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幸せの記憶を紡ぐ100年の歴史 横浜のショートケーキ(神奈川県横浜市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2022年4月号より)

 ふわふわのスポンジ生地、真っ白なクリーム、甘酸っぱいイチゴの最強トリオ。見るだけで楽しい思い出がよみがえる。

 ケーキといえばまず思い浮かぶこのショートケーキ、実は日本で生まれたものだ。

不二家 人気のプレミアムショートケーキ(国産苺)

 元祖については諸説あるものの、横浜発祥の老舗洋菓子店「不二家」で考案されたという説が有力だ。1922(大正11)年に元町店*と佐木ざきちょう店(現横浜センター店)で売り出されてから、今年でちょうど100年になる。

*元町店は1924(大正13)年に閉店

横浜センター店は1938年完成のモダニズム建築

 それからずっと、家族の団らんやお祝いの席などで、日々の生活を明るくしてくれる特別なものとして私たちのそばにあった。不二家では発売100年を記念して、月替わりで限定のショートケーキを販売する企画が進行中だ。

72年前に誕生したペコちゃんは、永遠の6歳!
ⒸFUJIYA 

 横浜らしい明治期の西洋館を再現しているのは「しゃみち十番館*」。1階喫茶室でのいちばん人気ももちろん、ショートケーキである。

*1階喫茶室は利用可能ですが、4月28日まで館内改修のため休館します。
詳細はホームページをご確認ください

馬車道十番館のショートケーキ。
ふんわり軽く、ペロリと食べられる

「この丸い形もレシピも、1970(昭和45)年の創業時から変わっていません。古いものを大切にしていきたいですから」

 代表の本多はつさんが話すとおり、店内には横浜の歴史を今に伝える、数々の貴重なコレクションが飾られている。港町の賑わいを描いた浮世絵やアンティークのガラス器など、文明開化の香りに包まれて優雅な時間を過ごしたい。

馬車道十番館の正面には、
大正時代の電話ボックスと牛馬用飲水槽が。
ガス灯は開港当時のものを復元

 パティシエールRieさんのお店の名前は「ShortショートcakeケーキShortショートcakeケーキ」とストレートだ。

ShortcakeShortcake
ショートケーキの専門店を目指すRieさん

「ショートケーキが大好き。自分で食べたいから作り始めたんです」。クマのぬいぐるみでいっぱいの店内は、10歳の時から毎週ケーキを作り続けてきた少女の夢がそのまま形になったよう。週に何度も通う熱心なファンも多い。

小麦粉、クリーム、イチゴは
出身地の北海道産にこだわる

 幼い頃、Rieさんがケーキを食べて喜ぶと、家族もみんな喜んでくれた。ケーキは自分も、周りも幸せにしてくれる。そう信じた子どもの思いは間違っていない。

 100年の歴史がそれを物語る。

文=瀬戸内みなみ 写真=佐々木実佳

ご当地INFORMATION
●横浜市のプロフィール
近代日本で初めて世界に門戸を開いた港町だけに、ほかにも牛鍋やナポリタン、プリン・ア・ラ・モード、アイスクリーム、食パン、国産のソーセージやビールなど横浜発祥とされる食べ物は数多い。春の日長、歴史的建造物をめぐりながら横浜グルメを味わってみては。

●問い合わせ先
不二家横浜センター店
☎045-251-2105
馬車道十番館
☎045-651-2621
ShortcakeShortcake
Instagram:@shortcakeshortcaker

出典:ひととき2022年4月号

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