巨星、南方熊楠

南方熊楠に興味が湧き、
津本陽の『巨人伝』を読破。
子供の頃から一度聞いたこと、
見たことは克明に忘れず、
一度読んだことも
すべて覚えてしまう明治の天才。

あまりに自由奔放のため、
東大予備校で息が詰まり、
北米に渡り、南米を放浪、
英国で学究生活を送る。
何の学歴もないものの
高名な学者に認められる。

英語、フランス語はもとより、
すでに使われなくなった
ヘブライ語、ペルシャ語、ラテン語、
古代中国語などにも精通、
14カ国語を読み書きでき、
その知識は未曾有の如く。

世界的な学者の説の誤りを
様々な資料を基に指摘、
論文が世界中の学者を唸らす。
分野は天文学、植物動物学、
民族、歴史、鉱物、菌類など
あらゆるものに及んだ。

日本に熊楠ありと言われ、
しかし日本では無名だった。
精神分裂に悩まされるが、
学問研究に情熱を注いで克服。
地元和歌山田辺で粘菌研究、
新種を数々発見した。

晩年日本の学者にも認められ、
天皇陛下が和歌山行幸の際、
粘菌を好学されていた陛下に
帯同と進講を仰せ使わせられ、
名誉に心振るわせる熊楠であった。
これほどの学究巨星はその後、
誕生してはいないのではないか。