ミツバチの越冬について③

ミツバチの越冬時の生態を熱の保温効率から考えてみます。

巣箱の中では巣枠と言う板で分割されている為、イメージしづらいですが、ミツバチは塊になって活動しています。巣箱の外にバサッと落とすと女王蜂を中心に球のようにまとまります(蜂球と言います)。日本ミツバチの画像ですが、こんなイメージです。

画像1

西洋ミツバチでも巣枠で仕切られていますが、日本ミツバチと同じように巣箱の中で蜂球を形成しているとイメージし、どの状態が保温性がよいか、またハチミツの消費量が少ないか考えてみます。

①蜂球は小さいのと大きいのとどちらがよいか?
 蜂の密集度合いが同じだとすると、蜂数の少ないのと多いのとどちらがよいか?いう問題です。
 蜂球の外側は一定程度外気(冷気)にさらされます。そうすると、外気の影響を受ける蜂の割合は、蜂球が大きい方が小さくなります。蜂は体温を上げる為に体を震わせるのですが、蜂球の内側は温度が保たれるのであまり活動せずに過ごすことができます。また、内部の熱も外側に放射するので外側の蜂も内部から暖められます。
 きちんと計算していないので理屈は推測なのですが、実際に越冬してみると蜂数が多い方がハチミツの消費量が圧倒的に少ないです。
 また、巣箱内に蜜があっても気温が低い場合はミツバチは蜂球の外側の蜜を吸いに移動できず、巣箱に蜜が残っているのに餓死すると言う事象が蜂球が小さいと起こる可能性が高くなります。蜂数が多く蜂球が大きいほど体積が大きくなり、より多くのハチミツを利用できるのです。その上、ハチミツの消費量が少なくなるので、蜂数が多い方がよいとなります。

②蜂球が同じ大きさの時に巣箱の状態で何が変わるのか?
 蜂球が同じ大きさでも今度は蜂球を仕切っている巣枠が影響します。
 巣枠と巣枠の間が広いとミツバチがその隙間に密集でき保温性が高まります。巣枠と巣枠の間を狭くすると蜂が密集出来ません。空の巣枠は熱源になりませんので、密集もできず、巣枠に仕切られて保温性の観点からは不利になります。そして、体温を上げる為、ハチミツの消費量が大きくなります。育児が停止しているなら、巣枠間の幅は広めの方が良いとなります。
(広い狭いと言っても数ミリの話です。寒冷地では広め一択のようです。)
 ただし、育児を行うと幼虫や蛹も熱源になる為からか、巣枠間の幅を狭めるとミツバチが越冬中でも育児を継続しやすくなります。冷たい巣枠で仕切られていたのが蛹や幼虫で暖かくなる為、保温性は上がるのでしょう。その替わり、幼虫や蛹の育児を行うには35度くらいまで育児圏の温度を上げる必要があり、ハチミツの消費が多くなります。冬の間も育児を継続してもらうには良いと言うことになりますが、群の性格や周りに花が咲いているか、もしくは、給餌が継続されているか、周囲の気温が寒すぎないかなど、巣枠間の幅以外にも影響されるので、育児を継続させたい場合は巣枠の幅以外にも注意が必要です。給餌も一気に与えるのではなく、少しずつしか吸えないようにして、常に蜜があるように錯覚させます。
 冬に育児が進めば越冬が楽に思えますが、ダニの駆除を行う場合は、蛹についているダニを駆除しきれず耐性ダニを増やす可能性が高くなります。南関東以南でミツバチヘギイタダニが猛威をふるっている原因でもあるので、育児をしていない期間を少しは設けて、しっかりダニは駆除しておきたいところです。

③越冬中の給餌して大丈夫なの?
 少しずつ給餌すると書きましたが、寒い時期の給餌は要注意です。
 砂糖水を与えると仮定すると蜂が酵素で分解する必要がありますが、30度以上にならないと酵素が活性化しません。育児をしていない場合は、砂糖からハチミツにする為に体温を上げる必要があり、その為に余計にハチミツを消費すると言う悪循環に陥ります。育児中であれば大丈夫と聞いていますが、自分は試したことはありません。
 ハチミツを与える場合は、周りの巣箱からハチミツを奪いに襲われないように(盗蜂と言います。)、与える時間を夕方にしたり匂いが広がらないようにする工夫が必要です。

 育児を継続させるにしろ、停止させるにせよ蜂数は多い方が良いので、越冬前に蜂数を増やしておくことが大事です。

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