【静嘉堂文庫美術館】「超・日本刀入門revive―鎌倉時代の名刀に学ぶ」展(6月22日~8月25日)で武士の魂を愛でる。
2017年1月、世田谷岡本の静嘉堂文庫美術館で開催された「超・日本刀入門」展。同展は反響も大きく、大好評のうちに延べ約2万人もの観覧者が来場したそうです。
今回、静嘉堂@丸の内での初の「刀剣展」の展示では、同館所蔵の国宝・重要文化財刀剣9件をはじめ、「日本刀の黄金時代」と言われる鎌倉時代に制作された刀を中心に、平安~南北朝時代の古名刀が出展されています。
会場は「1章 日本刀の種類」、「2章 名刀のいずるところ」、「3章 きら星のごとき名刀たち―館蔵の重要文化財」、「4章 武将と名刀」、「ホワイエ 後藤家の刀装具」で構成されています。
「どうやって鑑賞したら良いのかよくわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。でも心配は無用です。「どのようなポイントを見たら楽しめるかを意識した」という同展は、まさに刀剣鑑賞の基本の「キ」がわかる工夫の数々が掲示された、まさに”超・入門編”なのです。
例えば「『太刀と刀』の違い」といった初歩的な事から、「刀の各部名称」、「刀剣鑑賞はじめの一歩―美術館・博物館編」などがパネル展示され、詳細な図解に加えて、鑑賞する際の理想的な姿勢や動線までをレクチャーしてくれる優れもの。漢字にルビが振られているので、ものによって通常とは異なる特殊な読み方をする名称も、すぐにわかるようになっています。
会場には「図説・刀剣鑑賞の手引き」というリーフレットも用意されています。「刀の種類」、「刀の時代区分」、「刀の各部名称」、「刀の見どころ」が詳しく図解されていて、今後どこかで刀剣を見る機会があった際にも、大いに役立つ情報に違いありません。
展示されている刀剣のすぐ下方にも、鑑賞のポイントとなるような図解説明があり、見方をサポートしてくれます。
刀剣の鑑賞に限らず、”用”と”美”、それぞれの意図と意味を知ると、美術館・博物館で過ごす時間もより充実感を得られるのではないでしょうか。
また、同展の「図録」も必見です。刀剣の放つ緊張感を表現するかのような、漆黒の背景に鎮もる数々の太刀と刀の迫力ある写真に、詳細な解説が掲載されています。
「図録」のカバーを取り外して左右に広げると、「手搔包永」の、国宝《太刀 銘 包永》(鎌倉時代[13世紀]刃長73.0cm[二尺四寸一分]、反り2.5cm[八分二厘])が原寸大に近い大きさで立ち現れます。
さらに、同館蔵の鎌倉時代の仏像の名品である重要文化財「木造十二神将立像」7軀も一堂に会して特別公開されています。
ところで、展覧会場を巡るうちに思い出したのが、「鎬を削る」という言葉。意味こそ頭では理解していましたが、イメージはつかみ切れていませんでした。今回の展示で、ガラスケース越しとはいえ、数々の刀剣が、鋭く、かつ鈍く底光りする様を実見しているうちに、俄かには形容し難い、“凄み”を度々感じました。
静寂な佇まいで横たわる刀身の鎬地と鎬筋。「鎬を削る」という語が、これまでとは違った印象で迫ってくるような感覚を覚え、刀剣についてもっと知りたい、と思いを新たにしました。
「武士の魂」と言われる日本刀。1千年余にわたる、”戦いの用と美”の変遷を垣間見られる本展をぜひご覧ください。
写真提供=静嘉堂@丸の内
参考資料=「超・日本刀入門 revive 鎌倉時代の名刀に学ぶ」展図録
文・展示風景写真=根岸あかね
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