見出し画像

【BtoB MA戦略で考える】KPIはコントロールできる指標数値にすべきと考えた

こんにちは!クロスコムの本田(@HONDAWeb1)です。

今回は、BtoBマーケティングにおけるMA戦略で、KPIはコントロールできる指標数値にすべきだと考えたので、お伝えしていきます。

 この記事を書こうと思ったのは、自社が考えるBtoBのMA戦略におけるKPIのあるべき姿が、Web上のコンテンツ記事で説明されている内容とどうもギャップあるなぁと感じたからです。

 ただ目的は、「いずれかが正だ」と明らかにするのではなく、過去のKPIマネジメントで失敗してきた自分の経験も踏まえてお伝えすることです。1人の主張として読んでもらえると嬉しいです。

この記事で伝えたいこと
・コントロールできないKPIは管理できない
・KPIは企業の行動レベルで考えるべき


1.【よく見る】「BtoB MA戦略 KPI」で検索表示されるWeb記事

 自社の考えるKPIをお伝えする前に、まず検索エンジンで上位表示されている「BtoBマーケティングやMA戦略におけるKPI」に関するご説明やご意見を、いくつかのWeb記事からPick Upしてみました。

  Web記事でよく見るKPIの候補例

・商談化数
・資料ダウンロード数
・無料セミナーへ参加(+アンケート回答数)
・メールの開封率
・資料ダウンロードページのアクセス数
・SEOコンテンツページのアクセス数

 まずは、KPI候補として挙げられている指標です。BtoB MA戦略の実施において頻出する指標が挙げられています。それと同時に、いずれも「リード獲得⇒商談」のプロセス内で通過するリードの行動結果であることが見て取れると思います。

 また各指標における具体的な説明は割愛しますが、いずれも目標達成のカギとなりえる指標であり、また数値化しやすく分かりやすい指標であることは共通しているように見えます。

  Web記事でよく見るKPIの設定手順

1.KGI(重要目標達成指標)を設定する
2.KSF(重要成功要因)の候補を出す
3.KSFからKPIを設定する
4.KPIツリーをつくる

  次は、KPIの設定手順についてです。こちらはやや抽象化された手順なので、実務レベルで考えると現場によって多少の差異は出てくるかもしれませんが、プロセスとしてはその通りだと考えます。

 目標であるKGIに対して、成功のカギとなる指標CSFを候補として挙げてから、数値化したKPIを設定する。そのKPIが、KGIの因数として本質的につながっているかをツリー状で把握する。ストーリーとして筋が繋がっているので、本質からブレにくいKPIが設定できそうです。 

 細かい説明まで記載していくとキリがないのでここら辺に留めますが、以上がWeb記事で見かけるBtoBマーケティング・MA戦略におけるKPIの候補例・設定手順でした。これらの内容に対して、ここから私の考えを書いていきます。

2.目的変数のKPIは管理できない

  「KPIは商談化数や資料DL数にしよう」,,,ホント?

 まず問いかけたいのが、商談化数や資料DL数をKPIにするのって合ってるのか?です。BtoBのMA戦略ではコンテンツが重要であり、成約へ至るまでに必ず通過する指標であることは間違いありません。数値で測定可能なので、誰が見ても客観的に分かりやすい指標であることは明らかでしょう。

 しかし、これらの指標数値を上げるために何を改善すべきかを問われるとどうでしょうか?セミナーの開催数を増やす?ホワイトペーパーの訴求を見直す?いろいろ考えられますよね。しかしその改善が、どんな根拠を以てKPI達成に必要だと断言できるでしょうか?

  表面上の指標はKPIに適していない

 KGIを達成するには、KGI達成に関わるクリティカルな施策をビジネスの文脈から理解しなければいけません。なぜなら、改善できる施策の大半はKPIに影響を与えないことが多いからです。

 例えば、3か月で商談数50件を達成するをKGIとしましょう。リードの行動プロセスとして、メルマガを購読していて、無料セミナーに参加、Web記事へアクセス、お役立ち資料のダウンロードなど、企業のさまざまなコンテンツと接点を持つことが予想できます。

 そしてKPIは、リードの行動プロセス的にセミナー参加数が妥当だという意見が社内で挙がったことから、セミナー参加数200人をKPIしたとしましょう。さっそくプロジェクトが開始して、取組みが始まりました。

 しかし、プロジェクト開始から2か月が経過した時点で、セミナー参加数がまだ50人です。つまりKPIが未達で、プロジェクトに赤信号が点滅している状態です。さて、何をどう改善すればKGIを達成できるでしょうか?

 きっとこの状態では、KPI未達の原因が分からず明確な改善アクションは起こせないでしょう。そしてKPIを上手く管理できず、プロジェクトはそのままKGI未達で終わってしまったことに、「KPIを果たして活用できていたのか?」と懐疑的になるのが目に見えます(私が過去にそうでした、、、)。

 簡単な例でしたが、行動プロセス上にたまたま存在した指標をKPIと設定した末路をお伝えしました。(私がそうでしたが)この例から学んだ教訓としては、ビジネスの文脈を無視して感覚でKPIを設定しては、未達だった場合の対処ができないということです。

  目的変数をKPIにするのは実用的じゃない

 上記例から学んだ教訓として、ビジネスの文脈なしで感覚的にKPIを設定すべきでないことと同時に、KPIは目的変数にすべきではないということです

 目的変数とは、求めたい結果のことです。結果は、何かの行動や事象から生じた状態のことを指しますので、原因が必ず存在します。それが説明変数です。

 MA戦略における説明変数については次章でお伝えしますが、KPIはこの説明変数の中から見極め設定することが重要だと私は考えます。でなければ、実用的なKPIとして機能しないからです

 ※ワンメディアのよごろさきさんがnote記事で、端的に分かりやすく説明されているので引用させていただきます。

KPI に【目的変数】を設定してしまうと、なぜその数字になっているのか?に根拠が作れません。
【目的変数】の原因となる【説明変数】を分解していきましょう。また、KPI は【説明変数】で構成するようにしましょう。
※トラッキングする指標として目的変数を置いていることはあります

良いKPIを作るための7つのルール【10,000字】|#BtoB事業開発アドカレ

 説明変数の中からKPIを見極めるとは何か?それを踏まえ、私が考えるBtoBマーケティングのMA戦略におけるKPIの考えを次章からお伝えします。

3.KPIはコントロール可能な行動レベル指標であるべき

 ではここからは、私が考えるBtoBマーケティングのMA戦略におけるKPIについて、いくつかお伝えしていきます。

  KPIは目的変数ではなく説明変数であること

 まず初めに、KPIは目的変数ではなく説明変数であることです。その理由を説明する前に、目的変数と説明変数を改めて定義します。

説明変数:目的変数を説明するための変数(目的変数の原因
目的変数:求めたい変数(説明変数による結果

 上記の定義から、説明変数と目的変数は因果関係であることが分かります。つまり、目的変数は説明変数による結果を表したものであり、目的変数はコントロールすることが難しいということです。

 つまり、先ほど例に挙げた「セミナー参加数」は目的変数に該当します。そして説明変数は、セミナー参加という結果をもたらす施策である、セミナー案内のメール送信数や1か月あたりのメール配信数などが該当するでしょう。

 ここでピンときたかと思いますが、セミナー案内のメール送信数や1か月あたりのメール配信数といった説明変数は自社でコントロールできるということです。時間を確保して取り組めば、すぐに達成できるわけです。

 つまりKPIは、コントロールできる指標として設定していれば、未達のときに介入がしやすく管理しやすいので、KPIの運用も可能になるということです。ということを踏まえて、KPIは目的変数ではなく説明変数であるべきだと私は考えます。

  KPIは既存顧客の行動プロセスから探すこと

 しかし、説明変数の中からKPI候補を探すと言っても、どの説明変数が実用的なKPIとして機能できるかを判断しなければいけません。そうでなければ、KPIとして機能しないままKGI未達になります。そこでKPIの探し方として、KPIは既存顧客の行動プロセスから探すべきだと考えます。

 先ほど例に挙げたKGI(3か月で商談数50件を達成する)を基準に、KPIを探っていくとします。商談数の数式モデルを表すと、以下の図になります。

 この数式モデルの中から、変数・定数は以下に分類できます。

定数:当日参加率
変数:リード数、商談化率

 これらはいずれもまだ目的変数のままなので、コントロールができない状態です。KGI達成のために、どの指標数値を重点的にすべきかをここから考えていくのですが、そのためには更に因数分解していく必要があります。

 まず、リード数はどうでしょうか?リード数を増やすには「広告予算を増やす」「フィールドセールス人数を増やす」といった新しいリソースが必要になります。

 しかし予算や人員は、経営層からの理解や承諾が必要です。したがい、リード数を増やすことは簡単にできないと判断ができそうです。

 となると、もう一つの商談率がKPI候補として考えられそうです。しかしこの商談化率も、まだ目的変数の状態です。この商談化率を上げるために、過去に既存顧客へどのようなアクションをしたのかを考えることが、効果的な説明変数として設定できますので、まだ深堀りが必要そうです。

 そこで、既存顧客が商談に至るまでのプロセスに着目して、更に因数分解していきます。すると既存顧客の多くが、お役立ち資料のコンテンツA・B・Cをすべてダウンロードしていると、データ分析から判明しました。このことから、「コンテンツA・B・Cをリードへ提供」することが、(自社への興味度合いが高まり)商談化率を高めており、CSFと設定できそうです。

 CSFが決まれば、あとはKGIと定数の数字から逆算することで、KPIを算出することができます。以下の図に纏めました。

 KPI設計の説明のため、都合よい数値を用いていますが、説明変数として、自社でコントロールできるKPIであることはご理解いただけると思います。ここで伝えたいことは、KPIは既存顧客が商談に至った共通の行動に着目して、その行動を引き起こした企業側のアクションから考えるべきです。

 また、既存顧客の行動からKPIを探すことはビジネスの文脈にも即したクリティカルさを持ち合わせる可能性が高いので、実用的なKPIとして活用できると考えます。

  KGI算出シュミレーションで、KPIが現実的か最終判断する

 KPIを設定したら、最後はそのKPIがKGI達成に向けて現実的かどうかを判断することです。

 先述したリードの商談化率37%は、一般的に現実的な数値だと考えられそうですが、例えば商談化率が50%や70%にならないとKGIを達成できないとなると、リードの質を大幅に改善する必要がありそうです。となると、他の改善施策が必要になり、KPIの見直しが必要になります。

 なので、設定したKPIがKGI達成に向けて現実的な数値なのかを、シュミレーションしましょう。

4.KPIが未達成の時にどう対応できるかが重要

 ということで、今回はBtoBのMA戦略を例に、KPIがコントロールできる指標であるべきについて自分の考えをお伝えしました。この記事を読んで、「都合よい解釈をしているから成り立つのでは?」と思うかもしれません。

 しかし、感覚的に選んだ「なんちゃってKPI」をつくるより、顧客行動のデータに基づき設定した「コントロールできるKPI」として運用する方が、現場での対応も意識も変わり、顧客に向き合えると考えています。

 また、最後に大事なことをお伝えします。今回はKPIを設定するまでの範囲でお伝えしましたが、大事なことはプロジェクトが開始した後で、KPIが未達成の場合に組織としてどう対応するかです。

 KGIは必ず達成しなければならない指標です。そのKGI達成のためにKPIを管理して達成状況を把握するのですが、このKPIが例えば想定よりも●%達成していないことが分かったときに、メール配信頻度を上げたり、シナリオを変えるなどの改善が求められます。

 中小零細企業であれば、スピード感以て改善対応ができそうですが、中堅企業や大企業となると、組織内の意思決定者や決裁者も絡んでくるので、改善対応するまで一定の期間を要しそうです。KPIの進捗が悪い時にどう対応するかを予め決めておくことも、KPIの運用で重要なことです。

 ということで、今回は以上です!最後までお付き合いいただきありがとうございました。

  参考にさせていただいた書籍

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?