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生命保険を学ぶ理由(問題解決編)~アインシュタインに学ぶ

生命保険に加入するときに、私たちは「情報の格差がある」「新しい選択肢がない」という二つの問題に直面する。この問題は、私たちの思い込みから生じているので、問題解決のために、まずはその思い込みに気づくことが必要である。問題を客観的に見ることで、具体的な解決策が見えてくる。


▶生命保険の2つの問題

多くの人が、生命保険に対して、納得のいかない思いを持っています。それは、以下の2つの問題があるからです(詳しくは「問題提起編」参照)。 

 1)売り手と買い手の間に「情報の格差がある」
売り手と買い手の間に情報格差があるのは、どのような業界でも同じです。野菜ひとつであっても売り手の方がたくさん情報を持っています。ただ、野菜は食べてみれば、よしあしが判断できます。保険の場合はそういう訳にはいきません。セールスマンの情報を頼りにするしかないのです。セールスマンが本当にお客様のために話しているのか、それとも自分の利益のために話しているのか、お客様の側ではわかりません。
 
2)買い手に「新しい選択肢がない
生命保険はいろいろな方法で加入することができます。以前はセールスマンとの対面がほとんどでしたが、いまは保険ショップや銀行でも加入できますし、インターネットで加入することもできます。保険商品の種類もたくさんあります。その意味で、選択肢が増えたということもできます。
 
しかし、ここで忘れてはならないのは「安心」です。加入する方法や商品の種類が増えたことが、お客様の「安心」につながっているかどうかが問題です。選ばなければならないことが増えた分、買い手としたら、どれを選べばよいのかわからなくなるという面もあります。そんなときにお客様と一緒になって、「安心」を考えるパートナーが必要です。そのようなパートナーを増やすということが、保険業界としての重要な役割だと思うのですが、実際には保険をいかにたくさん売るかに関心があるようです。
 
問題点の指摘はこのぐらいにしておきましょう。これからはこの問題をどのように解決すればよいのかを考えます。

▶アインシュタインに学ぶ

問題を解決したいのであれば、解決するための糸口をみつける必要があります。問題がなぜ起きているのか、その原因をさぐらないといけません。
 
「問題を生み出したのと同じ考え方で、問題を解決することはできない」
アインシュタインが語ったとされる、有名な言葉です。
 
この言葉を、菩薩なりに言い換えると、「問題からいったん離れよう」ということです。問題に直面しているとき、私たちはひとつの世界に閉じ込められています。 

閉じた世界~中の人は外に出られない

 人間関係の例で説明しましょう。あなたとAさんの関係がよくありません。それは問題です。その問題はなぜ起きたのでしょう。あなたとAさんのどちらか、もしくは両方に原因があります。あなたが「Aさんはなんであんなことを言うんだろう」と思っていると同じように、Aさんは「なぜ私の言うことをわかってくれないのだろう」と感じています。この問題を解決するには、どうすればよいのでしょうか?お互いを批判しているだけでは、問題は解決しません。いったん「外に出る」必要があります。
 
「外に出る」方法はいくつかあります。第三者に仲介に入ってもらうのもよいアイデアです。あなたがこれまでの考えを脇に置いて、Aさんに違った接し方をするということでもよいでしょう。あなたとAさんとのやり取りを外からながめてみると、有効な解決策が見つかることが多いと思います。

▶生命保険に加入するときは、特別な対応が必要

では、生命保険の場合、問題の原因は何でしょうか?
それは「保険への加入は、ふつうの買い物と同じ」と思い込んでいることです。意味がわからないと思うので、説明します。
 
あなたが保険に加入したいと思ったら、何をしますか?
たぶんこんな感じではないでしょうか?
 
まずインターネットで、関係がありそうな情報を探します。気になる商品が見つかったら、保障内容を調べて、よさそうな保険があれば、ネット上で申し込みます。ネットの情報だけではわからないときは、保険ショップで無料相談をしてみます。担当者の説明に納得できれば、そこで保険に加入します。
 
すべての人がこのようなルートで保険に入るわけではありません。自分から保険に入ろうという人は少数派なので、誰かからセールスされたかも知れません。いずれにしても、保険に加入するときは、保険会社や保険代理店という保険を売っている人たちから、保険を買っています。
 
モノを売っている人から買う、というのは当たり前です。コンビニで買い物をするときも、コンビニという売り手から、コーヒーやおにぎりを買っています。私たちは「売っている人から買う」のは当たり前だと思っているので、保険の場合も同じだと考えてしまいます。
 
その考えのどこが問題なのでしょうか?
 
2021年度「生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)によると、1世帯あたり、生命保険の保険料を年間37.1万円支払っています。月に直すと約3万円です。生命保険の契約は長いので、契約期間を30年とすると、3万円×12×30=1,080万円 です。けっこう大きな金額です。
 
高額な買い物をするとき、私たちは時間をかけて検討します。住宅であれば、いろいろな物件を見比べたり、専門家の意見を聞いたりします。特に自分がよくわからないものについては、念入りに検討します。

話をわかりやすくするために、図にしてみました。横軸は「消費金額」で、右にいくほど、高額な買い物です。縦軸は「理解度」で、上にいくほど理解しにくくなります(注:あくまでも、菩薩の主観による分類です。イメージとしてとらえてください)。

買い物の分類(イメージ)

 「住宅」は消費金額が大きいので、いちばん右側にあります。理解度からすると、「まったくわからないわけではないけれど、詳しいことはよくわからない」といったところでしょう。では、あなたが住宅を買う場合、買う前に何をするでしょうか?
 
・物件をいくつか見てまわる
・住宅に関する情報を集めて、確認する(本、雑誌、インターネット、YouTubeなど)
・複数の業者から相見積もりをとる
・住宅を建てた知り合いから話を聞く
 
たぶんそんなことをするでしょう。
住宅のように「高額 × わかりにくい」ものを買うときに、私たちは事前に準備をします。特別な対応が必要になります。ふつうにお店に行って買い物をするという訳にはいきません。住宅以外には、「葬式・お墓」「医療費」といったものが、「高額 × わかりにくい」に当てはまります。
 
生命保険もこのグループに属します(下図)。

わかりにくいものには、特別な対応が必要

けっこうお金がかかりますし、内容もふつうの人にはわかりにくいと思います。そうだとしたら、生命保険に加入するときも、特別な対応が必要なのではないでしょうか?
  
しかし、生命保険に加入するときに、住宅のときと同じように準備している人は、ほとんどいません。考えてみると不思議です。でも、長い間、なんとなくそういうものだと思われてきたので、そのまま続いているだけです。「保険への加入は、ふつうの買い物と同じ」と思い込んでいるわけです。
 
アインシュタインの言葉を思い出してください。私たちの「保険への加入=買い物」という考え方が、問題を産み出しています。そうだとすると、「よい買い物をしよう」という意識では、問題は解決しません。私たちはいったん問題の外に出る必要があります。
 
私たちの問題は2つです。
①売り手と買い手の間に「情報の格差がある」こと
②買い手側に「新しい選択肢がない」こと
 
それぞれの問題に解決策を考えていきましょう。

▶情報の格差を埋めるには?

売り手と買い手の情報量に大きな格差がある場合、売り手側のほうが有利です。しかし、売り手側があまり勝手なことをすると、悪い評判が広がって、そのような売り手をお客さんが避けるようになります。よい例がお医者さんです。最近のお医者さんは、病気のことをていねいに説明してくれるようになりました。医師という人の命を預かっているということもありますが、医者も商売という面もあります。できるだけ情報の格差を埋めるようにして、よい「評判」を得ようとしています。
 
生命保険の場合も「評判」は重要です。保険についてていねいに説明してくれるというのは、プラスの評価になります。しかし、生命保険特有の難しさもあります。加入した保険が本当に役に立つのは、ずっと先になることが多いからです。いまの対応がよいからといって、これからも安心とは言い切れません。
 
それに加えて、保険を売る側が情報格差を埋めようとすると、あまり保険に入らないほうがよいという結論になりがちです。そもそも絶対に入らないといけない保険というのは、それほど多くありません。セールスマンとしては、正直に営業したいと思っていても、営業成績が落ちてしまうのも困ります。なかには正直に教えてくれるセールスマンもいるとは思いますが、希少動物に属します(すみません)。彼らに情報格差を埋めてもらうことは、あまり期待しないほうがよいでしょう。
 
では、どうすればよいのでしょうか?
ここでは3つの方法を紹介します。
 
1)自分で学ぶ
身もふたもない話です。しかし「自分で学ぶ」のがいちばん有効です。本を読む、動画を見る、セミナーに参加する、といったことが考えられます。有効な方法だとは思いますが、難しさもあります。勉強するのには時間とお金がかかります。また、生命保険に関する適切な情報を見つけるのが難しいという問題があります。「いま売れている保険ランキング」や「生命保険にだまされるな」といったテーマは、よく取り上げられますが、本当の意味で「安心」につながる情報は少ない気がします(菩薩が記事を書こうと思った理由です)。
 
2)相見積もりを取る
家(不動産)を買うときには、複数の物件を見て回るのが普通です。それと同じように、生命保険に加入するときも、最低3社と相談することをおすすめします。あなたの希望を伝えて、見積りを取ってみてください。そうすると、掛け金の他にも、違ったところが見えてきます。その違いがなぜ起きるのかを、セールスマンに質問してみてください。少し手間がかかりますが、生命保険のことを知るための、よい機会になると思います。提案内容が気に入れば加入するのもOKですが、見積りを取るだけでもよいでしょう。
 
3)少しだけ契約する
生命保険というのは、それなりに複雑なサービスです。いっぺんに理解するのは、正直なところ難しいと思います。そうであれば、時間をかけて学ぶのはどうでしょう。とりあえず必要な保険に加入しておいて、保険のことを少しずつ学んでいくのです。若いうちに、短い期間の契約をすれば、掛け金は節約できます。とりあえず保障は確保できたので、その期間を利用して、保険のことを学びましょう。
 
加入した後に、セールスマンがどのような対応をするのかも確認できます。もし契約後、あまりコンタクトを取ってこないセールスマンであれば、本格的に保険の加入を考えるときに、見切りをつけるというのもありです。
 
以上、情報格差を埋めるための3つの方法を紹介しました。面倒だと感じるかも知れませんが、払うお金から考えると、割に合うと思います。

▶新しい選択肢を持つ

ここまでは買い手側として、売り手側にどのように対応すればよいのかを説明してきました。基本的な考え方は、「自分をパワーアップさせることで、自分を守る」ということです。
 
これはとてもよい考え方です。正しくパワーアップできれば、効果はバツグンです。ただ、自分で自分を鍛えることになるので、自己流になりやすいですし、時間とお金もかかります。
 
突然ですが、ここで「冒険物語」を思い出してください。主人公は自分一人でパワーアップしますか?そうではないですよね。ほとんどの物語では、仲間や師匠の力も借りて、主人公はパワーアップします(ルフィであればレイリー、ルーク・スカイウォーカーならヨーダですね)。
 
冒険物語については、こんなことも書いています。

 あなたは孤独な戦いを挑む必要はありません。あなたの仲間を持ちましょう。それがお金の専門家を味方につけるという選択肢です。専門家の代表例は、独立系のファイナンシャル・プランナー(FP)です。FPの資格を持ち、金融機関に属さない専門家であれば、100%あなたの利益のために活躍してくれます。FPにもそれぞれ得意分野があるので、生命保険に詳しいFPを選びましょう。
 
FPの役割は、注文住宅における「設計師」に似ています。

注文住宅を建てる場合

注文住宅を建てるときは、まず設計師と相談して、設計図をつくります。設計師は、あなたの希望をヒアリングして、費用面なども考慮して、最適の設計図をつくります。その設計図をハウスメーカーや工務店に発注して、家を建てます。こうすれば、あなた好みの住宅が建てられます。

生命保険に加入する場合

生命保険でも同じことができます。FPにあなたの希望を伝えて、保険の設計図(プラン)をつくってもらいましょう。そうすれば納得感のある保険プランができあがります。独立系のFPは商品の販売をしないので、本当にあなたのために役立つプランを提案します。このプランを保険会社や代理店に持ち込んで、あなた好みの保険に加入すればよいのです(注:FPは具体的な保険商品の説明はできないので、プランはおおまかなものになります。実際に保険契約をするときは、保険種類や保険料などを確認しながら行う必要があります)。
 
FPにプランをつくってもらうというのは、あまり聞いたことがないかも知れません。けれども、注文住宅の例をみれば、不思議でも何でもありません。私たちは「保険に加入するのは、ふつうの買い物と同じ」と思い込んでしまっているので、このような発想が浮かびにくいのです。
 
ぜひ、あなたの選択肢に入れてみてください。もちろんすでに保険に加入している人でも、FPに改めて「いま、本当に役に立つ保険」を設計してもらうのもよいと思います。
 
▶まとめ
私たちは「保険に加入するのは、ふつうの買い物と同じ」という思い込みをしています。そのために、保険に入ったときの納得感が得られません。納得感を得るために重要なことは、いったん問題から離れること。客観的な立場に立てば、解決策が見えてきます。今回紹介した方法を実際に試してみて、ぜひ「本当の安心」を手に入れてください。

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