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月夜をめぐる旅

9月21日は、中秋の名月。澄み渡る夜空にひと際鮮やかな満月が浮かびます。その冴えた名月を愛でる習慣は、平安時代から続くのだそうです。天体写真家・中西アキオさんが切り取った月夜の世界を旅します。(ひととき2021年9月号より、一部抜粋してお届けします)

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パール富士

静岡県・山梨県
富士山の写真としては、大変人気の構図です。満月と富士山のコラボレーションは確かに特別で、神々しさを感じます。眺めるだけでも楽しめますが、一度、撮影してみるとよい記念になるはず。この写真は千葉県館山市から撮りましたが、富士山から近い場所のほうが撮影は簡単です。また月が沈むときと、昇るときでは、撮りやすいのは前者。月と山頂の位置やバランスがつかみやすく、自分好みの写真が撮れます。

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都市に浮かぶ満月

東京都港区
昨年12月31日の早朝、その年の撮り納めでお台場に行き、お月様に手を合わせるような気分で撮りました。海でも山でも遺跡でも、近代的な都市でも、どんな風景にも月は不思議とマッチします。特に月と都市風景のセットは、天体の壮大なスケールと、人類の進化や人間の営みが同時に感じられて、私もよく撮影します。月はずっと、私たちを見守ってくれているのだな、と思うのです。それも月の写真の魅力でしょう。

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水田に映る満月

長野県諏訪郡
長野県内の小ぢんまりとした棚田で撮りました。当日は星の撮影がメインでしたが、水田に映り込む満月がきれいで、思わずカメラを向けました。おそらく今回ご紹介している写真の中では一番、誰でも懐かしい気持ちになる一枚かもしれません。日本各地で似たような景色を見ることができますし、「日本の原風景」といえるでしょうか。

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八ヶ岳

長野県・山梨県
満月と山嶺と麓の町並み(長野県富士見町)をセットで撮りました。この日は、赤岳(八ヶ岳の最高峰)の脇から満月がのぼるということで、周囲にたくさんのカメラマンがいました。満月がだいぶのぼった段階で皆さん帰ってしまったのですが、どうしてもこの組み合わせの写真が撮りたくて、周囲が暗くなって町あかりが映える時間まで粘り、おさめた一枚です。麓の町に住む方々も、きっと、この名月を愛でているのでしょう。

写真・解説=中西アキオ

中西アキオ(なかにし・あきお)
天体写真家。1964年、東京都生まれ。小学生の頃から星に興味を持つ。大学時代、コマーシャルフォトグラファーのアシスタントをつとめ、一般企業勤務を経て独立。『星空撮影の教科書』(技術評論社)、『メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド』(誠文堂新光社)など著書多数。

▼中西アキオさんの著書

出典:ひととき2021年9月号


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