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記事一覧

【ニッカリ青江公開展 かがやく日本刀の饗宴】讃岐の刀剣文化を体験(香川県丸亀市)

「ニッカリ青江」だなんて、日本刀なのに、おかしな名前だと思うかもしれません。「にっかりと笑う女の幽霊を斬った」という逸話が名前の由来です。 "青江"とは、南北朝時代に活躍した備中国(現在の岡山県倉敷市)の青江派と呼ばれる刀工集団のこと。ニッカリ青江は彼らによって作られた脇指です。豊臣秀頼より京極家に贈られたとされる品で、1940年には国の重要美術品に認定されています。 そんなニッカリ青江の公開は、回を重ねるごとに話題に。前回公開された2021年度は、まだコロナ禍で入場制限が

展覧会[信長の手紙]室町幕府滅亡直前の様子を物語る、新たな書状現る(東京都文京区・永青文庫)

新たな文書は、2022年に永青文庫と熊本大学永青文庫研究センターが共同で行った調査によって見つかったもの。室町幕府滅亡直前の、信長の新たな一面を明らかにするものでした。 永禄11年(1568)、足利義昭を室町幕府第15代将軍に擁立した信長ですが、これまでは、信長が義昭を排除して実権を握ろうとしていたと言われてきました。ところが最近の研究では、信長は義昭と共に幕府体制を続けようとしていたという説が有力とされています。では、なぜ信長と義昭は決裂したのでしょうか。 信長と義昭が

月岡芳年の浮世絵と現代のアーティストが織りなす神秘の空間──ホテル雅叙園東京「月百姿×百段階段〜五感で愉しむ月めぐり」

「月百姿」とは幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師、月岡芳年(1839-1892)の晩年の大作。日本や中国の物語や詩歌、歴史上の逸話、武士や女性、妖怪や幽霊など、月にまつわる百の場面が描かれたシリーズです。 本展では、浮世絵コレクターとして知られる斎藤文夫氏のコレクションの中から「月百姿」の作品20点を前後期に分けて展示。現代のアーティストによる月をモチーフにした魅力的な作品にも出会えます。 文化財建築で味わう浮世絵99段の階段が絢爛な7つの部屋を繋ぐ文化財「百段階段」で

[ヨシタケシンスケ展かもしれない]初の大規模個展で絵本作家が伝えたい、ひとつのこと|そごう美術館(横浜市)

ひとつのりんごからこんなにも閃き、語ることがあるということに驚く絵本『りんごかもしれない』をはじめ、日常生活を舞台に繰り広げられる独自の世界観が魅力のヨシタケ作品。「これらはどのようにして生まれたのだろう」。そんな問いに答えるべく、本展覧会では発想の源である小さなスケッチや絵本原画のほか、この展覧会のために考案した立体物や愛蔵のコレクションなど約400点を通して、ヨシタケさんの“頭のなか”が紹介されます。 そごう美術館の会場に訪れると、愛らしく、どこかとぼけた表情をしたキャ

【静嘉堂文庫美術館】「超・日本刀入門revive―鎌倉時代の名刀に学ぶ」展(6月22日~8月25日)で武士の魂を愛でる。

 2017年1月、世田谷岡本の静嘉堂文庫美術館で開催された「超・日本刀入門」展。同展は反響も大きく、大好評のうちに延べ約2万人もの観覧者が来場したそうです。  今回、静嘉堂@丸の内での初の「刀剣展」の展示では、同館所蔵の国宝・重要文化財刀剣9件をはじめ、「日本刀の黄金時代」と言われる鎌倉時代に制作された刀を中心に、平安~南北朝時代の古名刀が出展されています。  会場は「1章 日本刀の種類」、「2章 名刀のいずるところ」、「3章 きら星のごとき名刀たち―館蔵の重要文化財」、

東京都指定有形文化財「百段階段」で味わう、妖しくも美しい7つの物語|ホテル雅叙園東京「和のあかり×百段階段2024~妖美なおとぎばなし~」

2015年から夏の恒例催事として行われてきた企画展「和のあかり×百段階段」。9回目を迎えた今年は「妖美なおとぎばなし」をテーマに、粋を凝らした作品が全国から集結。2024年9月23日まで、ここでしか味わえない贅沢な空間が堪能できます。 それでは、めくるめく不思議な物語の世界へとさっそく足を踏み入れてみましょう。 竹取物語はじめに訪れたのは、十畝の間。 林立する竹灯籠と、和紙でつくられたやわらかな月の光が表現するのは、幻想的な「竹取物語」の世界。荒木十畝の描く花鳥画と一体に

【MIHO MUSEUM】特別展「奈良大和路のみほとけ ─令和古寺巡礼─」の見どころを、仏像イラストレーターの田中ひろみさんが現地レポート!

滋賀県甲賀市信楽町「MIHO MUSEUM(ミホ ミュージアム)」の夏季特別展「奈良大和路のみほとけ ─令和古寺巡礼─」〔会期2024年7月6日(土)~9月1日(日)〕のプレス内覧会に参加しました。 緑が多くとっても素敵な「MIHO MUSEUM」で、私の大好きな奈良の仏像の数々を拝めるという素晴らしい展覧会です。 記事冒頭の入口ポスターの写真は、大安寺蔵の奈良時代の秘仏・馬頭観音菩薩立像。展示期間は8月6日〜9月1日のため、私が訪れた時はお会いできませんでした。 会場

カルティエと日本 半世紀のあゆみ『結 MUSUBI』|日本とパリのつながりから生まれるアート

フランスのジュエリーブランド・カルティエが日本に初めてブティックをオープンして50年を記念し「カルティエと日本 半世紀のあゆみ『結 MUSUBI』」展が東京国立博物館の表慶館で開催されています(7月28日まで)。 1847年にパリで創業したカルティエは、今年で100周年を迎えるトリニティ・リングをはじめとするジュエリーや時計で知られるブランド。1984年にカルティエ現代美術財団を設立し、アーティストを支援、個展などを開催してきました。北野武氏や村上隆氏など、日本人アーティス

国芳の団扇絵・猫と歌舞伎とチャキチャキ娘|学芸員さんに訊く、江戸の“推し活”(太田記念美術館)

──勇ましい武者絵(錦絵*1)のイメージが強い国芳ですが、江戸の人々の日常を描いた団扇絵がこんなにあるのかと驚きました。鮮やかな色彩もきれいですね。 赤木 江戸後期には浮世絵の団扇が流行していたのですが、今回改めて調べたところ、国芳の団扇絵を600点以上確認することができました。その中でも、美人画が半数以上でした。現存する団扇絵の多くが見本として使われていたものと考えられていて、団扇絵の端っこをよく見ると、閉じ穴が残る作品もあります。団扇絵を束ね、閉じて保管されていたようで

【皇居三の丸尚蔵館】開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」(2024年5月21日~6月23日)の見どころを紹介!

 平成5年(1993)11月に開館した当初の名称は「宮内庁三の丸尚蔵館」。昭和天皇まで代々皇室に受け継がれてきた品々が上皇陛下と香淳皇后により国に寄贈されたことを機に、それらを保存・研究・公開するための施設として開館しました。  すでに30年にわたって皇室ゆかりの文物を展覧してきた「三の丸尚蔵館」ですが、皇居の敷地内にあるため、『そもそも「三の丸尚蔵館」て、入館できるの?』という声が現在も寄せられることがあるそうです。  令和元年(2019)からは収蔵品の増加や入館者の増

永遠の旅人、松浦武四郎が画鬼・河鍋暁斎に依頼した涅槃図(東京都・静嘉堂文庫美術館で特別展)

地下鉄千代田線の二重橋駅を降りてすぐの重要文化財・明治生命館の1階にある静嘉堂文庫美術館は、世田谷区岡本の地より2022年に移転し、開設されました。三菱第二代社長岩﨑彌之助(彌太郎の弟)とその息子・小彌太が収集した美術品約6,500点が所蔵されています。 永遠の旅人、松浦武四郎幕末から明治にかけて活躍し、北海道の名付け親として知られる松浦武四郎は、三重県松阪市、伊勢街道沿い生まれの探検家で著述家、好古家です。全国から伊勢参りに訪れる人々の姿を見ていた武四郎は旅人への憧れの気

特別展「教壇に立った鷗外先生」|文京区立森鷗外記念館

若干20歳で“先生”に  森鷗外(本名・林太郎。文久2[1862]-大正11[1922])は、明治17(1884)年~21(1888)年のドイツ留学後、陸軍軍医学校、東京美術学校(現・東京藝術大学美術学部)、慶應義塾大学部(名称当時)文学科などの教官、講師を務めました。  今回の特別展会場は、「第一章 教壇に立った鷗外」、「第二章 教科書と鷗外」で構成されています。「第一章」では、陸軍軍医学校、東京美術学校、慶應義塾大学部などの学校ごとに、講義内容、教え子の回想などから“教

【奈良国立博物館】特別展「空海 KŪKAI─密教のルーツとマンダラ世界」の見どころを、仏像イラストレーターの田中ひろみさんが現地レポート!

奈良国立博物館 生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」の内覧会に行ってきました。 空海の生誕1250年を記念して、「かつてない空海展になる!」と井上洋一館長が力説される奈良国立博物館の総力を挙げた展覧会は、国宝28点、重要文化財約59点*とお宝だらけ。わたしのスーパーヒーロー・空海や密教のことがよくわかる展示内容でした。 5体が揃う最古の五智如来像会場に入るとすぐに、京都・安祥寺の国宝「五智如来坐像」が、大日如来像を中心に並んでいます。5

【殿さまのスケッチブック】細川家の殿さまが愛した“博物図譜”の展覧会(東京都・永青文庫)

永青文庫は、熊本を治めた細川家の下屋敷跡にある美術館。細川家伝来の美術工芸品や歴史資料、設立者である16代細川護立(1883~1970)の蒐集品を所蔵しています。 細川家熊本藩6代藩主の重賢(1720~85)は、当時窮乏していた熊本藩での藩政改革を進めるほか、藩校時習館、医学校再春館などを設立して称えられる一方で博物学に没頭し、精緻な「博物図譜」を数多く作らせました。 博物図譜のひとつ、『毛介綺煥』は、アサヒガニとニホンオオカミの描写で知られ、哺乳類や魚介類など様々な図を