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【保護者との信頼関係の築き方】

保育の仕事をする上で非常に重要な位置を占める「保護者との信頼関係の構築」。これが上手くいかないと、どれだけ良い保育をしていても子どもも親も本当の意味で幸せになることはできないと言っても差し支えないでしょう。それほどまでに保育者が保護者と信頼関係を結ぶことは必要不可欠なのです。
 この文章を記すことによって、信頼関係をどのように気づけば良いかわからない保育者の役に立つことを願っています。

現代の保護者の特徴

 これまで私がたくさんの保護者と向き合ってきた中で3つの特徴があることに気がつきました。一つ目は「子ども観や教育観が歪められてしまっている」ということ。多くの保護者が就学前に文字や数字がある程度書けていないと子どもは学校の勉強についていくことが出来ないし「周りもそうしているから自分もそうしている」と思っているようなのです。また、スポーツやピアノなどの習い事も就学前から習わせており、これも「何か得意なものを見つけてほしい」という親心からくるものだと思います。


 これには私は非常に危機感を募らせています。実際に子どもは就学前に文字や数字、習い事をさせる必要はありませんし、むしろそうすべきではないのです。これには、子どもを経済的な利益の手段にして小さい頃から文字や数字の世界に引き込もうとする企業の思惑があるということを保育士はきちんと理解せねばなりません。
私の他の記事を読んでもらえるとよりわかりやすいのですが、乳幼児期の子どもは、自然の中で思い切り体を動かして遊び、様々な労働を楽しみながら経験し、保育士に選び抜かれた絵本をたくさん読んでもらい、脳を十分に発達させ、心身ともに健康な状態に導いてあげることが何よりも大切なのです。

 二つ目には「受け身の状態である」ということです。現代は情報化社会と言われ、欲しい情報はテレビやスマホで一瞬で検索できます。(嘘か本当かは別として)これは一見、自分で考えて情報を得ようとしているように思われがちですが、そうではありません。「自分で考え、自分なりの答えを出す」という段階を飛ばして答え(しかも赤の他人の!)をまるで自分の答えかのように勘違いしてしまっています。(私たち保育士も受け身になってしまっていることを忘れてはいけません。)

 保育園でも似たような現象が起きています。こちらから働きかけない限り話をしてこない、話しかけてもあまり反応が返ってこないなどの状況がよく起こっています。本当は「うちの子、園ではどんな生活をしているのですか?」「こんな子どもに育って欲しいのですが、家庭でどのようにしたら良いですか?私はこう思うのですが、、、」と積極的に我が子に対して求めて欲しいな、という気持ちです。
 「クレーマーだと思われないか心配」という気持ちはわかるのですが、その気持ちが「受け身」の状態なのです。

 三つ目は「大人になりきれていない」ということです。この状態にも私は非常に心配しています。「子どものために全てを我慢しろ」というわけではありませんが、自分の気持ちを満たすために子どもを振り回してしまっている親が多いように感じます。子どもが親を求めてじっと見つめているのに、親はスマホに夢中になっていたり、まだ2歳にも満たない子どもを夜遅くまで、友達と遊ぶために連れ回したり。言い方が厳しいのですが、まるで子どもを「所有物」かのように扱っている印象を強く受けます。

 さらに「こちらの意図がなかなか伝わらない」ということもあります。身近な例を挙げると「子どもの生活リズムが崩れているので、なんとか早寝早起きのリズムを作ってほしいとお願いをしたところ、まるで自分の育児がダメだと言われたように反射的に解釈してしまう」というような状態です。

 もちろん、保育者はわかりやすい言い方をする努力は必要ですが、最近は様々な言い方を工夫しても脊髄反射的に「それって私の子育てがダメってこと?」と感じてしまう方が非常に多いのです。
 ほとんどの保育者は親に成長してほしい、一緒に寄り添っていきたいという思いで発信しているのですが、受け身であることが当たり前になった世の中、厳しいものがありますね。

 子どもを授かった以上、生活の流れが子ども中心になるのは自然なことです。それに反抗するかのごとく、上記のような状態に子どもを置いてしまうということはやはり親が「大人になりきれていない」というのが大きな要因の一つではないかと私は考えています。

やっぱり褒められたら嬉しい

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 さて、こんな難しい世の中でもしっかりと信頼関係を築く方法はもちろん存在します。それは「褒めること。」これ以外にありません。
 特殊な場合を除き、人間は自分の頑張っていることを褒められたら嬉しい気持ちになります。少なくとも、嫌な気持ちになる人はいないでしょう。「褒める」というのは人間関係を円滑に進める上においては非常に大切な働きをしてくれます。
 「認める」というのも同様です。一見、受け入れられないという感情になったとしてもまずは受け入れてみましょう。受け入れられた相手は自然と心を開いて言ってくれるようになります。
 「どう褒めて良いかわからない」という方。そんなことは絶対にありません。「今日の服、いつも以上に素敵ですね」「髪の毛切られたのですか?似合っていますね」などなど、褒めようと思えばいくらでも褒められます。「お母さんのおかげで、私はこんなに素敵な子どもと生活できているよ、ありがとう」なんて言えるようになったら素敵じゃありませんか?恥ずかしがらずに褒めてあげてください。


一人ひとりの性格と特徴を掴もう

 保護者との信頼関係を築く上で欠かせないのが「人間観察」です。私はしっかりと人間観察をすることによって、親がどういう性格の持ち主なのか、何に悩みを抱えているのか、何を褒められたら嬉しい気持ちになるのかを掴むようにしています。特に注目すべきポイントは、

 ・声色(明るい、暗い、大きい、小さい、早い、遅い)
 ・服装(色、サイズ感、年齢相応か)
 ・子どもとの向き合い方(目線を合わせているか、口調の強弱、内容)
 ・姿勢(猫背、しっかりと伸びているか)
 ・表情(特に目、『目は口ほどにものを言う』と言われます)
 ・ボケに対する反応(どのように反応するかを見てみましょう)

 このような感じです。保護者と会話する時間は朝と夕方の少ししかありませんから、一秒一秒を大切に「あなたを理解したい」という気持ちで人間観察をしてみてください。


具体的な話し方

 保護者に「早寝早起きをしてほしい」と伝える時。そのままお願いだけすると角が立ってしまいますから、具体的な会話を元にお伝えしていきます。参考にしてみてください。

夕方のお迎え時

保「お疲れ様でした!今日、A君の午睡後の寝起きが中々しんどそうで、『いっそのこと布団になりたい!』くらいの勢いだったんです、、、(笑)最近、眠るのが遅くなったりしているんですか?」

親「そうなんです、、『寝なさい』と言ってもいうことを聞かないで。寝つきもあまり良くないんですよね、、。」

「ありがとうお母さん!ちゃんと子どもに寝ることを伝えてくれて、、、そしたらお母さん、寝る時間の30分くらい前になったら部屋の明かりを消してみるなんてどう?子どもっていきなり環境が変わったりすると興奮してしまうことがあってね、、。」

親「あー、、なるほど!やってみます。確かに電気は暗くしていなかったなあ。」

保「毎日のお仕事で大変かと思うけど、よろしくお願いします。旦那さんの協力は得られそう?もしできそうだったら残りの家事丸投げして子どもと一緒に寝るのもいいかもね、、、。(笑)」


 いかがでしたか?この会話には非常に大切なポイントが含まれています。まず最初に、子どもの現状をしっかりと伝えるとともに、少しユーモアを持たせること。こうすることによって、親の心を開き、話を聞いてもらいやすくなります。ユーモアを持たせると、家庭での様子をより詳しく教えてくれます。その情報をもとに、親が努力していることを見つけ、褒めましょう。この場合、子どもに「寝なさい」という親の努力が垣間見えますから、そこをしっかりと褒めてあげてください。

 そして、子どもが眠りにつきやすくなるために具体的にどんなことをしたら良いかを伝えるのも保育士の大切な仕事です。これは本を読んで学習しましょう。
 そして会話の最後。最後にも少しユーモアを持たせましょう。始まりと終わりが笑いで終われば、仕事終わりで疲れている親も、きっと良い気持ちで、前向きに家に帰れることでしょう。

おわりに

 保護者との信頼関係は1日にして成らず、ですがこの信頼関係がないと何もかも上手くいきませんし、お互いに幸せな気持ちでお話しすることもできません。
この記事を通して、少しでも保育士の皆さんの役に立てて頂ければ幸いです。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ライター:斎藤保育を愛している保育士
斎藤公子氏の「さくらさくらんぼ保育」実践園に勤めている保育士。
決して時代に流されない「子どものための保育」に感銘を受け、様々なツールを用いて情報を発信している。
Instagram:sakura.sakuranbo1920
note: note.com/saitouhoiku1920


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