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シャンテでシャーリイ。コールスローは一個でいい。

16時15分退勤。
近頃映画館へ行っていないなと思い立ち、職場から程近いTOHOシネマズシャンテへ足を運んだ。16時50分の上映開始時刻をいつも通り5分程遅刻したところで席へ着いた。

映画1

今回鑑賞した「Shirley シャーリイ」はジョセフィン・デッカー(他の作品は未見だった)が監督を務め、ゴシック作家シャーリイ・ジャクスンの伝記に新解釈を加えた伝記映画だそう。
全編を通して、不穏な音楽と幻想と現実が混じり合うような描写が多く見られた。ラストを迎える頃には物語の中心人物である若夫婦との数ヶ月間自体が主人公であるシャーリーの執筆中における妄想・インスピレーションだったことがわかる(たぶん…)
夫に「駄作になるぞ」と反対されながらも女子大生の行方不明事件を小説のモチーフとすることを譲らず怒気を孕みながら「誰にも注目されない、見てもらえない。(女性)の物語を紡ぎたい」と訴える姿はグッときた。ここでの宣誓を経て、この小説の主人公と行方不明の女学生のフュージョン的存在である若妻(名前は忘れた…)は内(浮気夫や閉ざされた家また、その影響下にある虚飾された自己)から自らを解放し外へ歩み出す。
そして物語(空想)は終わり、また"私"の現実が戻ってくる。。。


映画2

フィルマークスを見るとあまり評価は良くなかったが、自分はそこそこ楽しめた。というのも自分はモノローグが多用されるお話が好きで、(格好いいから!)今作も飽きずに最後まで楽しめたのはその要素が大きかったと思う。
夢や真かわからないようなモノローグによってお話が駆動する構造はフランソワ・オゾン監督による「危険なプロット(2012)」を想わせ、最後まで主人公の真意のようなものの全貌は明かされない所がとても良いと思う。カート・ヴォネガットは自身の著書で「読者が飽きずに最後まで読んでくれる物語を作る為には、まず登場人物に何かを欲しがらせるべきだ。」と言っていたらしいが、ここに「その欲しい物の全貌は明かさなくて良い」も付け加えて良いと思う。(まだ読んでないから同じこと書いてあるかも!楽しみ)

コンタクト

そんな映画鑑賞が終わり、出口へ向かう道中トイレに立ち寄った。用を足し、見終わった映画のことを考えながら手を洗っていると眼前になんとも不細工な眼鏡青年の顔があった。そう、今日は目の調子が悪くいつも着けているコンタクトをよして一日眼鏡で過ごしていたのだ。普段外出時はコンタクトを常用することもあり、外で久しぶりに再会した自分の眼鏡姿には甚だ呆れるような滑稽さがあった。この状態でまた帰り路にすれ違うであろうおそらく自分と同年代の劇場スタッフの前には出たくない。恥ずかしい。そう思い、眼鏡を外し重度の近視を持つ者が視るあの磨りガラスを通したような世界を歩み出した。出口に続くエレベーターに乗り込む際にやはり劇場スタッフ数名とすれ違ったが、一男性客の顔つきなどまるで頓着無しといった様子が磨りガラス越しにも見てとれ、やれやれ自分の自意識過剰ぶりにも毎度参らされると思いながら出口である一階のボタンを押したが、着いた先は地下一階であった。やれやれ。

コールスロー

劇場を出た所でどうにもお腹が空いた。明日はお休みなので家に帰って自炊をする算段だったのだが、急遽予定を変更しコンビニで何か軽食を買うことにした。
店内は今日の蒸し暑い空気を忘れさせるようなツンと冷えた風が流れており、このままここで眠りたいという人生何千回めかの願望を《燃えるゴミ》に捨て真っ先に向かった先はサンドイッチのコーナー。自分は単純であるから、洋画を見れば洋食が食べたくなる。韓ドラを見ればチャミスルが飲みたくなる。サッカーの本場はアーセナル。(サッカー知らないのに…こんなん言っちゃって…)ただ今回の目的はあくまで軽食。パスタやチキンはそぐわないのである。よって、帰りに大きなゴミも出ずさっさと食べられて尚且ついつだって美味しいサンドイッチが最適なのだった。よりどり緑の具を見渡してタマゴやハム、少しお高いカツなんかを通り過ぎた所にひっそりと佇むコールスローと目が合った。思えばこれまでこいつを一度として手に取ったことはなかった。特に理由があるわけではない。ただ何となく目に入らなかったのだ。そこで、ふと先程鑑賞した作品のことを思い出した。作中で行方不明となっていたあの女学生。彼女もまた誰にも見つけてもらえないと静かに嘆いていた(とシャーリーに設定されていた)。サンドイッチと彼女を重ね、商品を手に取りレジへと向かう。(途中店内時計が目に入り、不用の煩悶に5分ほど費やしていたことが分かり呆れた。)会計を済ませいつも通り「レシート入りません!」と爽快に言い放ったところで間髪入れずサンドイッチを開封した。二つ入りのサンドイッチを一つずつ両手に持ち退店し、念願の一口。

あッ…美味しいけど、美味しいけどあ…
一個で良いかも…泣

またね。

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