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お風呂読書中、追いだきボタンを押すほど夢中になった本とその感想5文

江國香織さんの『冷静と情熱のあいだ』の中に、主人公のあおいがお風呂につかりながら読書をするシーンがあります。この本を読んだ時から、私の人生の理想は「お風呂につかりながら本を読む生活」になりました。

あおいのようなバスタブとは程遠かったけれど、実家の古い銀色の湯船で本を読み始めました。16歳の時です。それから何度かブランクはあるものの、27歳になった今もお風呂で本を読む生活を続けています。

3年前にKindle Oasisを買ってからは、ほぼ毎日お風呂読書を欠かしません。

このnoteでは、毎日お風呂で本を読む私が、お湯が冷めて追いだきボタンを押すほど夢中になった本を紹介します。

過去10年分、ジャンルごちゃまぜ、思い出した順にゆっくり書いていきます。まずは5冊。

01. 『寝ながら学べる構造主義』 内田樹​

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高校生の時に紙の本で買い、最近お風呂で読むためにKindle版も購入しました。自分の自由な考え、客観的な判断だと思っているものがいかに偏見によって形作られているか。フロイト、マルクス、ニーチェが作り上げた思想をグーッとおろしてきて、寝っ転がったまま読めるようにしてくれた本です。

私は、人を嫌いになりそうなときにこの本を読みます。「今はあの人のこと理解できないけど、私が感じているほど嫌な人じゃないんだろうな」と思えてくる。

02. 『時をかけるゆとり』 朝井リョウ

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声を出して笑える活字。読めば読むほどおもしろが蓄積して、お風呂でひとり「アハハ」と声を上げるくらい。仕事で落ち込んで泣きそうだった日に、ココイチで野菜カレーを食べながらこの本を開き、そこでも「ハハッ」ってなった。

この本の魅力は、愛すべき情けなさ、必死さ×アホさ、みたいなところにあるのだけど、これらを下で支えているのは「自分を笑い飛ばす素直さ」だと思う。ゆとり世代って、頑張ることの大切さは理解しつつ、「な〜に必死になっちゃってんの」って自分を笑うような心のセーフティネットを持っている。

03. 『からだの声をきく』 多田富雄

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「私とは何か?」に「免疫」と答えた本。「これが私」というデータは、体内のHLA分子のポケットに入ったタンパク質のテープにアミノ酸で書かれている。意味がわからないけどすごくワクワクした。

この本を読まなければ、HLA分子とやらを一生意識することはなかったけど、その細胞(?)は確実に今も私の体中にあって、「これは私!」「これは私じゃない!」を判断し続けていると思うと頼もしい。

『からだの声をきく』ってタイトルは秀逸だなぁ。体の声に耳を傾けてあげるんじゃなくて、ずっと喋り続けてた体の声にいまさら気づくって感じだ。

04. 『京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略』 酒井敏

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なんと、とても癒された。帯の文言を見ると難しそうでビジネスチックに見えるのだけど、内容は自由で人間らしくて、ちょっと仏教のお話っぽく感じました。

どこがかというと、人間がどれだけロジックや計算を尽くしたところで、明日の天気すら永久に予測できないというところ。強くなろう、賢くなろう、効率を上げようという努力は大事だけれど、この世界で生き残る完璧な方法には決して辿り着けない。人間も会社も社会も、ムダとアホの居場所を持てないと全体が滅びてしまう。

05. 『アキハバラ@DEEP』 石田 衣良

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インターネットが最高にエキサイティングで、オタク気質は最も幸せだと感じさせてくれる本。2006年出版。

欠点とトラウマだらけのオタク6人が、AI検索エンジン「クルール」を作り巨大企業と闘うストーリー。物語を語るのが、そのAI、クルールだというところも未来感があってワクワクする。

心にくる言葉がとても多いのだけど、我慢して2つだけ引用します。

仕事はぼくたちにとって、この世界への気もちいい挨拶であるべきだ
もっとも弱き者の手のなかに、未来はやどる。それはほんの〇・五平方キロメートルほどの広さしかないリアルな秋葉原でも、限界をもたない広大なネットの世界でも同じことだった。 それでは、読者のみなさんも、よい検索を。 父なるページのいうとおり、どんなこたえを得るにしても、生きることは探し求めることで、よい人生とはよい検索だ。

読書は入浴に近い

読書は他人の頭で考えることだとか、社会人の必読書何冊だとか言われるけれど。私にとっては固まった体と心をふやかして、少し良い状態に再構築するような行為です。ビジネス書であろうと純文学であろうと、エッセイであろうと、その効果は大きくは変わらないような気がします。読書は個人的な心の癒し体験だと思っているのです。

なので、読書人口を増やしたいとか、この本を読んで欲しいとかの意図も特になく……。独り言のようにペラペラと紹介しました。気持ちが向いたときに、また書こうと思います。


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