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本を読んで収入が上がるかはわからないけど

「やっぱり本を読まなきゃダメですよね」と、罪悪感をにじませて言う人がいます。読書する人は平均年収が高いだとか、ビル・ゲイツもザッカーバーグも読書家だとか。

どうなんでしょう、しなきゃダメかな。頭の片隅で考えながら、本を紹介することにします。5冊紹介し終わったらまとめよう。

さて、私の読書タイムは大抵お風呂の中なのですが、お湯が冷めるまで夢中になる本にときどき出会います。追いだきボタンを押してまで読み続けてしまった本を、簡単な感想と一緒に紹介します。

01~05は「お風呂読書中、追いだきボタンを押すほど夢中になった本とその感想5文」に書きました。

06 『遥かなるケンブリッジ 一数学者のイギリス』 藤原正彦

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14歳のとき、海辺の家と、山の中腹にある中学校が私にとっての「世の中」でした。毎日部屋の窓から見ていた千葉の海が、世界につながっていると初めて意識したきっかけがこの本。

大和魂と祖国愛溢れる数学者のエッセイで、舞台はイギリスのケンブリッジ大学。
良い意味で、スマートじゃない。ひとりの日本人数学者が「イギリス」に体当たりし、生傷から相手を学ぶようなリアリティがある。
数学、大和魂、イギリス、これらがガツンガツンとぶつかり合って、徐々にひとつの共通点を見出す。見た目とタイトルに反してエキサイティングなエッセイでした。

07 『文車日記』 田辺 聖子

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古典の登場人物が、温度をもって自分を囲んでくるような本です。
高校生のとき、この本に出会っていなければ、もっと華やかな女子高生になれてたかも。それでも、物語の深い世界に引きずり込んでくれたこの本を愛してます。

古典は学習科目ではなく、少しレイヤーが違うだけの私達なんだと教えてくれました。

08 『イン・ザ・プール』 奥田 英朗

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声出して笑っちゃうから外では読まないようにしてます。精神病の患者たちを、患者よりも問題だらけの医者・伊良部一郎が診察し、問題をひっかき回しながらも最後には治してしまうという筋の短編集。

読みやすいコメディ小説。だけどたまらなくこの本を必要とするときがあり、10年近く何度か読み返しています。

09 『学問のすすめ 現代語訳』 福沢諭吉 訳:斎藤孝

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真面目な堅物だと思われてしまうかもしれない。けど大真面目に好き。

今あるルールの中だったら、自分は勝ち組のまま逃げ切れる。けれど、次の世代は?そのまた次の世代は…? 今の自分の勝ちよりも、未来の世代の幸せのため、「ルールを変えよう!」と声を上げた。そんな本だと思っています。
歴史の文脈で見ると私の解釈はばかっぽいかもしれないけど、そう思っていたい。

時代を超えた深い愛情を感じるし、幸せな気持ちになった一冊。

10 『赤めだか』 立川談春

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17歳で高校を辞めて立川談志に入門した立川談春の前座修行エッセイ。落語家の書く本にハマってしまった。
文章が小気味良く軽快で、けど要所要所に人情があって暖かい。

料理のアイディアがほしい時レシピ本を開くように、どんな人間になりたいかのアイディアがほしい時に落語家の本を開いてる。
まだそんなに種類を読んでいないのだけど、この本は良いね。修行をさせてくれる先生がいるって幸せだ。

本を読めば収入や偏差値が上がる?

本を読めば収入が上がるのか。国語の偏差値が上がるのか。上げるような本を読めば、上がるんじゃないかなと思います。

急に方向転換ですが、ハムスターの喧嘩を止める方法って面白いんです。
2匹でとっくみあっているとこに手を出そうとすると、噛まれます。正解は、上からタオルをかけて、タオル越しに片手で1匹ずつハムスターを掴み、距離をとらせるというものです。

急に視界を遮られ位置を変えられたハムスターは「え…?」となって喧嘩のことを忘れてしまうらしいです。

私の思う読書は、この状態です。

「収入上げたい!偏差値上げたい!」と躍起になっている人間の脳を、少しのあいだ別世界に隔離する。

幸せってなんだっけ〜とか、賢さってどういうことなんだろ〜とか、人間らしい温度をもって考える。

頭の成長より頭の隔離を求めて本を読んでいる気がするな。

なので読まなきゃダメなんてことはないはず。読まなくても健康な心でいられてるんだから、むしろすごいんじゃないか。

逆説的だけど、「ああ、本を読まなきゃ!」って考えに苛まれているなら、
良質な本を読めばその考えから解放されるのかも。笑

それでは、また気持ちが向いたら、11から先を書きます。

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