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おすすめの書籍

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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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#おすすめ本

「何かを封印している?」異形の三柱鳥居が意味するもの──京都・木嶋坐天照御魂神社をめぐる2つの「謎」

文=古川順弘(文筆家) 秦氏の里に鎮まる木嶋坐天照御魂神社 京都・太秦にある大酒神社から東に10分ほど歩くと、木嶋坐天照御魂神社の鳥居前に出る。現在の祭神は天之御中主神とほか4神(大国魂神・穂々出見命・鵜茅葺不合命・瓊瓊杵尊)。社名の「木嶋」は社地一帯の古地名で、そのため「木嶋社」を通称とする。現在は宅地に囲まれているが、かつては木嶋という名にふさわしく、周囲には巨樹が繁茂し、境内にある「元糺」と呼ばれる池の水量も非常に豊かだったという。境内社に養蚕神社があるため、「蚕の

いま、この時代に『古事記』を読むことの意味

 本居宣長は明和元年(1764)、35歳のときに『古事記』の注釈に着手し、35年間をついやして、寛政十年(1798)六月十三日に、『古事記伝』全44巻を完成させた。宣長69歳のときである。この前人未踏の精確な注釈書は、近世のみならず、現代においても高い評価を得ている。そこではじめに、宣長が『古事記』に興味を持ち、その注釈を決意したきっかけを簡単に述べておきたいと思う。  宝暦七年(1757)、京都遊学を終えた宣長は、松坂(三重県松阪市)に帰り、魚町で町医者を開業していた。そ

『自省録』は私たちの人生の錨となってくれる一冊|齋藤孝『図解 自省録』より

いまの時代は、毎日の生活を送るにも、ストレスが増えています。気候変動の影響も大きくなり、各地で戦争が起き、また生成AIも出てくるなど、世の中もどんどん変化していく。「どこか生きにくい、自分の心が保ちにくい」と感じている方も多いのではと思います。 そうしたとき、マルクス・アウレリウス・アントニヌス(以下マルクスと略)の『自省録』は、ちょうど船の「錨」にあたるものとなります。激しい風が吹いたり波が荒れたりしても、錨を下していれば、船は漂わずに一定の位置に停泊できます。現代の私た

『君たちはどの主義で生きるか ~バカバカしい例え話でめぐる世の中の主義・思想』の刊行に寄せて|さくら剛(作家)

最近のゲームって……、超ムズくないですか? はっきり言って、バイオハザードとかファイナルファンタジーとかウマ娘とか、新作を自力だけでクリアするのはほぼ無理です。 マニアの方は違うのでしょうが、一般ゲーマーは情報なしではあっさり取り残される難易度。攻略本を見なければどんな分岐があるかもわからないし、ましてベストエンディングなんて到底辿り着けません。 実は、人生も最近、そうなっているんです。人生も、攻略本がないとすぐに道を見失う時代なんですよ。今って。 もはや令和時代の人

2023年は親鸞聖人御誕生850年!劇的な生涯と思想を知る2選

2023年は親鸞聖人の御誕生850年という節目の年であり、2024年は浄土真宗立教開宗800年の節目の年でもあります。ここでは親鸞聖人の事績や思想を知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 図解 歎異抄 たよる まかせる おもいきる 齋藤 孝 著 「歎異抄」は、鎌倉時代後期に書かれた日本の仏教書として知られ、作者は親鸞に師事した唯円とされています。現代でも司馬遼太郎や吉本隆明、西田幾多郎、五木寛之などの知識人・作家にも多大な影響を与えたことで知られています。 鎌倉仏

なぜ今年の大河ドラマは家康なのか?

文=城島明彦(作家) 「不断桜」に重なる徳川家康の生き様「戦国の三英傑」を桜に喩えると、織田信長は「しだれ桜」、豊臣秀吉は「八重桜」、徳川家康は「不断桜」ではないかと考えます。不断桜というのは、三重県鈴鹿市の子安観音寺の境内にある「白子不断桜」のことで、四季を問わず花をつける不思議な桜の呼称です。 観音寺から家康最大の危機を救った白子港までは、そう遠くはありません。家康は信長と軍事同盟を結んでいたために、「本能寺の変」で明智光秀に命を狙われ、滞在先の堺から決死の「伊賀越え

2023年大河ドラマ「どうする家康」天下人に至る激動の生涯を知る2冊

2023年大河ドラマの主人公は徳川家康。主演が松本潤ということもあり、放送前から話題を呼んでいます。三河の弱小大名から天下人まで上り詰めた家康の激動の生涯をどのように描かれるか大変注目されます。ここでは家康の事績や人となりを知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 家康の決断 天下取りに隠された7つの布石城島 明彦 著 三河の弱小大名の家に生まれ、幼少期は人質を体験し、のちに天下人となった徳川家康。多くの日本人には「天下人」「成功者」のイメージが強いことでしょう。だが

<彼岸の入り>仏の教えを知り、自らを見つめ直す書籍【7選】

皆さん、こんにちは。 9月23日は秋分の日。今日は「彼岸の入り」にあたります。 ところで、彼岸とは何でしょうか。 仏教では、6つの徳目(六波羅蜜)を修めることで、迷いの世界である此岸から悟りの境地である彼岸にたどり着くことができると言われています。 六波羅蜜とは、 の6つを指します。 つぎにご紹介するのは、仏教にまつわる7冊の書籍です。 仏の教えを学び、自らを見つめ直すことで、ちょっとだけ彼岸が近くに感じられるようになるかもしれません。 愛蔵版 心に響く101の言葉多

【最澄と空海】日本仏教の礎を築いた二人の先駆者、その軌跡をたどる2冊

2021年に最澄(伝教大師)は没後1200年を迎えました。また、2023年には空海(弘法大師)が生誕1250年、真言宗開宗1200年という節目の年を迎えます。 同じ遣唐使船で唐を目指したエリート層「最澄」と無名僧「空海」。その交流は当初、師匠と弟子という形で10年近く続きましたが、ある時を境に疎遠になります。 ひとつは、最澄が空海に『理趣釈経』という経典を貸して欲しいと申し出たのに対し、空海がそれを拒絶したこと。もうひとつは最澄の弟子の泰範が空海の元に修行に行き、そのまま

混迷の時代を生きる私たちの必読古典!一気に読める現代語訳シリーズ3選

人生につまずいたとき、現代より厳しい時代を生きた先人の姿に勇気づけられることがあります。次の一手に迷ったとき、新しい時代を切り開いた賢人の知恵にヒントが得られることがあります。だからこそいつの世でも通じる普遍的な事柄が求められるのです。 「古典」と聞けば難解で、頁も膨大で読みづらいイメージがあります。読んでみたものの内容がよくわからなかったということもあります。そんな理由で古典の叡智に接する機会を逸している人が多いというのは実にもったいない話です。 ウェッジブックスが刊行

4月8日は、仏教の日。

4月8日は「仏教の日」です。 お釈迦様が旧暦の4月8日に生誕したという伝承に基づき、2014年に世界41カ国の仏教指導者が集った仏教サミットで定められました。6世紀に日本に伝わった仏教は、日本文化を語るうえでも欠かせない存在として、私たちの生活の至るところに影響を与えています。 ここでは、そんな仏教にまつわるおすすめの書籍7点をご紹介したいとおもいます。 仏像に会う 53の仏像の写真と物語 西山 厚 著 美しい仏像には、たくさんの願いが託されている。仏教美術史学者の

旅の途中|心に響く101の言葉(10)

奈良の古刹・興福寺の前貫首が、仏の教えと深い学識をもとに、古今の名言を選び、自らの書とエッセイでつづった本書『愛蔵版 心に響く101の言葉』(多川俊映 著)よりお届けします。 すべてはみな、旅の途中  気仙沼の柞の森に住む歌人・熊谷龍子さんに、 降って止んで溶けて流れて雪片はお仕舞いのなき旅の途中よ の一首がある。  雪は溶けて奥深い森を伏流する――。目にはみえないけれど、なくなってはいない。カタチを変え、いのちを育み・いのちをくぐり抜けて、旅をつづける。  ある

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」 北条義時とその時代がわかる2冊

2022年大河ドラマの主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。主演が小栗旬、脚本が三谷幸喜ということもあり、放映前から話題を呼んでいます。源頼朝の妻・北条政子の弟である義時を、三谷氏がどのように描くのか注目されます。ここでは義時とその時代を理解するうえでお薦めの2冊をご紹介いたします。 執権義時に消された13人 闘争と粛清で読む「承久の乱」前史榎本 秋 著 激動の時代に「一人勝ち」した北条義時。ドラマのタイトルにある「13人」は鎌倉時代初期の合議制メンバーを指しますが、時政・

「聖徳太子」と「最澄」のメモリアルイヤー 二人の実像と足跡がわかる2冊

2021年は聖徳太子が没後1400年、最澄が没後1200年という節目の年でした。2人が生きた時代は離れており、両者に接点はないように思われますが、じつは最澄は中国の天台山から帰国した後、四天王寺の太子殿を参詣したことが知られています。 日本で天台宗を広めることになった最澄ですが、自分が慧思*や聖徳太子の系譜に連なって「法華経」の正しい教えを継ぐ者であることを自任し、太子を深く敬慕していたのです。 *慧思:中国、南北朝末期の高僧で、天台宗の事実上の開祖 ここでは2人が生き