東京都指定有形文化財「百段階段」で味わう、妖しくも美しい7つの物語|ホテル雅叙園東京「和のあかり×百段階段2024~妖美なおとぎばなし~」
2015年から夏の恒例催事として行われてきた企画展「和のあかり×百段階段」。9回目を迎えた今年は「妖美なおとぎばなし」をテーマに、粋を凝らした作品が全国から集結。2024年9月23日まで、ここでしか味わえない贅沢な空間が堪能できます。
それでは、めくるめく不思議な物語の世界へとさっそく足を踏み入れてみましょう。
竹取物語
はじめに訪れたのは、十畝の間。
林立する竹灯籠と、和紙でつくられたやわらかな月の光が表現するのは、幻想的な「竹取物語」の世界。荒木十畝の描く花鳥画と一体になった煌びやかな空間に身を置いた瞬間、意識が心地よく日常から切り離されていくのを感じました。
葛の葉伝説 ~安倍晴明 誕生奇譚〜
安倍晴明とその母である白狐との切ない別れを描いた「葛の葉伝説」。ここ漁樵の間では、歌舞伎に用いられる舞台衣装や大道具を並べることで、その世界を再現しています。また、愛する子を置いて立ち去らねばならない母親の切ない心情をメロディにしたBGMが、ひときわ胸に響いて哀愁を誘います。
この展覧会では、部屋ごとに異なるBGMが用意されています。手掛けたのは音楽家のヨダタケシ氏。4分ほどの楽曲の中にストーリーの起伏が盛り込まれているため、想像を膨らませながらじっくりと耳を傾けてみることをおすすめします。
鯉の滝登り 〜登龍門伝説〜
急流の滝を登りきった鯉は竜門をくぐって天まで昇り、龍になる──そんな中国の故事を表現した展示がこちら。紙細工といけばな、水墨画がコラボした美の世界はまさに圧巻の一言に尽きます。草丘の間の欄間に描かれている水風景と、展示作品との共演も観る者の心を愉しませます。
見るなの花屋敷 〜鶯長者〜
「絶対に見ないで」と言われると、余計に見たくなってしまうもの。「鶯長者」はそんな好奇心に負けて約束を破った男が、それまでの幸せな生活を跡形もなく失ってしまう物語です。娘たちとの出会いから突然の別れまで、切り絵を照らすあかりによって紙芝居のように描かれています。
ここ清方の間は、美人画の大家として知られる鏑木清方が愛着をもって造った部屋。天井や欄間に描かれている貴重な絵画もお見逃しなく。
天女の羽衣 〜終末の章〜
隠しておいた羽衣を見つけて天へと戻った妻を迎えに行くため、天まで伸びる植物を育てる男。果たしてその物語の結末やいかに──。独特な光を放つ幻想的な作品を手掛けたのは、照明作家の弦間康仁氏。この部屋では、樹々を揺らす夏の風をイメージして調合されたアロマの香りも愉しめます。
ここ頂上の間には、ほかの部屋に見られるような欄間の絵がありません。なぜかというと、京都画壇の大家である西村五雲に依頼したものの、描く前に他界されてしまったからです。その後、日本は戦争に突入。2009年に東京都から有形文化財の指定を受けるまで、この部屋は物置として使われていたそうです。
文化財「百段階段」なのに、99段しかないのはなぜ?
長い階段廊下は、じつは数えてみると99段しかありません。諸説あるようですが、階段を上りきったところにその説明がありました。
ひとつは、昔から奇数は縁起のよい数とされてきたからという説。たとえば日本の五節句は、1月7日(人日の節句)、3月3日(桃の節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕)、9月9日「重陽の節句」と奇数が重ねられています。
もうひとつは、「発展の余地」を残したとする説。完璧な状態は長く続かないという考えから、日本の家屋では昔から人目のつかない場所にあえて未完の場所を作ることが行われていたのだとか。
いずれにしても「縁起担ぎ」のために、あえて99段に止めたと考えられているようです。
全国から集結した妖美な作品たち
ここまで5つの部屋の展示をご紹介してきましたが、ここからは全国から集められた妖美な作品の数々を写真で一気にご紹介します。
会場では、ほかにもまだまだたくさんの魅力的な作品と出会えます。ぜひ現地を訪れてお愉しみください!
充実のミュージアムショップも必見
会場内のミュージアムショップでは、今回出展されている方々の作品を購入することもできます。
様々な特典付きの入場チケットも
「和のあかり×百段階段2024」では、ランチや浴衣の貸し出しがセットになった豪華なチケットや、お得なペアチケットなども用意されています。ぜひ事前に公式サイトをチェックのうえお出かけください。
文・写真=飯尾佳央
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