパンティって、こういうことなんだなあと、齢30を越えたところで気づいた。

パンティは、ご多忙申し上げます。

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1)パンティオロジーとは

「パンティオロジー」とは、アーティストの秋山あいさんが作った新しい学問的アートプロジェクト

国籍、年齢、職業など、さまざまな女性に、所有しているパンティの中で、

1.いちばんセクシーなもの
2.いちばんリラックスできるもの
3.いちばんお気に入りのもの

の3枚を選んでもらい、それを買った時の状況や思い出、感情を話してもらう。取材後に、秋山さんが絵と文に起こし、ナンバリングをしたうえで、ファイリングをする。例えばこんな風に……。

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(画像:『パンティオロジー』より)



「パンティオロジー」は以下のような方程式でできている。


「パンティ×アート×考現学=パンティオロジー」

もともと、身の回りにあるオブジェーカフェオレボウルとか、靴とか、忘れられない風景とかーを、絵に描いていた秋山さん。その延長で、ある日、自分のパンティを描いてみたら反響があったので、引き続きパンティを描き続けてみた。しかし、自分のパンティだけ描いていても、なんだかワンパターンでつまならい。

「ところで、他の人ってどんなパンティを履いているのかしら」

そう、きっかけはちょっとした好奇心だった。他の人のパンティを妄想する日々。すると、かねてより尊敬をしていた学問「考現学 Modernology」が、秋山さんの頭をよぎる。「考現学」とは、1927年に今和次郎によって、提唱された学問。人々の行動に関するものやことー居住、衣服、新婚生活などーを徹底的に調査、観察、さらにそれらを精緻にメモやスケッチすることで採集し、日々刻々と変化する都市の風俗を分析、研究する試みだ。

これだ。国籍、年齢、職業……さまざまざな女性のパンティについて考現学的視点で研究をしてみよう。さらに、対象となるパンティは、絵に描いて採集しよう。

こうして、日々の延長で描きはじめた自分のパンティの絵が発端となり、パンティとアートと考現学が邂逅することで「パンティオロジー Pantieology」は誕生した。

それから、秋山さんは100名以上の女性にパンティの取材を行なっている。
取材対象者には3枚のパンティを選んでもらうわけだから、100名以上の方に取材をしてきたと言うことは……実に採集したパンティの数は300枚以上にもおよぶ。

そんな300枚ものパンティから
・人生のさまざまなシーンごとに、パンティは履きかえられる
・パンティを選ぶ基準は社会的状況や文化が密接に関わっている
・パンティには持ち主の哲学が宿っている
こんな研究結果が見えてきたようだ(文:なかむらしょうこ/本屋しゃん)。


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2)アーティスト秋山あい とは何者だ

それにしても、パンティと考現学をかけ合わせてしまう、「秋山あい」とは、一体何者なのか。ここで、プロフィールをご紹介しよう。

秋山あい(あきやま・あい)
アーティスト。1973年、東京生まれ。
'93年にフランスに渡り、'99年ボルドー・エコール・デ・ボザールを卒業。以降、パリと東京を拠点に創作活動と作品発表を行う。
個々の暮らしや風俗を観察することで、今を生きる人々の物語を覗き見ようとする「考現学的視点」をテーマに、日常生活のモノや出来事、建物などのドローイングを多く描く。またフォント作品を使ったイラストレーションなども行なっている。

わたし、なかむらしょうこが、はじめて秋山さんにお会いしたのは、恵比寿のギャラリー山小屋での「Pantiology―秋山あい『パンティオロジー』出版記念展」にて。真っ赤なワンピースとTHE ボブ! なキュートなヘアスタイル。そして何より、とっても素敵な笑顔で、なんてかわいらしくて素敵なお姉さんなんだと、ぐわっと心を鷲掴みにされました。あたたかくてのびやかな絵は、まさに秋山さんのお人柄がにじみ出ているんだなあと、合点がいった出会いでした。

※2人の出会いについてはこちらの記事をどうぞ→https://note.com/honyashan/n/nf8d8f8cec797


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3)「パンティオロジー」に寄り添う本たち 7選!
(選・文:秋山あい)

秋山あいさんに新学問「パンティオロジー」が誕生するにあたっての大切な本、影響を受けた本などなど、パンティオロジーを形成する思想や哲学の礎となっている本を7冊選んでいただきました。

『考現学入門』著:今和次郎、編:藤森照信(ちくま文庫、1987)
民俗学研究者として柳田國男に師事し、農村や民家の研究をしていた今和次郎。関東大震災直後、焼けつくされてしまった東京の土にじっと立っていた。「そこにはみつめなければならないことがらが多いのを感じた」ゼロから歩み出す街の容態を記録しようとバラックのスケッチから始まったのが「考現学」だという。

例えば「東京銀座街風俗記録」。京橋〜新橋間をある一定の速度で歩いて、前から来た人が素足なのか足袋なのか? や、紳士の髭はどんな形なのか? などを調査して記録したもの。そしてまた「新家庭の品物調査」。ある家のタンスや押入れの隅々まで、ひとりの人の所有する全品物を調べてあげて並べると、その人物の特徴が浮かび上がってくるのだ。調べあげるその細かさったら驚きである。「現代人の生活ぶりを動物の行動や習性を注意する観点と同じ立場から見る」を徹底的にやるその姿勢には強く憧れる。そしてそれらを記した文章やスケッチに愛嬌があるのが何より好きだ。人々の暮らしを客観的にかつ同じ目線で捉える、そういった点に愛着と尊敬の念を感じる。この人のもとで学んでみたかったなぁ。『パンティオロジー』の発想の礎となった本(文:秋山あい)。

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『路上観察学入門』著:赤瀬川原平、 編:藤森照信 南伸坊
(ちくま文庫、1993)

赤瀬川さんや南伸坊さん、林丈二さんの本が父親の本棚にあった。「観察を楽しむ」を表現すると、面白がってくれる人たちが集まって、その想いを共有することができる、という事を教えてくれた。ひとりっ子で妄想癖のあるわたしには朗報であった。街の中の無駄かもしれないもの、普段の生活では気にも留めないものたちが、移動速度を変えてみると見えてくることがある。そんな遊びを仕事にしている大人たちがいることを知って、悪くないなと思った(文:秋山あい)。

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『Tokyo Style』著:都築響一(ちくま文庫、2003)
90年代半ばごろ、当時は20代前半のフランス地方暮らし。インターネットはまだないし、日本人の友人も周りにいない。そんな環境でホームシックになると、この写真集をめくってい た。わたしが手放してしまった東京がここにあるような……。今でも胸のあたりがぎゅーんと なる、大事な本。インテリア雑誌で紹介される様な衛生的な部屋ではなく、そこに生きる人間の物語がここには写っている。『パンティオロジー』への影響は大きい(文:秋山あい)。

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④『スカートの下の劇場』著:上野千鶴子(河出文庫、1992)
『パンティオロジー』の企画を始めてから間もなく、必然的に出会った一冊。恥ずかしながらそれまでは存じ上げなかったのだが、個人的にはベストなタイミングで出会えたと思っている。ランジェリーの何の知識もなく始めたアートプロジェクトだが掘り下げていくに連れ、パンティを通して世界を再発見している。この本はそんな想いを後押しし、学ばせ続けてくれる心強い一冊だ(文:秋山あい)。

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(秋山さんがお持ちの本はこちら↑ 2019年に新装版が刊行されている)

⑤『わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい 』
著:鴨居羊子(ちくま文庫、2007)

日本初のランジェリーデザイナーとしてだけではなく、エッセイ、イラスト、人形作りなど多くの才能に花を咲かせ生きた女性のパワーが、みしっと詰まった本。ちょっと気持ちが弱くなりかけた時などに開いてパワーチャージしている。楽しいことはやり尽くせないや。
まだまだだ(文:秋山あい)。

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⑥『だるまちゃんとてんぐちゃん』作・絵:加古里子 (福音館書店、1967)
てんぐちゃんの持ち物を羨ましがっただるまちゃんが家へ帰って、ありとあらゆるうちわや帽子そして靴やらを並べるシーンが好きでたまらない。大人になった今でもずっと眺めていたい。集めて並べるのことに興味を持ったのはもしかしたら、この本がルーツかもしれない(文:秋山あい)。

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りぶらりあ選書『考える/分類する―日常生活の社会学 』著:ジョルジュ ペレック 訳:阪上脩(法政大学出版局、2000)
「仕事机の上にあるいろいろな物についてのノート」はそのタイトルの通り、乱雑な仕事机の上にある物をひとつひとつ羅列する試みで、著者の性格や生活が浮かび上がってくるのが興味深い。わたしは、考現学的実験私小説と捉えている。(専門的にそのようにいうかは分かりません。)
また本棚にも個性がでるが、「本を整理する技術と方法についての覚え書き」は本の並べ方にどのような分類の可能性があるのかを考えたノート。本好きの人には、あるあるネタかも知れない(文:秋山あい)。

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4)みんなの選書
テーマ:わたしの人生に寄り添う本3選
「セクシー/リラックス/お気に入り」

「ふだん人に見せることのないその一枚の布から、個々の物語と時代性が浮かび上がるのではと、わくわくした」
「女性たちは人生のシーンによって、はくものを替えることがわかってきた」(上下ともに『パンティオロジー』「はじめに」より)

「パンティ」は「本」によく似ているのかもしれない。
本を読む際に、ブックカバーをかけ、何を読んでいるか覆った状態で楽しむ、そんな人は多いかもしれない。そんなこっそり読む本を収納する本棚は、一冊の本よりさらに秘められているかもしれない。自分の本棚を人様にお披露目する機会はそんなに訪れないし、いざ、見せるとなるとちょっと恥ずかしかったりもする。たまに、誰かの本棚を目にすると、その人の趣味嗜好、そう、性癖や哲学、そして人生を垣間見たような感覚に陥る。

さらに、本は日記のようだ。自分がどのような状況の時に購入した本なのか、何故読みたいと思ったのか、一冊の本から自分の過去を振り返り、その時の感情を呼び起こすことができる。本は常に人生のあらゆるシーンに寄り添う。

「パンティ」にも「本」にも、持ち主の性癖や哲学が宿っている。
「パンティ」も「本」も、あなたの人生のさまざまなシーンに寄り添っている。

そこで、今回は、パンティオロジーの取材で用いられている手法に倣って「セクシー/リラックス/お気に入り」の3つのテー マで、本を選んでもらった。

一番素肌に近いパンティ のように、
みなさんの好奇心という素肌に寄り添ってくれる本に出会えますように(文・なかむらしょうこ)。

読書ポーズピンクタイツ-aiakiyama

(絵:秋山あい)

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選書をしてくれたみなさま(50音順、敬称略)  

秋山あい(アーティスト)、ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン)、おおうちおさむ(グラフィックデザイナー)、籠谷シェーン(現代美術二等兵)、兼頭啓悟(書店員ちょっとお休み中)、苅田梨都子(ファッションデザイナー)、村中智(バレリーナ)&なかむらしょうこ(本屋しゃん)、今後、増えていくかもしれません。 

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