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【静嘉堂文庫美術館】「超・日本刀入門revive―鎌倉時代の名刀に学ぶ」展(6月22日~8月25日)で武士の魂を愛でる。

東京丸の内の重要文化財・明治生命館1階に静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)が開館して早1年半。かつて世田谷岡本の静嘉堂文庫美術館で人気を博した「超・日本刀入門」展が、「超・日本刀入門 revive ― 鎌倉時代の名刀に学ぶ」展とバージョンアップして開催中です。

 2017年1月、世田谷岡本の静嘉堂文庫美術館で開催された「超・日本刀入門」展。同展は反響も大きく、大好評のうちに延べ約2万人もの観覧者が来場したそうです。

静かな空間でじっくりと鑑賞できる。展示風景写真=編集部

 今回、静嘉堂@丸の内での初の「刀剣展」の展示では、同館所蔵の国宝・重要文化財刀剣9件をはじめ、「日本刀の黄金時代」と言われる鎌倉時代に制作された刀を中心に、平安~南北朝時代の古名刀が出展されています。

重要文化財 古備前高綱《太刀 銘 髙綱》。鎌倉時代(12~13世紀)、刃長66.1cm(二尺一寸八分)、反り1.9㎝(六分二厘)。織田信長より拝領の刀と伝わる。
《朱塗鞘打刀拵》。桃山時代(16世紀)。「太刀 銘 髙綱」に付帯する打刀拵(うちがたなこしらえ)。鮮やかな朱色の鞘(さや)は信長の好みによって誂えられたと考えられている。
伝 長船兼光《刀 大磨上げ無銘(号 後家兼光)》。南北朝時代(14世紀)、刃長80.0cm、反り2.1cm(六分八厘)。「愛」の兜の武将で知られる直江兼続の愛刀で、豊臣秀吉より拝領したもの。兼続の没後、妻・お船(せん)の方により米沢藩主上杉家に献上されたことから「後家兼光」の名で伝わる。
《芦雁蒔絵鞘打刀拵》。明治時代(19世紀)。「刀 大磨上げ無銘(号 後家兼光)」に付帯する打刀拵。渡邊桃舩(とうせん)による蒔絵と、名工・高橋良次(よしつぐ)による金無垢の目貫(めぬき)が美しい。

 会場は「1章 日本刀の種類」、「2章 名刀のいずるところ」、「3章 きら星のごとき名刀たち―館蔵の重要文化財」、「4章 武将と名刀」、「ホワイエ 後藤家の刀装具」で構成されています。

「どうやって鑑賞したら良いのかよくわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。でも心配は無用です。「どのようなポイントを見たら楽しめるかを意識した」という同展は、まさに刀剣鑑賞の基本の「キ」がわかる工夫の数々が掲示された、まさに”超・入門編”なのです。

 例えば「『太刀と刀』の違い」といった初歩的な事から、「刀の各部名称」、「刀剣鑑賞はじめの一歩―美術館・博物館編」などがパネル展示され、詳細な図解に加えて、鑑賞する際の理想的な姿勢や動線までをレクチャーしてくれる優れもの。漢字にルビが振られているので、ものによって通常とは異なる特殊な読み方をする名称も、すぐにわかるようになっています。

 会場には「図説・刀剣鑑賞の手引き」というリーフレットも用意されています。「刀の種類」、「刀の時代区分」、「刀の各部名称」、「刀の見どころ」が詳しく図解されていて、今後どこかで刀剣を見る機会があった際にも、大いに役立つ情報に違いありません。

 展示されている刀剣のすぐ下方にも、鑑賞のポイントとなるような図解説明があり、見方をサポートしてくれます。
 刀剣の鑑賞に限らず、”用”と”美”、それぞれの意図と意味を知ると、美術館・博物館で過ごす時間もより充実感を得られるのではないでしょうか。

【写真上】国宝 手掻包永(てがいかねなが)  《太刀 銘 包永》。鎌倉時代(13世紀)、刃長73.0cm(二尺四寸一分)、反り2.5cm(八分二厘)。【写真下】《菊桐紋蒔絵鞘糸巻太刀拵》。江戸時代(18~19世紀)に制作された。展示風景写真=編集部

 また、同展の「図録」も必見です。刀剣の放つ緊張感を表現するかのような、漆黒の背景にしずもる数々の太刀と刀の迫力ある写真に、詳細な解説が掲載されています。
 「図録」のカバーを取り外して左右に広げると、「手搔包永てがいかねなが」の、国宝《太刀 銘 包永》(鎌倉時代[13世紀]刃長73.0cm[二尺四寸一分]、反り2.5cm[八分二厘])が原寸大に近い大きさで立ち現れます。

展覧会図録より。カバーの刀の部分をよく見ると、地沸(じにえ)という鉄の微粒子が光る様子を模して、特殊印刷が施されているのがわかる。タイトルロゴも刃先を表現。写真上は国宝「手搔包永」の解説ページ。写真=編集部
国宝 手掻包永 《太刀 銘 包永》

 さらに、同館蔵の鎌倉時代の仏像の名品である重要文化財「木造十二神将立像」7軀も一堂に会して特別公開されています。

慶派《木造十二神将立像》のうち午神像。鎌倉時代・安貞2年(1228)頃。
慶派《木造十二神将立像》のうち午神像(部分)。工夫が凝らされた照明で、ガラスケース越しでも彫刻の細部が仔細に実見できる。展示風景写真=編集部

 ところで、展覧会場を巡るうちに思い出したのが、「しのぎを削る」という言葉。意味こそ頭では理解していましたが、イメージはつかみ切れていませんでした。今回の展示で、ガラスケース越しとはいえ、数々の刀剣が、鋭く、かつ鈍く底光りするさまを実見しているうちに、俄かには形容し難い、“凄み”を度々感じました。

 静寂な佇まいで横たわる刀身とうしん鎬地しのぎぢ鎬筋しのぎすじ。「鎬を削る」という語が、これまでとは違った印象で迫ってくるような感覚を覚え、刀剣についてもっと知りたい、と思いを新たにしました。

「武士の魂」と言われる日本刀。1千年余にわたる、”戦いの用と美”の変遷を垣間見られる本展をぜひご覧ください。

【開催概要】
超・日本刀入門 revive 鎌倉時代の名刀に学ぶ

会期:2024年6月22日(土)~8月25日(日)
会場:静嘉堂@丸の内(明治生命館1階)
開館時間:午前10時~午後5時(毎週土曜日は午後6時まで、第3水曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30前まで
休館日:月曜日(7月15日、8月12日は開館)※8月13日(火)はトークフリーデーとして開館。
入館料:一般1,500円 大高生1,000円 中学生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む)700円
詳細はHPをご参照ください。
問合せ:☎050-5541-8600(ハローダイヤル)

写真提供=静嘉堂@丸の内
参考資料=「超・日本刀入門 revive 鎌倉時代の名刀に学ぶ」展図録
文・展示風景写真=根岸あかね

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