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顧客データを活用できないのは、問いの数が少ないからと考えた

こんにちは!クロスコムの本田(@HONDAWeb1)です。

今回は顧客データを活用できないのは、問いの数少ないからと考えたので考察していきます。自戒込めてます。

顧客データはスプレッドシートやExcelなどの表計算ソフトで管理する企業も多いと思いますが、データ活用が重要性が説かれている今の時代に、その管理方法で果たしてビジネスに活用できるのかと問いを立てました。


1.CRMは中小企業の成長ドライバー

CRMツールは中小企業の成長を支援するドライバーだと考えています。なぜならCRMは、業務の自動化に加えて、施策改善に役立つ顧客データを自動で蓄積してくれるからです。

 昨今のCRMツールでは、MA(マーケティングオートメーション)とSFA(セールスフォースオートメーション)の機能を兼ね備えているものが多く、また中小企業でも導入しやすい価格帯(月1万円いかない)のプランも提供されています。

 実際、国内におけるCRM市場は年間成長率10.1%で推移していること、また中小企業向けと謳っているHubspotやZoho、中小企業向けプランも提供するSalesforceなど、CRMベンダーの提供プランと実導入企業数から、中小企業の導入社数も増加傾向であることが推測できそうです。

出典:2023年6月 IDC JAPAN「国内CRMアプリケーション市場予測、2021年~2027年」

 身近な業務に目を向けても、集計された顧客データを基に打ち手を考える活動は当たり前になっています。広告Aでのコンバージョン数値、GA4でのアクセスユーザー属性、セミナー参加者の課題点。定量・定性いずれも顧客データとして大量に入手し蓄積できる今の時代、データなくして打ち手を講じることはほぼ不可能といってもいいのではないかと考えます

 普段からデータに囲まれて仕事している私たちにとって、顧客データを「なんとなく分かった」で分析せずに枯らしていくことは、非常に勿体ないと思うのです。このデータの取り扱い方に、大企業も中小企業も関係ありません。だからこそ、データを利活用する上で、蓄積・視覚化・分析を一元で実行できるCRMツールは、中小企業の成長ドライバーだと考えます。

2.データで経験値を補完する

顧客の購買プロセスが複雑化

 顧客の複雑な購買行動もデータでトラッキングできる時代

 一方で、CRMツールが中小企業の経営課題「収益性の向上」の手段であることは言わずもがなですので、決して導入を目的化してはいけません。しかし、企業の収益性向上に、このCRMツールはかなり有用だと考えます。なぜなら、顧客の複雑な購買行動をデータとして可視化できるからです。

 CRMは、顧客の属性情報や売上明細を個別で管理するだけではなく、Webページのアクセス状況やメールの開封率など、顧客の行動に着目して指標数値として計測することができます。これは、これまで単純化されてきた購買プロセスが、どんどん複雑化されてきている今の時代にとって、収益化の手掛かりとなります。

 特にBtoBサービスですと、意思決定者が複数人いるために購入基準がそれぞれ異なること、検討期間が長いことから継続的な接触によるブランド想起が必要になること、などが挙げられることから、購買プロセスを単純化する(フレームに無理やり当てはめる)ことは現実的ではありません

BtoBとBtoCのマーケティングの違い

 過去の成功体験から考える打ち手には再現性がない

 また、過去の成功体験から同じ打ち手で改善を図ろうとしても、期待する成果に至らないことがあります。なぜなら当時と現在で、リソースも外部環境も違うからです。

 データ主導の意思決定(=データドリブン)に関してさまざまな著名人の主張に触れていると、「データは顧客の行動結果であり、客観的なファクトとして重要な資産」と定義されることが多いと思いますが、まさにその通りだと私も考えています。

 データを正しく見て理解し、得られた示唆から意思決定を行い検証する。このサイクルを繰り返し回すことで、場当たりの再現性がない打ち手から脱却できるので、今後10年20年も継続的に利益を出し続けるには、顧客データを利活用できる体制構築はどうしても必要だと考えます。

 商談前の仮説立てにデータはかなり有用

 また実際にCRMデータを用いると、商談の成功率にも効果が得られると考えます。それは、顧客属性から行動データすべてを蓄積できるため、営業が、顧客の本質的な課題に対する仮説が立てやすくなるからです

 私も7年法人営業の経験をしてきましたが、顧客の課題を的確に捉えてソリューションの提案をするには、商談時間だけでは難しいです。そもそも顧客が課題を1つ1つ丁寧に答えてくれる保証もないですし、顧客が答えられる課題は、実は本質的でない可能性もあります。

 だからこそ営業担当は、顧客の現状と取り巻く課題、メンタルモデル(認知心理学の用語で、顧客が自身のビジネスをどう捉えているかの意)、そしてソリューションにおける仮説をもって臨むことが重要になります

 その仮説が外れていなければ、顧客はあなたをパートナーとして信頼と期待を寄せてくれるようにもなります。商談までの顧客情報が蓄積されたデータは、こうした営業の仮説立ての情報源として、成功の重要な意味合いを持つと私は考えます

3.問いがなければデータは活用できない

データ分析サイクル

 データとは?分析とは?

 しかしこの顧客データをCRMツールに蓄積できたからと言って、簡単に利活用できるわけではありません。そもそもデータ分析という行動は、ヒトによって解釈の違いがあるように思えます。データとは何か?分析とは何か?この言葉をまず定義して進めるべきです。

データ:観測した事実の集まり(定量・定性いずれも含む)
分析 :分解して比較すること

 データは、誰がどの視点から見ても同じ情報が得られるものでなければいけません。例えば、広告のコンバージョン数値。もし今月のコミュニケーション数値が100だった場合、これは運用者が見てもマネージャーが見ても経営者が見ても同じですよね。

 分析については、データ分析における私のバイブル「イシューからはじめよ」の定義が一番しっくりきたので、引用させてもらいます。
以下に原文も記載しておきます。

「分析とは何か?」
僕の答えは「分析とは比較、すなわち比べること」というものだ。分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同志を比べ、その違いを見ることだ。
~~中略~~
つまり、分析では適切な「比較の軸」がカギとなる。どのような軸で何と何を比較するとそのイシューに答えが出るのかを考える。これが絵コンテづくりの第一歩だ。定性的な分析であろうと定量的な分析であろうと、どのような軸で何と何を比べるのか、どのように条件の仕分けを行うのか、これを考えることが分析設計の本質だ。

著書「イシューからはじめよ」ーー知的生産の「シンプルな本質」

 データ分析はデータを集計して終わりではなく、そのデータが得られた背景や結果に対する原因の洞察、入手したい特定のデータへと分解など、集計データに対してアクションすることが重要です。それらは今やBIツールやGPT4などで簡単に集計できるので、ヒトがわざわざしなくても良いと考えています。

 データ分析の出発点は問い

 しかし、データ分析においては、データから有用な示唆を得てビジネスを改善するためのアウトプットが求められます。そのアウトプットを出すためには、データに対してまず問いかけをすることが重要です。そしてアウトプットが出せない理由として、この問いかけの姿勢がないから、膨大な顧客データを前に示唆を出せず活用できない状況に陥っていると考えます。

 さきほど「分析とは分解して比較すること」と定義しましたが、データを分解して比較することで意味が生まれるのは、間違いないと思います(意味のある比較かどうかは分解の仕方次第ですが)。しかし活用となると、話は変わってきます。

 例えば、ある企業の2023年度売上が1億円だったとします。2024年は目標の3億円を達成したい場合、どのように対策を打てばいいかを考えると、まずこの1億円がどのように構成されているかを確認してみることにします。すると、自社商品におけるロイヤル顧客の売上が80%、一般顧客が20%であることが分かりました。

 さて、このデータからどのように意思決定をすればいいのでしょうか。「ロイヤル顧客がたくさん購入してくれるから、一般顧客の購入数を増やす施策を打とう」と考えたなら早合点です。ここで一度「なぜロイヤル顧客の売上が80%なのか?」「なぜ一般顧客の売上シェアがこんなに低いのか?」と問いを立ててみることです。

 この問いに対して仮説をもち分析していくと、「ロイヤル顧客の方がよく購入してくれているから売上シェアが80%になった」のではなく、「一般顧客の初回購入離脱率が高いから、結果的にロイヤル顧客の売上シェアが80%になった」ということが分かったとしましょう。

 このファクトを見ても、あなたは「ロイヤル顧客がたくさん購入してくれるから、一般顧客の購入数を増やす施策を打とう」と考えるでしょうか。違いますよね。「なぜ一般顧客の初回購入離脱率が高いのか?」と、次に新しい問いが生まれるわけです。そして顧客導線のどのフェーズで離脱率が高いのか更に問いを立てていきます。

 簡単な例ですが、このようにデータに対して問いを立てて仮説を基に分析し、分析結果に対してさらに問いを立てて仮説を基に分析する。この問い・仮説・分析のサイクルを回していくことで問いが深化し、意思決定の判断材料として利活用できるというわけです。

 問いかけは、表面的ではなく本質的な課題を発見し、課題解決によるインパクトが大きい効果を得ることができると考えています。簡単に言うと生産性が上がるということですね。ビジネスにおいても問いかけは重要ですが、顧客データに関しても利活用のためにこの問いかけは非常に重要です。

4.問いの数を増やし、分析の質を上げていく

デービッド・コルフ提唱の経験学習モデル

 以上が、顧客データの活用に必要不可欠な問いに関する考察でした。

 問いかけ自体はデータを読み込ませればAIでもできるかもしれません。しかし、意味のある問いかけ、意味のある仮説、意味のある示唆、これらの要素から最適な意思決定を行うには、ビジネスの文脈を理解したヒトの問いかけが重要だと私は考えます。

 最初から意味ある良質な問いかけができるわけではないので、まずは問いの数を増やして数をこなしていくことが重要だと考えます。よく「量と質、どちらが大切か?」という問いを聞くのですが、問いかけに慣れていない間は量を優先すべきです。

 経験学習モデルという提唱があります。これは「経験を通じて学んだ内容を次の経験に活かすプロセス」として、経験→省察→概念化→実践のサイクルをまわすことで質を高めていく。要は、量を増やしていくうちに質に変化が起きる(量質転嫁の法則)ようになるので、まずは問いの数にフォーカスしてデータ分析していくことが大事です。これが、本投稿の指摘「問いの数が少ないから」を主張した論拠です

慣れないうちは問いの数を増やす!まずはこれを徹底していきましょう。


ということで、最後に本記事で伝えたいことをおさらいして終了します。

MAデータにおける分析アプローチ ※一部フェーズを割愛
・顧客データを活用できないのは、問いの数が少ないから
・CRMは中小企業の成長ドライバー
・データは経験値を補完する
・問いがなければデータは活用できない
・量質転嫁の法則にしたがい、とにかく問いの質より数を増やす

記事のまとめ

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