どこに行っても矛盾にぶち当たるから、矛盾について考えてみた。

最近どこに行っても矛盾にぶち当たる。哲学や思想、アイデンティティ、アートとファッションの関係など色々なことを平行して学んでいるのだが、どうしてもそれぞれの言っていることが相反する時が出てくる。相反するというのは、互いが互いの矛盾点を指摘すると言うことだ。

それどころか、ある意見そのものに矛盾していることを前提に理論を組み立てているものもある。いや、矛盾すると言うことは、前提があるということなのか。そもそも、この世界に絶対に正しいと言うことはないと言うことは、哲学を多少学んだ人なら承知の上だろうが、その意味では前提というものも、かなり小さいレベル、細かい、ミクロのレベルまで掘り下げていく途中のどこかには、必ず正しくない部分が出てくるということだ。この世界に絶対に正しいことはないとのたまう者が「必ず正しくない」などと、滑稽だ、これこそまさに矛盾である。

矛盾は「絶対」を超えた、さらに上のレベルの規範として存在するといえる。それが成り立たなければ、矛盾する。いわゆる、公理と言うやつだ。公理とは、人間が決めた、絶対に正しいと思う正しいルールだ。これが揺らいだら、すべての理論は破綻する。公理とは人間が決めたルールだ。前提だ。正しいと言うことを証明できないものだ。つまり、すべての理論は正しさを証明できない、故に揺らぎ、矛盾する。

こう考えると、矛盾すること自体は、公理のさらに上に置かれる、絶対のルールであるように感じられる。が、この答えを導き出す論理的思考方法も、あくまで公理という揺らぐルールに基づくもので、正しいかどうか証明できないのだ。むしろ、矛盾をはらむかもしれない。

このように、物事は公理という揺らぎによって、矛盾をはらむのだ。考えることも矛盾するし、何もかも矛盾するのは宇宙に生まれた以上逃れられない。では、どうするか。矛盾するから考えるのをやめて、ぐーたらに一生を過ごすか。それもいいかもしれない。「こんな世の中、間違ってる」と狂うか、人生に終止符を打つか。それもまた致し方ないかもしれない。だって本当に世の中、間違っていることしかないのだから。

だが私は、人生という可能性に希望を持ちたいのだ。では、この矛盾の世界でどう生きればいいのか。

それは、矛盾を受け入れることである。間違いを受け入れることである。どこかの段階で、矛盾を切り捨て、理論を構築することである。どこかの段階というのは、人によるが。今日の哲学は、この矛盾を切り捨てる行為、すなわち前提によって成り立っていると私は考える。哲学だけでない、生活、ビジネス、人間関係、アート。すべて、どこかで何かを切り捨てて成り立っている。この「切り捨て」が、わたしは希望を持って生きる上で大切だと思う。

「切り捨て」は同時に、危険性もはらんでいる。どのレベルで切り捨てるかによって、月並みな表現ではあるが、動物としてのヒトにもなり得るし、人間にもなり得るからだ。例えば、あらゆる思考を切り捨て、ただ生活すること、生殖することのみの人間は、もはやヒトである。反対に、矛盾に対向する方向、矛盾をなるべく認めない方向に向かっていけば、今まで考えてきたように、パラドックスの海に沈んでしまう。人間ではあるといえるか。まあ、その意味では、アートや哲学、宗教は割合人間方向に属しているといえる。矛盾を感じるわけだ。性格として、矛盾を突き詰めている学問と言ってもいいかもしれない。

今、矛盾=人間という表現を取ってみたが、なかなかしっくりくる。人間は矛盾する者なのだ、と言うありきたり表現が、矛盾について考えてきた今では、皮膚になじむ。脳みそになじむ。「落語とは人間の業の肯定」と今は亡き立川談志が主張したが、本当にその通りだと思う。有名な「芝浜」など、人情が故の考えの矛盾を許す話が多い。

さて、「切り捨て」の話だが、この切り捨て、他人に対しても適用すると、人間関係がスムーズになると思った。人間関係についてはいくらか本を読んだ程度で、あとは現実から学んだくらいだが、ある一つの命題にたどり着いた。人格を尊重する(相手を人間として扱う)だ。これを守ればだいたいうまくいくらしい。「こんなこと、きれい事だ、むかつくヤツはむかつくし、許せんヤツは許せん。」と今までは思っていた。しかしここで「切り捨て」である。他人の人格を形作るのは、その人がどのレベルで切り捨てを行ったかによって決まる。よって、そこさえ分かれば、レベルは違えど、人間としてやってることは同じで、相手理解することができる。結果人格の尊重である。

これ以上は、主題から離れてしまうため、また別の機会にでも話す。

以上のように人間は矛盾する生き物だが、矛盾を切り捨てることと、その段階によって、希望を持って生きることができると私は考える。希望を持って生きることが良いことであるという考えは、今の私の考えで、あるレベルで矛盾を切り捨てた者ではあるが。

見ていただいてありがとうございました。






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