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【ジューンブライド】婚礼時に喜ばれるいけばな|笹岡隆甫 花の道しるべ from 京都
花にまつわる文化・伝統芸能などを未生流笹岡・華道家元の笹岡隆甫さんがひもとく連載コラム『花の道しるべ from 京都』の第35回。古くからヨーロッパでは、6月に結婚する花嫁は幸せになれるといいます。笹岡家元に婚礼のときに喜ばれるいけばなとその決まりについて綴っていただきました。
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ジューンブライド。6月は結婚を司る女神Junoが守護する月であり、この月に結婚する花嫁は幸せになれると伝えられている。お祝いの席で、いけばなを依頼されることも多い。こうした祝い事に参列できるのは、やはり嬉しいことだ。
婚礼の際の花として伝えられているのは「松竹梅」と「万年青」。共に、正月の花としても喜ばれる。万年青は、美しい常緑の葉が特徴で、その名にもめでたさが表れる。また、赤い実は子孫繁栄に通じるとされる。
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ここで強調されるのが「七五三」だ。日本では、奇数は陽数、偶数は陰数とされる。数字は、一、二、三、四……、と必ず奇数が偶数に先行する。そこで、先にくる奇数が、栄える数として喜ばれた。いけばなでも、枝の本数や花の輪数など、目立つ数は原則として奇数にととのえるのが原則。一桁の陽数の中で、最も小さい一と最も大きい九を除けば、七五三となる。神聖な空間を外部と区別するために張る注連縄(七五三縄)は、一定の間隔ごとに、七筋、五筋、三筋と藁を垂らす。
万年青では、七葉、五葉、三葉をそれぞれ1株にしていける。松竹梅では、松の腹籠、竹の節の数、梅の枝の数を五とし、天地人三才格*にととのえ、七本の水引を飾る。水引の結び方は相生結びだ。
*花型のひとつ。直角二等辺三角形の中に天・地・人の3種、3つの枝で花型を構成する。
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「相生の松」も、婚礼の際に喜ばれる。相生は相老に通じ、夫婦が共に年老いるまで長生きすることを願う。相生とは、一つの根から二本の幹が伸びる様子をいう。古書には、立花の真に相生の松を使った図も見られる。能の「高砂」*では、高砂の松と住吉の松を相生の松とし、離れていても夫婦の心が通い合う様をうたう。
*世阿弥の謡曲。婚礼の場でうたわれることが多かったことから、今も新郎新婦が座るテーブルは「高砂」と呼ばれている
50年続いた流派行事、貴船神社など京の名所をめぐる
未生流笹岡では、1963年から2013年までの50年間、毎年6月に流派の行事を開催してきた。祖父である笹岡勲甫が家元継承に先立って赴いた欧州視察の壮行会として、南禅寺界隈別荘の一つ、旧細川家別邸をお借りしてガーデンパーティーを開催したのが始まりだ。流派の門葉、普段からお世話になっている皆さまが親しく顔を合わせるよい機会だということで、毎年会場を変えて、京都の名所でガーデンパーティーを開催することになった。あわせて、その名所に因んだ小さないけばな展も企画した。
青蓮院門跡、東福寺、西本願寺、建仁寺、神護寺、宇治の黄檗山萬福寺、滋賀の三井寺………。本当に様々な場所にお邪魔した。北山に京都コンサートホールが完成した際には、いけばなと弦楽四重奏とのコラボを行ったし、京都駅ビルが建て替えられたときには、大階段にある室町小路広場でいけばなパフォーマンスをご覧いただいた。
貴船神社では、竹太鼓の音色に合わせていけばなを奉納した。普段は、比較的落ち着いた音楽に合わせていけることが多いので、荒々しい竹太鼓との共演は新鮮だった。新緑の中に、竹太鼓の音が響き渡り、清々しいひとときだった。貴船川の中に花をいけたのもよい思い出だ。
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京都の名所をそぞろ歩きしながら、いけばなを愛で、昼食をいただく。そんな楽しい一日を過ごしていただきたいと毎年企画を練った。ただ年々、参加者も増え、1,000人近い参加者をたくさんのお料理屋さんに分けてお願いするのが難しくなり、幕を閉じることに。人数をしぼることにはなるだろうが、美しい京都の名所を舞台に花をいけて、皆さんにご覧いただける機会を再び持てれば、と考えている。
文・写真=笹岡隆甫
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笹岡隆甫(ささおか・りゅうほ)
華道「未生流笹岡」家元。京都ノートルダム女子大学客員教授。大正大学 客員教授。1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒、同大学院修士課程修了。2011年11月、「未生流笹岡」三代家元継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、2016年にはG7伊勢志摩サミットの会場装花を担当。近著に『いけばな』(新潮新書)。
●未生流笹岡HP:http://www.kadou.net/
Instagram:ryuho.sasaoka
Twitter:@ryuho_sasaoka
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