骨壺
居間の壁際に骨壺が置いてある。
妻が作った刺繍入りの布に覆われている。
上には紅いバラの花のような飾りが付けられている。
可愛がっていたトイプードルの亡骸。
ただただ静かに眠っている。
生前の写真がたくさん飾られている。
我が家に来たばかりのモワモワの幼い時。
長崎旅行に連れて行ったときの心配げな顔。
一緒にお風呂に入ったときのしょぼくれた姿。
ぬいぐるみを口にくわえ、遊べ!という表情。
毎朝、妻が線香をあげる。
毎日2回換える小さなコップの水。
白い花瓶に、今日は白いユリ。
匂いはきついのにあまりに寂しく哀しい。
もっと明るい色の花がいいよ。
18歳が近づいていたある日、突然彼の容体が悪くなった。
小さく小さくなって、もの凄くおとなしくなった。
クリスマスイブ、妻の胸に抱きかかえられ、一度、心臓が止まった。
大声で何度も名前を呼ぶと意識が蘇った。
でも、クリスマスの明け方、眠るように天に召された。