![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117525562/rectangle_large_type_2_df4738fda196970e25e7c0eb92dfcdda.jpeg?width=800)
【不只是圖書館】工場内の浴場を再整備した私設図書館|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(11)
台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作『台北・歴史建築探訪』。このほど発刊される増補版では、初版の171件に加えてコロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど40件が追加されています。この連載では、『増補版 台北・歴史建築探訪』より一部を転載し、ご紹介致します。
![](https://assets.st-note.com/img/1696471420487-3TUWZswytN.jpg?width=800)
専売局松山工場は市内最大規模を誇る産業施設だっただけに、工員の生活を支える様々な施設があった。浴場もその1つである。ここは元女性用浴場であり、詳細は不明なものの、築80年を超える建物であることは確かだ。工場としての機能が移転した後は、長らく倉庫となっていて、全体が荒れるに任された状態だった。
ここを整備したのは気鋭のデザイナー・邱柏文氏だった。邱氏が率いる「柏成設計」がデザインを担い、修復が進められた。その際、設計概念となったのは「本があふれるお風呂。そして、そこ浸かれる文化空間」というものだった。建物が持つ趣や歴史性ばかりでなく、浴場という機能をも意識し、全体をまとめたという。
![](https://assets.st-note.com/img/1695979933095-PmljUN3pjF.jpg)
その奥にある浴場には半円形の浴槽が健在で、桶などのアイテムもさりげなく置かれている。タイルや木製の窓枠は往時のものが残されており、窓に向かって席が設けられている。庭にはハーブやシダ植物など、台湾原生種を中心に約100種が植えられており、それらを愛でながら、読書が楽しめる。
![](https://assets.st-note.com/img/1695979883937-BouuDDFvHQ.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1695979979447-0VgGzabDgj.jpg)
ここは台湾では珍しく、有料の私設図書館となっている。そのため、ワーキングスペースとして利用する常連が多く、浴場跡に配された机も広めになっている。デザインや芸術、建築に関する雑誌はもちろん、書籍も約1万冊が揃っているため、幅広い層が訪れている。元浴場をリノベーションした斬新な歴史再生空間。講座やトークイベントも開催されており、台湾のデザインシーンを牽引する場としても機能している。
![](https://assets.st-note.com/img/1695980223032-GuwXyV44sg.jpg?width=800)
「泡書區」は本のお風呂に浸かるというコンセプト。浴場の雰囲気を残しつつ、新しい文芸空間が創出されている。
文・写真=片倉佳史
──今回発刊された増補版では、コロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど、実際に訪れたくなる約40件を新たに追加して計211件が掲載されています。美しい建築写真をご覧になり、日本人と台湾人がともに暮らした半世紀を振り返れば、きっとまた台湾を旅したくなるはずです。ぜひお楽しみください。
▼本書のお求めはこちら
片倉 佳史 (かたくら・よしふみ)
1969年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。武蔵野大学客員教授。台湾を学ぶ会(臺灣研究倶楽部)代表。台湾に残る日本統治時代の遺構を探し歩き、記録。講演活動も行なっている。妻である真理氏との共著『台湾探見 ちょっぴりディープに台湾体験』『台湾旅人地図帳』も好評。
●ウェブサイト「台湾特捜百貨店」
▼連載バックナンバーはこちら。フォローをお願い致します!
よろしければサポートをお願いします。今後のコンテンツ作りに使わせていただきます。