天女になった

その女の子は
高校生くらいだっただろうか。
妻の従妹である。
生まれたときから股関節が悪く、
ガタンガタンと歩く。
僕と彼女はふたりで
駅前の商店街を歩いていた。

凄く昔のことなので、
どこに行こうとしたのか、
どんな話をしたのか、
すっかり忘れているのだけど、
彼女の純粋な笑顔が今も忘れられない。
汚れのまったくないシミ一つない笑顔。
大きくなっても子供のような笑顔。

その子が死んでしまった。
昨年の暮れ、心筋梗塞だった。
旦那さんが家に戻ってきたとき、
炬燵で眠るように座っていた。
でも体は冷たかった。
もう還暦だったことに驚いた。
あの女の子が還暦だったとは。

今もきっと純粋な笑顔の
女性だったに違いない。
天使のような笑顔のまま、
天国に行ってしまったのだろう。
やさしさもあのときのまま、
天女になってしまったのだろう。
永遠の笑顔の天女に。