モノクロのイタリア~フェリーニ『道』(1954)
コロナ禍の1年の終わりに、たまたま録画して見た名画『道』。この作品、私にとっては、やや重たい内容で、10年に1回程度しか鑑賞しない。
傑作なのは間違いないし、役者も名人級。しかし、何か宗教的背景を感じ、放映されても、大体において敬遠気味なのだ。見終わると哀しい気持ちになるのが分かっていること、やや異様な絵作りに少し抵抗感があることも、消極的にさせる理由である気がする。
このように、『道』は私にとって、見るにあたって「構え」を強いるフィルムであり続けてきた。
だから、今回は方針変更。気楽にボンヤリ眺めることにした。
前よりリラックスした姿勢に関して、もうちょっと具体的に述べると、これを「ロードムービー」と見立てて臨んだということ。つまり、ヴィム・ヴェンダースの『パリ・テキサス』を見るときのような。
淡々と映像を追っていると、俳優の後ろのモノクロのイタリアの風景が、いぶし銀のような輝きで迫って来る。特に、海辺の光景が意識的に収められていることが分かる。
ちょうど再読中だったヘミングウェイ『武器よさらば』もイタリアが主な舞台。こちらの時代は第一次世界大戦で、場所は北部イタリア。『道』とは時空の隔たりがあるものの、登場人物たちが、閉ざされた国内空間を、抗しがたい力に押し流されるように彷徨う姿は同じ。
『道』に、世界戦争との目に見えぬ連続性を感じるのは、私だけだろうか。