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郷土料理の第一人者とめぐる“東京のあんこ菓子”(ひととき2020年10月号特集のご案内)

10月になると、小豆は旬の時季を迎えます。「あんこ菓子」は全国各地に郷土色豊かな銘菓が揃いますが、東京のあんこ菓子とは一体どんなものなのでしょうか――。その答えを探すべく、ひととき10月号ではフードジャーナリスト・向笠(むかさ)千恵子さんと共に東京のあんこ菓子をめぐる旅に出ます。

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あんこからも目が離せませんが、表紙右上のドラえもんの幸せそうな表情にほのぼのとさせられます

 ほんのひととき編集チームのうさこです。ついに、ひととき10月号で「東京のあんこ」特集が掲載されます! 振り返れば、6月下旬のある日、社内で行われたあんこ菓子の試食会に幸運なことに同席させてもらいました。都内各店の和菓子をいただき、「美味しい……。今日で運をすべて使い切ってしまったかもしれない」なんて喜びを噛みしめているこちらをよそに、向笠先生と編集担当の齊藤さんは、「これはちょっと味がぼやけている」「餡はいいのだけど、皮が惜しい」「このお店の大福は味の風味が豊かですね」などと会話が止まらない。一つ一つの菓子について、ここまで語り続けることができるのかと、うさこは感心してしまいました。

 フードジャーナリストの向笠先生は、農水省の「本場の本物」の審査専門委員長も務めていて、本物の味や郷土料理、和食の現場を知る第一人者。そして、ひととき編集部の齊藤さんも、趣味で東京三大鯛焼きを車でまわって食すほど、大のあんこ好き。10年来の公私にわたる付き合いがあるというこのお二人が、「東京の美味しいあんこ」をひたすら追求するこの特集。うさこも非常に楽しみにしておりましたが、その仕上がりは……、期待を大きく上回るものでした! 齊藤さんに特集の見どころについてインタビューしました。

――試食会ではたくさんのあんこ菓子が用意されていましたが、誌面で紹介するものについて、最終的にどのように選んだのですか?

齊藤さん(以下、齊):味の良さはもちろん、昔ながらの手仕事を大切にしているかどうかや、接客なども重視しました。試食会の後も向笠先生から気になるお店の情報を頂いたらお菓子を買ってお届けしたり、先生とお店を訪れたり。かなりの数の中から選びましたね。 

――試食会の日、齊藤さんは朝からお店をまわっていたのですよね。

齊:はい。編集部で手分けしてお菓子を集めました。私は朝6時半から、都内の北から南に向けて全部で10数店舗。最南端の世田谷区桜新町の「タケノとおはぎ」に着いたのは午後1時半。行列に40分ほど並び、「売り切れたらどうしよう」と前に並ぶ女性と話していたところ、その方のところで、残りが4つになってしまい。女性が振り返って「1個でいい?」と譲ってくれて(笑)ようやく手に入れたのが、最後のひとつ、ココナッツとレモンピールをまぶしたおはぎでした。ほっとしたのも束の間、試食会に間に合うように、慌てて帰社しました。ものにもよりますが、「あんこは当日に作られたものを食べるのが一番」なので、必死でしたね。

 今回、特集で紹介したお店の中には、普段は取材拒否することもあるのに、「(店の評判だけでなく)実際に食べて美味しいと言ってくれたから……」という理由で取材に応じてくださったお店もあります。

タケノとおはぎ_夏のおはぎ3

「タケノとおはぎ」の夏のおはぎ。中央がココナッツとレモンピールをまぶしたおはぎ。特集の「東京あんこの新潮流」というコーナーで紹介されています

――努力が報われて何よりでしたね。さて、特集のタイトル「令和大江戸あんこ物語」ですが、江戸東京のあんこ菓子が栄えてきた過程のお話がとても興味深かったです。今回の特集では、向笠先生の故郷であるお江戸のまん真ん中・日本橋のお店を中心に取材されてますが、齊藤さんもこの辺りはよく行かれるのですか?

齊:はい。特に日本橋人形町の辺りは、歩いている人たちも穏やかな感じの人が多い気がして。私にとって心が落ち着く場所のひとつですね。

人形町から少し歩けば隅田川に出られます2

人形町から少し歩けば隅田川に出られます。かつて東京は水都であったことが感じられますね。

――「京都の菓子のデザインは抽象的、江戸東京の菓子は具象的」という全国和菓子協会専務理事の藪(やぶ)光夫さんのお話は、「なるほど」と唸ってしまいました。

齊:単に美味しいお店を紹介するだけではなく、東京のあんこ菓子の特徴、誕生の背景、東京の和菓子店の現状についても読者の皆さんに届けたいという思いがありました。

――『ドラえもん』のコミック連載開始50周年に絡めてどら焼きのルーツや東西の比較を紹介したコラムも面白かったです。

齊:ありがとうございます。『ドラえもん』のどら焼き愛について「コミックスの名シーンで振り返る」というコーナーをつくるために、久しぶりに『ドラえもん』を読みました。「虎屋」の菓子資料室「虎屋文庫」の主席研究員である中山圭子さんにも、「おもしろいですね」と言っていただきました(笑)

――真夏に連日取材に行かれていましたが、その合間に『ドラえもん』まで読んでいたのですね……。

齊:お店も、本当はもっとご紹介したいところがあり、すべて載せられなかったのが心残りです……。

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スペースの都合上誌面では取り上げられなかった神楽坂「紀の善」の杏あんみつ。すっきりとした甘さのあんこと甘酸っぱい杏の相性が絶妙だそう(上)。名物の抹茶ババロアをいただくカメラマンの荒井さん(下)

――読者の皆さんに、これは伝えたいということはありますか?

齊:お取り寄せもいいのですが、出来ればお店でしか味わえないおいしさを感じていただきたい。今回の特集で紹介した人形町「柳屋」の鯛焼きも、もちろん持ち帰ってもいいのですが、ひとつは出来立てをその場で味わってほしいですね。本当に美味しいので。お店の人に「ひとつはすぐ食べます」と伝えれば、分けて包んでくれます。こういったやりとりも楽しいですよね。

 また、この特集で紹介したお店のあんこ菓子は、「いつ食べても美味しい」。当たり前のように思われるかもしれませんが、材料が高騰することもあれば、小豆の品質が一定ではなかったりもするなかで、いつも同じ味を出すのは本当に難しいことだと思います。各店が日々の努力で守り続けているその美味しさを、ぜひ味わっていただければと思います。


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人形町板倉屋での製造風景

――あんこが大好きで、常日頃から東京の和菓子を食されている齊藤さんだから言えることですよね。ありがとうございました。  

 向笠先生と齊藤さんお二人の”東京のあんこ”への情熱に突き動かされたかのように、このインタビューの後、うさこは都内を歩けば、「ここから何分であのお店に行ける......」と考え、地元で買い物すれば、「あそこの和菓子屋さんに寄って行こう」と思わずにはいられなくなりました......。これまでは気が付かなかったお店の前のベンチに腰を掛け、家族と頂いた鯛焼きはとても美味しく、幸せな時間を過ごすことができました。

 ひととき10月号では、向笠先生と齊藤さんが自信をもってお勧めできる東京のあんこ菓子20を厳選しています。お店情報だけでなく、東京のあんこ菓子の特徴についても考察し、美味しさの理由に迫るこの特集。うさこにとって保存版です! ぜひお読みください。

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特集トビラの写真は北区中里の「御菓子司中里」の揚最中。ごま油で香ばしく揚げたパリパリの最中皮に、コクのあるあんこを挟んだもので、最中皮に伊豆大島の海水塩をまぶしています。塩気とあんこの甘みが絶妙に混ざり合い、ついもうひとつ、と手が伸びるおいしさ。大丸東京店でも購入可だそうです
令和大江戸あんこ物語
◉紀行① お江戸日本橋あんこ探訪
◉あんこの歴史Q&A
◉紀行② 愛すべし、名店のあんこ
◉あんコラム ドラえもんの大好物! どら焼き誕生物語
◉紀行③ 東京あんこの新潮流
◉令和大江戸あんこ物語〔案内図〕
◉あんこ♥エッセイ 「祖父母の愛とあまい思い出」 文=川田裕美

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