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掌編小説マガジン 『at』

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掌編小説マガジン at(あっと)。 これまで、ななくさつゆりがwebに投稿した掌編小説を紹介していきます。 とりあえず、100本!
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#小説

情景# 06.「住み良しの浜」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景・追録』から「住み良しの浜」です。 実りを得た後の暮らし。 不変と安寧の陽を浴びつつ微睡む自分。 これが正しい。正しいはず……。 なのに。 心の中で舞う澱のような、何かが。 なりたい自分と、今の自分とのギャップ。 求めていたはずの姿と、たどり着いた先で佇む自身のありよう。 坂の上にある一朶の白い雲を求めて必死に駆け上がった……その先で、果たして自分は何をして過ごしているのでしょうか。 この情景は、書き手側である

情景275.「天境線」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「天境線」です。 地平線じゃないんだ? たしか、椎名誠のエッセイで昔、見かけたことがあって……。 とても好きな響き。 「天境線」というフレーズを、実際に小説の書きぶりのなかで使ってみたかったんです。 地面にではなく、天空側に着目したフレーズ。 これはこれで透き通った響きがして好きですね。 この言葉を見かけたのは、確か国語の教科書だったと記憶しています。 調べると、椎名誠さんの「遠く、でっかい世界」で使われて

情景97.「半透明でおぼろげな」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「半透明でおぼろげな」です。 窓ガラスごしに眺める景色。 窓ガラスが反射して映し出すもの。 重なったときに生まれる情景のこと。 ずいぶんと静かな情景です。 雨が降る日にそれを眺めていただけの、それだけの情景を書き出しています。 ただ、個人的にはかなりお気に入りの情景。 この「半透明でおぼろげな」は、雨が街を潤す景色を眺める、というシーンを描いてみたくて書いたものです。 そうして過ごす時間の、静かでゆったりと

情景49-50.「送り雪」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「送り雪」です。 浅い春のなごり雪。 出立する子を見送るために車を走らせる親。 送る人のそばに舞う、ちりのような。 晴れているのに、粉雪が舞っている。 まれにある不思議な天気です。 おかげで空気はつめたくて、ダウンジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、玄関を歩いて駐車場へ。 見送る人に寄り添うように。 そういうふうに舞うから、“送り雪”。 そんな情景をこの掌編にしたためました。 余談ですが作中では、

情景257.「海に碧を溶かした」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「海に碧を溶かした」です。 せっかくなら、気持ちがいい一日を過ごしていたいものですね。 晴れてゆく様子。それから晴れ模様を目にしたときの情景。 海を見て、山に登りたくなった。 もっと高いところから、見下ろしてみたかったのでしょうか。 見晴らしが広がっていく情景、お楽しみください。 ※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。※※ も大丈夫。 ぜ

情景157.「飛行船と見張り台」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「飛行船と見張り台」です。 空のうえ。雲のうえ。飛行船のうえでの情景。 透いて晴れた空でも、空気は冷たいでしょうね。 高度はどのくらいなのかな。2000はないかな。 とか、なんとなく思いながら、飛行船の見張り台で眼下の景色を眺める様子を書きました。 少年少女が背中合わせで空に佇む様子。 中空で孤独を感じつつ、互いの存在を確かめあえる距離感を感じ取っていただけたら。 ……なんでクジラ? ほら、ファンタジーだ

情景259.「朝の感度」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「朝の感度」です。 朝がきて、 起きる? 起きない? そんな情景。 スマホが手からするりと。 重力にしたがって、 のしかかり。 アレ、意外と痛いですよね。 鼻梁(びりょう:はなすじ)とかに当たったらもうたまりません。 ご用心を。 ※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。※※ どこから読んでも大丈夫。 ぜひ、目次から好きな情景をえらんで読ん

大樹に立ち、青空を天に。【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『大樹に立ち、青空を天に。』です。 大樹から地べたを見下ろす誰かが、ひとり。 かすれていく記憶を胸に秘めたまま、眼下の在り様をありのままに捉えたショートショートです。 ……なんて、上記のような紹介の仕方だと、正直よくわからないですね! なんか、煙に巻かれてるような、わかるようでわからないような、でも、ホントそういうショートストーリーなんです。 読んでください! 「あとがき」にもこの旨をちょっと(いやかなり)率直に白状したのですが

薄れゆく夏の陽【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『薄れゆく夏の陽』です。 都会を「向こう」と呼び、故郷(こちら)に戻ってきた青年・染谷修司。 彼はそこで、女子高生の涼香と再会します。 都会を「向こう」と呼び、向こうでがんばってきた青年が、故郷(こちら)でのひとときを過ごすショートストーリーです。冒頭で、夏の夜の情感を味わってください。 実は、ほぼ4000字で〆ることを最初から決めて書いた掌編です。 なので、今こうして振り返ると、もうちょっとじっくり長めのお話にしてもよかったか

言葉が焚きつけてくる【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『言葉が焚きつけてくる』です。 焚きつけてくる、とは。いったい、何が何を? ぜひ、読んでみてください。 これは、創作活動を続けるとあるふたりのショートストーリーです。 創作をつづけていると、自分以外の誰かが手がけたものを、必ずどこかで見ることになりますよね。 時には自分の意思と関係なく、巻き込まれ事故のように、他人の成果や鮮烈な創作物を目にしてしまうこともしばしば。 自分が踏み込んだ分野で。 はたまた自分とは全く違う領域で。 奮

そばにいる彼は空気のようで【掌編小説 at カクヨム】

【カクヨム掌編小説】『そばにいる彼は空気のようで』 今回ご紹介する掌編小説は、カクヨムに投稿している『そばにいる彼は空気のようで』です。 いつもふたりでいるときの落ち着いた雰囲気がすき。 ふたりでいる時間が経つほどに、目新しさも新鮮味も薄れていくのかもしれない。 それでも、それは失くしてしまいたくない。 そんな彼と彼女の思いが穏やかに交差する、大人の恋愛掌編です。 なお、こちらの掌編ですが、ありがたいことに大変ご好評いただき、2021年に新潟のキャスdeわらしべ企画様の

あのひとを追う僕は【掌編小説 at カクヨム】

【カクヨム掌編小説】『あのひとを追う僕は』 今日もあっづいですね。おはようございます。 今回ご紹介するのは私がカクヨム(※)に投稿している掌編小説『あのひとを追う僕は』です。 (※カクヨム:KADOKAWAさん運営の小説投稿サイトで、私もそちらに色々小説を投稿しています。) あのひとを追っていた「僕」のひと幕。 するっと読める恋愛掌編です。 ぜひ読んでみてください。 小さなころはきっと、こうしてお姉さんに手を引かれていたこともあったのだろう。 こういうことって、たぶん

あの音。【掌編小説 at Prologue】

【Prologue掌編小説】『あの音』 小説1本あたり2,000字までのショートストーリーを楽しめる投稿プラットフォーム『Prologue』にこちらの掌編を置いています。 500字もない、すぐに読める掌編です。 タイトルは『あの音。』 何の音か想像しながら読んでいただけると嬉しいです。