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生命保険を学ぶ理由(問題提起編)

父と母の葬儀を経験して、納得感に大きな違いがありました。その理由を考えると、葬儀業界の問題と変化に気づきました。では、生命保険業界ではどうなのか?今回は問題提起編です。


▶言われっぱなしで、返す言葉がない

いまから18年前の2006年3月に、父が亡くなりました。天気のよい朝でした。葬儀社に電話をし、病院まで車で迎えにきてもらいます。約3ヵ月ずっと寝たきりだった父が、やっと実家に戻れます。移動中に、葬儀社の担当者は携帯電話で火葬場を予約しました。火葬場は混んでいるので、まず予約をしないと、葬儀のスケジュールが決まらないとのこと。そこからが怒涛の3日間でした。
 
実家に戻ると、葬儀の打ち合わせです。母と一緒に担当者の説明を聞きます。翌日にお通夜、2日後に告別式です。時間もありません。なにぶん初めてのことなので、母も私も葬儀のことはよくわかりません。担当者に言われるまま、祭壇、お花、棺桶、骨壺、お寺、食事などを決めていきます。最終的には、びっくりするような金額になりました。それでも、母は父のために立派なお葬式を出してあげたいという気持ちが強かったので、納得していました。私は喪主である母のサポートをし、それから告別式までの3日間は、ほとんど寝ずに過ごしました。体力的にはきつかったのですが、父のためにも、母のためにも、しっかりと葬儀を行いたいという気持ちでした。
 
たくさんの方が参列くださり、よい葬儀になりました。母も満足しているようでした。
 
しかし、その後気持ちが落ち着いてきたころに、当時のやりとりを思い返すと、疑問が出てきました。
葬儀社がしっかり対応してくれたので、葬儀そのものは満足のいくものでした。ただ、短い時間で、担当者に言われるがままに、すべてのことを決めたので、自分たちで決めたという納得感がありません。お金のことも含めて、もっとじっくり考えることができたらな、と感じました。

▶小さい、でも納得感あり

それから16年後、2022年の9月に、母が亡くなりました。86歳になったばかりでした。毎朝ラジオ体操にでかけるくらい元気だったのですが、「すい臓がん」が見つかり、あっという間に亡くなりました。それでも、最後は自宅で迎えることができたので、親孝行はできたと思います。コロナ禍だったので、病院に入院していると、最後のときを家族で迎えられない可能性もあります。それだけは避けたかったので、在宅医療の病院や介護施設の人たちに、協力してもらいました。短い時間でしたが、お医者さん、看護師さん、ケアマネージャーさんたちは、最後まで手厚いサポートをしてくれました。ほんとうにありがたかったです。
 
母が息を引き取ってから2時間ほど経ってから、お医者さんが来てくれました。その場で死亡診断書を書いてくださったので、それをもって、私は葬儀社に連絡します。担当者はすぐに来てくれました。
 
父の経験があったので、母の葬儀については、私なりに考えていました。母は高齢なので、参列者は、親族とご近所の親しい人に限り、小さなお葬式にしました。父のときと比べると、斎場も小さく(コンビニを改装した建物)、かなり質素でした。けれども、その分、母を身近に感じることのできた、よいお葬式になりました。生前に母が作っていたパッチワークの作品を、参列者にお渡しすることもできて、温かい雰囲気で母を見送ることもできました。そして費用もかなり抑えられました。
 
母の葬儀でよかったことは、納得感があったことです。父の葬儀のときは、「言われっぱなし」という受け身の感覚でしたが、母の場合は、自分で選択したという実感がありました。
 
もちろん、父と母、どちらもよいお葬式でした。父の葬儀のときに紹介されたお寺も、住職さんはじめ、とてもよくしていただきました。父の葬儀の経験があったから、母の葬儀に納得感が得られたと思います。

▶2回の葬儀を通して学んだこと

お葬式には、それなりのお金がかかります。最近では「直葬」という、お葬式をせずに火葬だけで済ませる方法もあるようです。それでも多くの人は、故人とのお別れの機会をつくりたいと思うことでしょう。お金を上手に使うという観点で、父と母の葬儀について、少し考えてみたいと思います。
 
父の葬儀には納得感がなく、母の葬儀では納得感がありました。なぜ納得感が得られたのかを考えてみると、2つの理由が思い浮かびます。
 
ひとつめの理由は「自分が一度、葬儀を経験した」ことです。父の葬儀に関わったことで、葬儀とはどういうものなのかがわかりました。経験があると、実際に必要なものと、それほど必要でないものを区別できます。父のときは、葬儀社のおすすめを、ただ受け入れるだけでしたが、母のときは、必要でないものはきっぱりと断りました。
 
もうひとつの理由は「業界の競争により、新しい選択肢ができた」ことです。少し前までは、葬儀はふつうの人にはわかりにくいものでした。それが近年は大きく変わりました。家族葬のように、「コンパクト」かつ「明朗会計」という、新しいお葬式のかたちを提供する業者も増えてきました。新しい業者の参入により、葬儀業界は大きく変わりました。これまでの葬儀業界はそれなりに儲かる業界だったのでしょう。利用者が葬儀に詳しくないことを利用して、稼いできたという面もあると思います。
 
しかし、利用者側の葬儀に対する見方も変わります。そこに「コンパクト」「明朗会計」を前面にだした業者が現れました。そのおかげで、母の葬儀のときは、よい選択をすることができました。
 
この2つの理由のおかけで、私は納得感を持って、葬儀を選ぶことができました。そんなことを考えていると、生命保険の業界も、葬儀の業界と似ているなと感じました。
 
あなたは生命保険を選ぶとき、納得感がありましたか?「ある」と自信を持って言える人もいるでしょうが、少数派だと思います。なぜ、生命保険に納得感を感じないのでしょうか?葬儀と同じ問題があるからです。

▶葬儀業界は変わった、では生命保険業界は?

まず葬儀業界の問題を整理して、それから生命保険業界について考えます。
葬儀業界の問題は、私が納得感を感じた理由の裏返しです。
 
「いちど経験したから葬儀のことがわかった」というのは、「経験しないとわからない」ということです。売り手側(葬儀社側)は、買い手(利用者)に比べて、格段に多い情報を持っています。何も知らない買い手は売り手の言うことを聞くだけになります。父の葬儀のときの私と一緒です。
 
生命保険の分野でも、セールス側はお客様側よりも多くの情報を持っています。お客様は、保険のことはよく知らないので、セールスマンが話した情報をもとに、生命保険を選びます。セールスマンは自分に都合の悪いことは言わないので、お客様は不完全な情報をもとに判断することになります。
 
これだと納得感はなかなか得られないと思います。このあたりの事情については、<生命保険で100点満点を取る方法(3)>の「情報格差の壁」のところで詳しく説明しています。参考にしてください。

https://note.com/hokenbosatsu/n/ne8a8643ec42c

 「業界の競争により、新しい選択肢ができた」というのは、「競争がなければ、状況は変わらない」ということです。これまでの葬儀業界は、それほど競争が激しくなかったのだと思います。そのため昔ながらのやり方が通用し、わかりにくいところがあったり、値段が少し高かったりしても、利用者に受け入れられてきたという面があったのでしょう。しかし、死亡者数が増加し、お葬式の件数が増えてくると、競争も激しくなってきます。そのような状況で、新しい業者が参入してきました。新規に参入する業者は、これまでの業界の問題に切り込んできます。「コンパクト」「明朗会計」という切り口は多くのお客様の支持を得ることができました。競争によって、葬儀の業界は大きく変わり、多くの人が負担の少ないお葬式をあげることができるようになりました。
 
生命保険業界での競争はどのようになっているでしょうか。私がこの業界に入る以前は、生命保険にはそれほど多くの選択肢はありませんでした。保障は「死亡保障」がメインで、あとは積立機能を強調して、保険が販売されてきました。21日以上入院しないと保険金がもらえないというように、利用者にとっては使い勝手がよいとは言えませんでした。
 
さすがにそのような状況は続きません。保険業界にも、さまざまな変化が起きます。損害保険会社が生命保険業界に参入し、保険ショップができ、インターネット専門の保険会社もできました。最近では医療保険を専門に扱う保険会社も多数設立されています。もちろん新しい商品も、日々、開発されています。生命保険業界でも、激しい競争が繰り広げられています。
 
この状況を見ると、「競争により選択肢が増えた」と見えるかも知れません。問題は、お客様にとって、本当に選択肢は増えたのかということです。いろんな経路で保険に加入すること、バラエティに富んだ商品を選べることは、利用者にとって大きなメリットです。けれども、葬儀業界と比べると、インパクトが小さいように感じます。
 
葬儀業界で起きたことは、まさに天と地がひっくり返るような変化でした。そもそものゲームのルールが変わったようなインパクトがあります。私の例で言えば、父の葬儀には約300万円かかりましたが、母の葬儀はその4分の1ほどでした(もちろん規模の違いはあります)。このようなこともできるという選択肢を与えてくれたという意味で、葬儀業界の変化は目を見張るものがあります。生命保険の世界でも変化は起きていますが、ゲームのルールが変わるというほどではありません。設立当時は話題になった、インターネット専門の保険会社も、いまではあまり耳にすることがなくなりました。
 
生命保険業界は、見た目では激しい競争が行われていますが、それは自分たちの売り上げを確保することが目的で、必ずしもお客様のためにはなっていない気がします。業界としては変化しているつもりなのでしょうが、生命保険に対する満足度が上がったとか、印象がすごくよくなったという話も聞きません(葬儀の業界では変わっていると思います)。
 
ここまで、2回の葬儀の経験から、私が生命保険について感じる問題をお話ししました。問題があるなら、それを解決したいですよね、解決して、納得して保険に加入したいものです。保険に満足してほしいです。納得感を得るための解決策は2つあります。
 
1)情報格差の壁を破る
2)新しい選択肢を手に入れる

 
次回はこの解決策についてお話ししましょう。
 


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