- 運営しているクリエイター
記事一覧
日常生活は平穏に?|創世の竪琴・その65
そして、自分の世界に1人戻った渚の日常は平穏にすぎていき……
渚たちが作ったそのゲーム【創世の竪琴】を公開する文化祭当日・・・
「渚っ!」
運動場の片隅で、出店で買った焼きそばをほおばっていた渚のところに、千恵美が走り寄ってきた。
「どうしたの?・・」
時計を見た渚は、まだ私の当番の時間じゃないのに?と思いながら千恵美を見る。
「大当たりよっ!あのゲーム!みんな順番待ちでやってるわ!」
役目を終え、あとは帰るのみ?|創世の竪琴・その64
「う、う~ん・・ここは?」
渚は町の宿屋の1室で目が開いた。ふと見ると横のベッドにイルが寝ている。
「気がついたかい、渚?」
枕元でファラシーナの声がした。
「ファラシーナ?・・わ、私?」
渚はファラシーナの方を見ると聞いた。
「もう3日も眠ったままだったんだよ。余程精神力が要るんだね。」
ファラシーナが微笑んで言った。
「そうですね。丸1日竪琴を弾いていましたしね。
イルも今、目が開い
創世の竪琴に想いを乗せ|創世の竪琴・その63
不思議な光景だった。
目の前に広がっている空間は全くの無、真っ白な無の世界。
そこから先は何もない。
見ていると感覚がおかしくなってしまうように思えた。
(真っ白・・普通、無の世界って暗闇なのよね。
混沌とした暗黒の空間にまず光がっていうのが普通なんだけど。
これだと・・・まるで白紙の状態に戻すって言うか・・ディスクの初期化って言うところ?)
「渚!」
1人ぼけーっと考え事をしていた渚は
無法地帯の町|創世の竪琴・その62
そして、一行は最終目的地である、白き無の地に一番近い町、元ファダハン王国の『ファイロン』に来ていた。
ファダハン王国はその圧倒的な権力と軍力で治めていた国王を失ってから、その秩序は完全に失われ、乱れていた。
近隣の国王は白の世界が自国まで広がってくるのを恐れ、秩序を保つ為の援軍も、食料等の物資の援助もしようとしなかった。
砂漠に囲まれた町、そこは、今や完全なる無法地帯と化していた。
「イル
決別の予感|創世の竪琴・その61
「ファラシーナ、リー!」
塔から下りると、扉の外で倒れていたファラシーナにイルが、リーに渚が駆け寄った。
「酷い怪我・・・でも息はしてる!」
「こっちもだ!」
渚は竪琴を取り出すと、回復の音を奏でた。
「ああ・・渚、大丈夫だったのですね。」
「ん。リーもね。」
気がついたリーは、渚を見て微笑んだ。
もっとも、相変わらずフードをかぶっているので、渚からは口元しか見えない。
「ん?・・あ
太陽神の試練|創世の竪琴・その60
最上階、その扉を開けると、太陽神ラーゼスの黄金の像が、イルと渚の目に飛び込んできた。
ゆっくり部屋の中を見渡すようにして入っていくイルと渚。
その像の両横にはやはりディーゼ神殿と同じように台座が2つ、その上に空のクリスタルの入れ物があった。
イルと渚がラーゼス神の像の前に立つと、一瞬部屋の空間が歪み、そして直ったときには無限の空間に2人は、放り出されていた。
あるのは、ラーゼスの像と台座の
太陽神殿へ|創世の竪琴・その59
「ここで龍玉を使うわけね!」
渚は目下に広がる大海原を見ていた。
見渡す限り海のその上空、リーの精霊魔法の力で一行は空に浮く魔方陣の上から眼下に広がる荒立つ海を見ていた。
陸地もなにもないのに、中央でぶつかり合う波頭は、その中心に何かると思わせてくれる。
「ああ、間違いない。水晶球はここを指している。」
シュメから預かってきた水晶球を見ながら、ファラシーナが言った。
「イル。」
「ああ
龍の心臓|創世の竪琴・その58
『我は、1頭で3頭であり3頭で1頭なのだ。』
頭の中に声が重く響く。
「じゃ、じゃ、どんな魔法も効かない・・・」
『その通り。諦めて帰るがよい、人間よ。
ここまで来たことだけでも褒めてやろう。』
「そ、そんな訳にはいかないわっ!ここまで来たのに・・・みんなが・・待っててくれてるのに!」
それまで炎龍に圧倒され、動くこともできなかった渚。
が、自分を守るようにしてイルが、そしてファラシー
雪山の炎龍|創世の竪琴・その57
-ヒュゥゥゥゥゥ・・・-
数瞬後、一行は激しい吹雪の中に立っていた。
「ここが、炎龍のいるフリーアス山・・。」
渚は一歩先も見えない吹雪の中で緊張していた。
「今度は大丈夫だったみたいだね!」
ファラシーナが嬉しそうに言った。
「洞窟へ入るぞ!」
しっかり重ね着してきたとはいえ、この猛吹雪の中ではすぐ凍えてしまう。
イルの掛け声で、周囲を見渡していた渚たちは、はっとしてイルの指し示す洞窟
眠る渚に延びる魔王の魔手|創世の竪琴・その56
その夜、昼間荒野を歩いた疲れで渚はぐっすりと眠っていた。
ふと、人の気配を感じ、渚は目を開ける。
「リ、リー?!」
渚は驚いた、ベッドの横にはリーが立っていた。
「リー、もう大丈夫なの?」
渚は起き上がろうとした、が、まるで金縛りにでもあったように動けない。
(な、何?どうしたの、私?どういう事?)
渚は焦り始めた。
何とか体を動かそうとするのだが、一向に動きそうもない。
「渚・・。」
いざ、転移の魔方陣で出発!|創世の竪琴・その55
「では、始めましょうか。」
リーがイル、渚、ファラシーナの顔を見回すと静かに言った。
翌日、一行は隠れ家からあまり遠くない小高い丘に立っていた。
じっと彼らを見守る山賊の仲間。
リーは精神を集中し魔方陣を描き始めた。
彼の指が精霊文字を宙に描き、それが地面に描いた円内へ収まっていく。
精神で描かれた緑銀の魔方陣が出来上がっていった。
「す、すごーい!」
渚は思わず呟いていた。
「それでは
ベビースライムのお手柄|創世の竪琴・その54
翌日、正午近くにようやく起きた渚たちは、出発の準備を始めた。
山賊から足を洗うことを決め、もうあまり必要ないから持っていけというザキムの言葉に甘え、倉庫の山のような武器や道具から、イルたちは必要な物を揃えていた。
「とにかく、相手は神龍なんだ。手強いぞ。
話して理解してくれるようならいいけどな。」
「そうね・・・快く龍玉をくれればいいんだけど。」
誰もが不安を感じていた。
「魔法玉、もっと
冒険の旅、4人パーティー結成|創世の竪琴・その53
木々の間を駆け抜ける心地よい風と小鳥の囀りだけが聞こえていた。
「分かりました。」
しばらくして、リーは渚のイヤリングの剣を指しながら言う。
「こんな私でよければ、同行させていただきます。
ですが、もし意識をゼノーに乗っ取られ、私自身を取り戻しそうもないと判断した場合、かまわずその剣で私を殺して下さい。」
「えっ・・で、でも。」
「お願いです。約束して下さい、私を殺すと。
私の心まで闇に
魔王と魔導士の過去|創世の竪琴・その52
リーは幼い頃の事を少しだが、2人に話した。
その桁外れな魔法力と魔物の瞳と言われる紫の瞳のせいで、産みの母にも捨てられ、村人に散々迫害され、追われ、命さえも狙われ、村や町を転々と渡り歩いたこと。
「とにかく、生きるために私たちはあらゆる事をしました。
盗みなど、日常茶飯事の事です。
最もほとんど兄が私を養ってくれたようなものですが。
・・ある村での事です。
兄が熱を出し、私は途方にくれていました