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負の遺産が人間としての尊厳の回復へと変容する💛

凄い本を知りました。いてもたってもいられなくなってしまい、とうとう購入しました。「トラウマ変容ワークブック」Amazon解説に、翻訳した浅井咲子さんの後書きが掲載されています。。

ただし「トラウマの生ける遺産」は,はじめは決してうれしいものではありません。トラウマとは,今は不必要な防衛なのです。過去にはそれが,個人を虐待的な環境やネグレクトから救い,必ずしも安全ではない養育環境のなかで葛藤や矛盾に耐えながら生き延びさせてくれたものです。恥や罪悪感は,どんなに環境や養育者が間違っていても反旗を翻したりせず,「私/僕が悪いのだから……」と自分を小さく見せることで助けてきてくれました。また,危険な人物や加害傾向のある人にいつも接近してしまう,いわゆる「加害者に対する魅了」は,愛着対象と危険人物が同一のときの潜在記憶として,関係性のパターンとなったものです。こうした,トラウマ的環境下ではサバイバルを助けてきた適応策が,「今,ここ」にあって比較的安全なトラウマ後の人生を歩む際には,生きづらさの原因になるわけです。
 トラウマが癒されていく過程では,防衛適応策から少しずつ抜け出し,そしてその防衛すら愛おしむことができるという道を歩んでいくことになります。耐性領域にいながら,トラウマ関連のパーツたちを受け容れていくには反復練習が必要です。トリガーを認識し,10%の解決策を重ね(ワークシート15),自分の反応の強烈さと頻度が和らいでいくのを実感することで,自分へ共感,愛,慈悲に至るのです。
ですからもうみなさんおわかりのように,発達性トラウマによるトラウマの過去の遺産が変容するのは,魔法のような1 回のセッションによってではありません。単回性の事件や事故の場合は比較的短い時間での解決が可能かもしれませんが,発達性のトラウマの場合,ガイドをもとにした日々の積み重ねが変容のために必要なのです。そしてそのガイドこそが,このワークブックなのです。生き残った自分への称賛と共感が湧いてくる瞬間が点在しはじめ,定着していくときが来ます。トリガーされ反応的になっても,そんな自分を俯瞰でき,不穏な時間が徐々に減っていき,自分とつながることが大丈夫になります。防衛は適切なときに使い,あとは気楽に,快適に過ごせばよいのだということが,徐々に実感へと変わっていきます。

(「訳者あとがき」より,浅井咲子)

これは私が生きてきた過程であり、回復の過程です。あまりにも胸につまされるので、書き写してしみじみと感じ入りました。

今は足枷に見えるトラウマが、過去に過酷な養育環境から幼い私を救うための防衛適応策だということです。HSPの色々を伝える皆川公美子さんが、トラウマを愛しいものと呼ぶ理由が、今ならよく分かります。ここ2年自律神経を整えるセラピーを受けていますが、その中で何度も過去の自分と出会いました。その頃どんな風に一人で耐えていたか、生き延びるために壮絶な努力を全身全霊で重ねたか、毎回のセラピーで実感します。思考を超えた人体の知である自律神経の精妙な働きにより、私は身を守ることができました。例え、危機が去ったあとの比較的安全な場所で見ると合理的でなくても、当時は命を守る切実な意味があったのです。




加害者に対する魅了は、私も根強く持っています。まだ完全にはなくなりません。厳しい指導者に吸い寄せられて、自分を鞭打つように努力してしまう、結果燃え尽きる、ということを何度も繰り返しました。何度自分を戒めても同じことをするので、どこか壊れているのではないかと思いましたが、過去にそうすることで文字通り生き延びたのですね。壊れているどころか非常に優秀でした。

私の場合、愛着対象である母が危険人物でした。翻訳者浅井咲子さんの著書、「今ここ神経系エクササイズ」に、母の様子をよく表す文章があります。

自身の未解決のトラウマ、喪失、愛着の問題など神経系に不調整を抱え難しさを感じて苦しんでいるケースが多いです。養育者自身の愛着のシステムが刺激されることがあると、恐怖におびえる、または、同時に子どもを恐怖にさらす行動をとってしまうときもあります。

「今ここ」神経系エクササイズ 浅井咲子

幼い私の言動が母の愛着のシステムを刺激したのか、間欠泉が噴き上げるようにいきなり怒りだして、延々と怒鳴り続けたりすることがありました。それも毎日一回以上という高頻度です。愛着の対象である母親がこのような状態だと、私ののちの人間関係のパターンが歪んだものになるのは、ある意味当然の成り行きでした。自分がとんでもなく馬鹿なことをする欠陥人間ではないと理解して安心しました。




引用に次ぐ引用ですが、5000人以上のHSPを支援してきた皆川公美子さん(ご自身もHSP)のFBの次の箇所を見て「この本は購入すべし!」という気持ちになったので、ご紹介します。


HSPさんは扁桃体の働きが平均より強いことが報告されてます。
ということは、同じことに出会っても人よりもどうしても感じ方が不安に偏りやすく、それが強烈に身体と脳に刻まれやすい、ということなんですよね。
これまでHSPさんのお話しを伺ってきて
この感受性の高さ(察知能力の強烈さ)が、ネガティブな方面に偏って使わざるをえなかった環境にいると(親や他の大人との葛藤など)、不安や恥の感覚、無価値観、感情に圧倒される感じ、何にも興味が湧かない感じややりたいことがわからない、慢性疼痛を感じる方がとても多いことを肌で感じていました。
そして少し困難が大きめだった方の生きづらさ解除には、思考脳(前頭葉)と爬虫類脳(脳幹)の両方からのアプローチがないと届かない場所があるということも思ってました。

https://www.facebook.com/kumikokkt/posts/pfbid0W7FR1JQTE2cjQ1bv9Pojohbo2xvmBds7Kx9Ck7QVENky8Vhd4SNcTMuBS2Znk1Jzl


皆川さんが多くのHSPに伴走する中で経験的に感じていたことについて、研究で裏付けが取れたそうです。「偏桃体の働きが平均より強く、もともと感じ方が不安に偏りやすく、それが強烈に身体と脳に刻まれやすい」という箇所は、いつも不安に振れる私にはとても安心材料です。もともとそういう作りなのですね。就職、海外旅行、ちょっとしたイベントなど、ふつうなら楽しい、めでたいとされる場面で不安に苛まれることがしょっちゅうです。

そこにさらに不利な条件があります。「感受性の高さ(察知能力の強烈さ)が、ネガティブな方面に偏って使わざるをえなかった環境にいると(親や他の大人との葛藤など)、不安や恥の感覚、無価値観、感情に圧倒される感じ」
これよ、これこれ。母親に愛着障害があり鬼のようになる、父親がASDという厳しい養育環境で、感受性の高さはネガティブに非常に偏って使わざるを得なかったのでしょう。だから私はこうなのかと、深く深く納得します。いつもナーバスになるんだからw」と笑い飛ばされた不安や苦しみが本物だと認めてもらえました涙

「HSP=生きづらさではない」というのはその通りですが、実際に生きていると、生きづらさとして現れることがとても多いのは事実です。

私はいまだ回復の途上ですが、防衛適応策から少しずつ抜け出すことを感じています。以前なら硬直しそうなことも、困難さが明らかに減りました。例えば、生徒の保護者様に問題集の購入をお願いする、指導料の値上げを伝えるなどという場面です。お金に絡むことはトラウマを抱えていない人でもプレッシャーを感じると思いますが、私は「死にそう」になりました。この気持ちは同じようなものを抱えた方なら理解できると思います。胸がざわざわして全身が硬直するような、身体から魂が抜けだすような・・・

紙に下書きしたあとメールを入力して、送信するまで何度も逡巡し、やっと送信したらどっと疲れて仮眠をとるという具合でした。よくぞその有様で家庭教師をしていたものです。幸いその頃は生徒さんは一人だけでした。

今も、ハードに働く同業者さんにはとても言えないような小規模ですが、似たような場面で硬直することはありません。あとは、生徒に思いもよらない角度から質問されて咄嗟に答えられないような時も、ざわざわが腹の底から這いあがってきますが、水を飲んでいくつかのおまじないをすると、どうにか平常心に戻れます。もちろん授業の後に十分な休養が必要ですが。

浅井さんの言う、「負の遺産が人間としての尊厳の回復へと変容する」が、徐々に自分の身に起こっていることを感じて感動します。本を買ったら熟読して、似たような状況にいるお仲間と語り合いたいと思います。



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