ものすごく肉を食いたくなる映画

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Netflixのレイティングはおかしい。この「バーベキューの世界」は子供に不向きなのだそうだけれど、タイトルから予測したとおりのすばらしいドキュメンタリーでした。むしろ、子供に見せるべきだ。

以前、バーベキューを北米に限定して紹介する番組があったのだけど、そこでの楽しみ方はそれぞれの地方やそこに根付いた文化と共に紹介されていた。大きなバーベキューコンロ、アメリカそれぞれの地域での食べ方など、あくまでも食を紹介する番組。なるほど、バーベキューとはこんなにも奥深く、その文化を誇る、正に料理だったのかと思った。それは、日本で見るバーベキューとは全く違うもので、形式にこだわることなく、むしろそれを作り、誇る人。肉を食べることを楽しむ人。

今回の番組はもっと深く入り込んだ描き方をしている。まず最初に出て来るのは南アフリカでのバーベキュー。南アフリカのバーベキューは世界一だという。全く知らなかった。てっきりアメリカだと思っていた。南アフリカの言葉で”ブライ”というのだそうだ。そして、楽しい時間を過ごすことを”レッケル”というらしい。うれしい、美味しい、どんな意味にもなる言葉、”レッケル”。ブライはまさにレッケルなのだそうだ。

白人の家族が楽しむ様子がある。一日の終りに皆で肉を焼き、酒を飲み、語らう。ゆっくりした時間を過ごす。火は人と人との壁を取り払い、心と心を融和させる。寒く暗い夜でも、火は強ければ強いほど気持ちを支える。

そして、黒人から見たブライとその文化も紹介される。アパルトヘイト前後でのブライの役割や意味など。そして、道端に朽ちた廃屋を掃除してブライを商売にし、生計を立てる黒人が紹介される。

彼はこう言う「ゴミに埋もれた小屋だったけど、自分はここでやると決めた。サビた鉄板しかなく、みんなはうまくいくわけないと言った。でも、道は必ず拓けると皆に伝えたい。神様は人間に両手と頭脳と耳を与えた。それは他の誰かに、どうぞ使ってと渡すためではない。自分の道を切り開くためだ。」

黒人も白人も楽しむ。以前は単なる娯楽だったが、今は別の意味を持つ象徴的なものとなり、ビジネスにもなっているそうだ。

続いて日本に場面を移し、宮崎県日向市の炭焼き小屋が紹介されるのだが、またそれが感傷的でグッと来る。そこにある日本らしさ、正に文化。バーベキューを単なる料理から火を使った生き方にまで拡げ、そこに生きる人1人にスポットが当たる。

そうか、焼き鳥もバーベキューなのか。焼き鳥はただ焼くだけのようでとても難しい。こだわりが深い。しかし、気軽に食べられるし、シンプルで奥が深い。大衆の食文化であり、原始的な調理方法。

なるほど、これら私がいわゆる日本でのBBQに感じていた違和感だったのかも知れない。やりたい感じがしなかったのはそのためか。まして、レンタルでするBBQは文化ではないし、公園でやるのも何かが違う。形ではない。”ただ適当に焼く”のもまたちょっと違う。ただ騒ぎたいだけもちょっと違う気がする。

バーベキューで肝心なのは焼くという単純な作業の中にある人と火の関係、奥深さだろう。だから、場所はどこでも良いし、スタイルも様々だが、それは最も人間が原点へ帰って純粋に楽しむという文化だ。

肉を食って、酒を飲んで、会話を楽しむ。
人類の原点。
すばらしい。

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