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【第3回】北斎づくしバックストーリー【DIGITAL HOKUSAI編】

こんにちは、北斎づくし運営です!

北斎づくしの裏話をにてお伝えする「北斎づくしバックストーリー」第3回です。

第3回は北斎が描き尽くした作品を”体感する”デジタル展示にまつわる裏話、【DIGITAL HOKUSAI編】をお届けします!

「もし北斎の生きた時代に映像という手法があったなら?」

インタビューは凸版印刷株式会社 文化事業推進本部の奥窪宏太さん、柿田貢三さんです。

※インタビュー内容はお二人の話もとに編集しています。

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①ご担当を教えてください。

北斎づくしのデジタル展示「DIGITAL HOKUSAI」の企画を担当しました。

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△「DIGITAL HOKUSAI」施工風景

②特別展「北斎づくし」へのこだわりや見どころを教えてください。

凸版印刷の文化事業推進本部では文化財の「保存」と「活用」という目的のもと、1997年から文化財のデジタルアーカイブを行なっており、主にVR(バーチャルリアリティ)の製作を通じて新たな文化体験を提供してまいりました。(東京国立博物館のTNM & TOPPAN ミュージアムシアターでのVR上映など)

その中で約10年前に世界一の『北斎漫画』コレクターである浦上蒼穹堂店主・浦上満さんとの出会いがあり、浦上さんの貴重なコレクションをアーカイブさせていただくことができました。

そのアーカイブデータをもとに、より多くの人が文化財の新しい鑑賞体験をすることができないか、という発想が常に私たちの中にはあり、今回展覧会を開催するにあたって「デジタル展示」の企画を始めたのがきっかけです。

展示方法は、会場デザインを担当して頂いた建築家・田根剛さんに壁面プロジェクションや小型スクリーンを設計していただき、この大迫力な空間を活かし、北斎の魅力が直観的に伝わるような映像体験を目指しました。

映像は2014年にグラン・パレ (パリ)にて開催された北斎展でも田根さんとタッグを組まれていた、映像クリエイターの阿部伸吾さん、テクニカルディレクターの遠藤豊さん(Luftzug)にご協力頂きました。

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アプローチの方法としては、北斎の魅力を分解し(一瞬を捉える画力、ユーモア、森羅万象を描く好奇心…など)、その魅力が効果的に伝わるモチーフを抽出しています。凸版印刷の高精細なアーカイブデータを効果的に使いながら、本来小さな紙面に凝縮された北斎の魅力を最大限引き出すよう意識しました。
映像制作は阿部さんにご尽力頂き、「北斎の時代に映像という手法があったなら」というイメージを、心地の良いテンポ感と共に具現化して頂きました。

映像は、壁の三面スクリーンと自立型の小型スクリーンに北斎作品を行き来させながら視覚的な奥行きを表現していますが、手前に設置しております小型スクリーン、実は「越前和紙」で作られているんです。

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△拡大。和紙のザラついた質感を表現。

元々は通常のサイネージ用ディスプレイを計画していたのですが、本展覧会のアートディレクター・祖父江慎さんとお話する中で「凸版印刷なんだから印刷や紙にこだわった展示方法も面白いのではないか」という言葉に刺激をいただき、試しに和紙に富士フイルム社製の超単焦点プロジェクタでを投影してみたところからアイデアが生まれました。

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△運良く社内にあった越前和紙へ投影テスト。

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△和紙スクリーンは後ろからも綺麗に見ることができます。『北斎漫画』が刷られた版木は裏側から見える図と同じ向きになりますね。

※展覧会会場では福井県「杉原商店」様の越前和紙を使用しております。(隈研吾さんデザインの国立競技場の内装としても使用されている和紙屋さんです!)

③大変だったことはありますか。

凸版印刷の文化事業推進本部では、文化財の魅力を伝えるためのVRをはじめとしたデジタルコンテンツをこれまでも多く手掛けてきたものの、展覧会の主催というのは初めての経験でした。その立場の中で、豪華クリエイター陣とコラボレーションし、北斎の魅力やそれを伝える表現についての議論を通じてコンテンツを作りあげるのはとても長い道のりでした。

特に、膨大な量の素晴らしい北斎作品が並ぶ展覧会場の中で、このデジタル展示をどう位置づけ、ご来場者に何を感じてもらうかは、クリエイターの方々の知見に大いに助けられました。田根さんが考案してくれたこのユニークなシアターをどう効果的に使うかも考え甲斐がありましたが、阿部さんが見事に使いこなしてくれました。

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④イチオシの北斎作品は?

『北斎漫画』二編に描かれている「岩」と、『北斎漫画』十二編に描かれている「風」です。

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△『北斎漫画』二編 浦上満氏 蔵

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△『北斎漫画』十二編 浦上満氏 蔵

「岩」はデジタル展示の中には登場しないのですが(笑)、ひとつのモチーフの中の様々な表情を描こうとする北斎の情熱や好奇心、またその題材を選ぶかという北斎のユーモアが感じられて個人的にとても好きな作品です。
「風」はデジタル展示の中でもひとつのハイライト的に使用したり、展覧会のメインビジュアルにも採用されていますが、一瞬を捉える北斎の眼や、描き切る画力を感じることが出来る代表的な作品だなと改めて感じます。
印刷会社的な視点でいえば、初編&二編等に描かれた「草」。北斎の運筆の潔さを感じますが、よく考えればこれは木版画。当時の北版画の職人たちの技術にハッとさせられる一コマです。

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△『北斎漫画』初編 浦上満氏 蔵

⑤特別展「北斎づくし」特設バーチャル会場にご来場される方に向けて

9月23日(木)から、特別展「北斎づくし」の特設バーチャル会場が展覧会公式サイトにて公開されています。バーチャル会場では、展示空間も音声ガイドも独り占めできます。会場に来られなかった方や、もう一度ご覧になりたい方にあらためて展示会場をじっくり堪能して頂けると嬉しいです。
「DIGITAL HOKUSAI」で気に入ったモチーフを実物展示で再確認するなど、空間を行き来しながらしながら、贅沢な北斎ワールドにに浸って頂きたいです!

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インタビュー:奥窪宏太 柿田貢三(凸版印刷株式会社 文化事業推進本部)

編集:三澤(北斎づくしSNS担当)



\特別展「北斎づくし」特設バーチャル会場を期間限定・無料公開! /

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公開期間▶︎2021/9/23(木)-10/10(日)

公開場所▶︎展覧会公式サイト https://hokusai2021.jp/special/

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