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【ココロコラム】管理職必読!心理学的アプローチから読み解く「部下がついていきやすい上司とは?」

大人の人間関係でどうしても現れてくるのが、上司と部下という関係です。おたがいに相手を選べないのにもかかわらず、適当にうまくやっていく必要はあるという、微妙な関係です。これを読んでいるあなたも、いずれは(あるいは今現在)部下を持つ人が多いと思います。今回はその際に知っておくといい心理学的エッセンスをご紹介したいと思います。

人間は無意識のうちに他人の性格を自分なりの尺度で分析し、好き嫌いを出しています。特に、友人ではないけれど、知っている人(例えば上司や部下など)の場合、よりシビアな見方をしているものです。他人を判断する尺度にはいろいろありますが、ここでは心理学者、林の研究によるものを紹介します。それは【個人的親しみやすさ】【社会的望ましさ】【力本性】の三つの軸です。

【個人的親しみやすさ】とは、あたたかい、やさしい、人なつっこい、明るい、愛想がいいといった個人的親和に関する事柄です。

【社会的望ましさ】とは、誠実である、知性がある、信頼できる、道徳的だ、良心があるというような、知性や道徳性に関する事柄です。

【力本性】とは、社交性、積極性、外向性、大胆さ、意欲といった、活動性に関する事柄です。

例えば「あの人はやさしくて社交性もあるけど、ちょっといいかげん」という場合、【個人的親しみやすさ】と【力本性】については高得点、【社会的望ましさ】については低得点の見方をしているということになります。

友人に関してはもちろん【個人的親しみやすさ】があるから友人関係が成立しているわけですが、上司や部下だとそういうわけにもいきません。上に立つ者が持ち合わせているべきものはなんでしょうか?

これには心理学者、豊田の「大学生に好かれる大学教官と嫌われる教官」についての調査が参考になります。予想通りというべきでしょうが、教官の好き嫌いを分ける決定的条件は、【社会的望ましさ】や【力本性】ではなく、【個人的親しみやすさ】だという結果が示されたのです。上の立場にある人が下の立場の人に好感をもたれるには、まず【個人的親しみやすさ】を持っているべきだということです。

ところで、大学教官というのは講義でしか生徒との接点がありません。コミュニケーションが薄い中で【個人的親しみやすさ】を感じさせる要因というのは何でしょうか? これは回答から言ってしまえば、親しみやすく、おもしろい話し方と、適切な声の大きさの二つの要因が非常に大きいことがわかっています。

話し方は、外見的魅力と同じかそれ以上の効果があるという調査結果が出ているぐらいです。立場が上だからといって、態度の大きい話し方をするのは、確実に効果を下げるということです。

声の大きさについては、大きすぎる、あるいは小さすぎる、いずれも評価が下がることがわかっています。声が大きすぎれば押しの強い、ずうずうしいタイプと思われますし、小さすぎれば、消極的で魅力に乏しいタイプと判断されます。適当な声量でしゃべることは、思った以上に人の印象を決定する大切なことなのです。

つまり、上司として上に立つ際に部下に好感をもたれるには、まずなにはさておき、部下一人ひとりに人あたりよく接し、【個人的親しみやすさ】を獲得するのが、まじめに仕事をするといった【社会的望ましさ】や、積極的に組織内のプロジェクトを進めていくといった【力本性】より大切なことなのです。

そして、その際気をつけるのは、やさしく面白い話し方と適度な声の大きさ。これを心がけておくだけで、好かれる確率が大幅に上がり、部下もついていきやすくなるのです。

(精神科医・西村鋭介)

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