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IKEAを愛しているからザリガニを喰う

IKEA、いいよね。好きです。
いや、大好きです。


IKEAはスウェーデン発祥の世界最大の家具量販店である。
家具販売のみに収まらず、店舗内にはレストランやカフェスペースもあって途中歩き疲れた体を癒すことも出来るのが嬉しい。なんなら飯食うためだけに行ったりもする。IKEAはホットドック屋と冗談で言われるのも頷ける話だ。

肝心の家具に関しても言わずもがな最高だ。
2000年代初頭、当時2chの「週末部屋うpスレ」に常駐していた自分は「日本に進出してきたIKEAとかいう北欧ブランドがすげぇ良いらしい」という情報でスレ民と盛り上がっていたように記憶している。(正確には日本からは一度撤退しており、この時は再進出らしい)
しかしその頃のIKEAは今と違って値段もお高めであり、さらにはサイズも海外規格で馬鹿デカくて日本の狭い家屋には置けねぇよこんなのというが自分の感想だった。商品名も発音しにくいし(スウェーデン語?)
けれど今となってはジャパンにも歩み寄りまくりんぐで「もはや日本のブランドなのでは??」と錯覚してしまうほどだ。凄いぞIKEA。しかも今はめちゃリーズナボー。

というわけで今となっては大好きな家具屋さんになっており、誇張なしで月一でIKEAに行っている。片道1時間もかかるのに。見るだけでも楽しいので買うものなくても行ってしまうんだよな。
もはやIKEAのすべてを好きと言ってもいいかもしれない。
いや、そんな保険をかけたような言い方はやめよう。
はっきり言う、俺はIKEAのすべてが好きだ



IKEA 新三郷店

というわけで、この日も定例的にIKEAに訪れたのだった。
普段は立川店を利用することが多いけれど、今回はちょっと郊外の店舗へと行くことにした。もう旅行気分よ。
それくらいIKEAに行くのは楽しいイベントであり、労働で疲弊した心に空いた穴を埋めてくれる体験なのである。
なにせすべてが好きな場所なんだから。


入口へ辿り着き、日差しの雨からようやく解放される。
そして中に入ろうとすると、ふと看板が目についた。


IKEAレストランの期間限定メニューか。
どれどれ……


あぁ、なんだザリガニフェアか


ん?
ザリガニ?
食べるの?

ほーん………………?


店内へ

………………見なかったことにしよう。
IKEAは家具屋さんだからね。家具を見ようね。



う~~家具家具

どこまでも家具が奥へと続く眺め、いつ見ても最高だなぁ。
IKEAの店内は基本的に一本道であり、一つ一つを順に追っていくルートになっている。自分はこれをFFXIII方式と呼んでいる。
目的の商品だけに向かえず店内全域を歩かされるこの形式が好みじゃない人もいるけれど、自分は大好きだ。テーマパークみたいで楽しいんだよね。
それにIKEAのすべてが好きだから。
そうすべてが。


ここに住みたい

ジャンル別にセンスありすぎなショールームが沢山あるのも嬉しい。
素人でもレイアウトがイメージしやすいし、一見して用途がわからない商品も使用例が見れて納得しかない。購買意欲もそそられてしまう。


POÄNG(ポエング) ¥9,990

写真に写っているのは全部ポエングという商品だ。
カラバリの豊富さは人気に比例する。
名品すぎる名品が故に売れすぎなパーソナルチェアだ。
一度腰掛ければ納得。そして値段を二度見して安さに驚愕する。
クオリティに対しての値段が合っていないのでは?? 自分が家具屋だったら対抗できなさ過ぎてIKEAを恨んでしまいそうだ。営んでなくて本当によかった。


TROTTEN(トロッテン) ¥19,990

私の個人的なおすすめも紹介しておきたい。
まずはデスク。最高の色合いだとは思わんかね。
自分はグレーベージュ(略してグレージュっていうらしい)この色が昔のパソコンみたいで大好きなのだが、白って200色あんねんと思わず言いたくなるぐらいに理想のグレージュに中々出会えないのである。
でも出会えた。
そうIKEAならね。
デスクはデカければデカいほど良いので、同じ志を持つものには是非ともオヌヌメしたい。重くて組み立てが大変だけど、重いことは丈夫さと安定力に比例する。デスクが全く揺れないから作業に集中でき過ぎて何度も昼飯を食べ損ねた。


ALEFJÄLL(アレフィェル)¥39,990

デスクワーカーの命題中の命題。それが椅子選び。
高級品であるアーロンチェアだのエルゴヒューマンだのも座り心地は良いのだけれど、どうにもゴツい。オフィスチェアだから仕方ないのだが、もっと可愛いのが欲しい。でも可愛いのは長時間座っていて疲れる。
そんな私の要望もIKEAは受け入れてくれた。それがこれ、アレフィェルだ。
表情豊かな銀面革は高級感溢れる重厚な仕上がりにも関わらず、椅子全体のシルエットの可愛さと色合いがそれを調和してくれて美味しそうなくらいだ。
そして革なのに意外と通気性が良い。そりゃメッシュなんかと比べると負けてしまうけど、しっかりとなめしてあるので肌触りに不快感は皆無。
ロッキングや座面昇降、肘置きも完備しておりオフィスチェアとして申し分がないし、保証も10年。
椅子は合う合わないがあるので注意が必要だが、ハイバックにこだわらないのであれば選択肢の一つに是非とも入れていただきたい逸品。
先述したデスクと合わせて使っているが最高にグッド。


RISATORP リーサトルプ ¥999

大物ばかりもあれなので小物も。
取っ手が付いてるカゴだ。こーーれも良い。
6個ぐらい買って使ってる。並べると可愛いんだ。
カゴ部分の無機質なスチールに、取っ手のバーチ材の柔らかさが寄り添っていて最高なんだよな。バーチ材はちゃんと突板なので質感も本物。ペーパーを貼っているわけではない。年々カラーも増えてる。カラーの数は以下略だ。
人気すぎて100円ショップがこぞって類似商品を出し始めてるけど、カゴの目が細かいIKEAのほうを私は推したい。


魅力的な商品が多すぎる

はぁ~まだまだ好きな商品を紹介したいけど長くなりすぎてしまうな。
照明の豊富さが嘘みたいなところとか、ラグが値段に対して毛が詰まりすぎのクオリティで半額セール中か??と思ってしまうところとか、密かにアパレルも扱ってるところとか、全部一緒に見て回って話したいよ。


いいタイミングで現れるレストランコーナー

まぁとりあえず歩き疲れたのでレストランで休憩しよう。
注文方法は自分でトレイを持ってカウンターへ受け取りに行くスタイルだ。つまり学食方式。
このレストランも曲者で店の順路の中ほどにあるんだよな。つまりここで休憩して後半戦も元気に見れるようになるという仕組みである。憎いねぇ。
レストランで一旦休憩しながら、どの商品が良かったかとか考えてる時間が至福なんですよ。
そんな時間が待ち遠しくてさっそくトレイを手に取りカウンターへと向かう。

さてさて今日は何食べよっかな~~。
おススメのは勿論あるけれど、正直全部美味い。
IKEAのすべてが好きっていうのはそういうことなんだよな。
全部美味い。
そう、ぜんぶね。


ぜん………………ん?


あっ…………。



一旦戻ろうか。
そしてメニューを見よう。
海外色の強いレストランだからね。全部美味いとは言ったけどメニューをちゃんと見るのは大事。
そうそうこの中央右のローストビーフ。これ美味いよぉ~。
何が美味いってローストビーフもそうなんだけど添えられてるポテトの方ね。マッシュポテト。これがマジでマジなのよ。
中央のミートボールも美味い。スウェーデン式のクリームソースがかかっててさ。しかもマッシュも添えられてるし。言うことない。
いやぁ全部美味いなぁほんとに。
全部、うまい。
あっ、でも……。
食べたことないシリーズが…………一個…………。
このままじゃ……全部美味いって言う資格が………………。



購入

観念してザリガニをトレイに置いて、レジへと向かった。
ザリガニを見てすれ違うお客さんが俺の顔を確認した気がする。どんな奴がこれを食べるのかと。いや気のせいだろう……。
そして何故かこれにだけ消費期限的な日付が印字されたピンクのシールが貼ってあった。なんでザリガニだけになんでしょうね……。


レジへと持っていくと「ザリガニの食べ方」という紙をビニール手袋と共に渡された。食べ方の案内が必要な料理を置くんじゃない。


近づいてみよう

深呼吸して席に着く。そしてラップを剥がした。

………………。
わざわざ食べる必要はない。
でも、これを食べなければ俺はIKEAを好きと胸を張って言えない、そんな気がした。
だから俺は食べるべきなんだ。

別にザリガニはスウェーデンではポピュラーであるらしい。
禁漁期間が設定されるほど人気らしく、解禁日にはザリガニパーティナイトッ!と相成る様子。本当か??
でも確かにネトフリで海外のグルメ番組とか見漁っていると、ザリガニは結構出てくる。海外では割と食べるらしい。腹ぺこフィルも食べてた。
銀ボウルに山盛りになったザリガニを皆で手づかみで殻を毟って貪っている光景には驚きを隠せなかったものだ。別にお上品を気取るつもりはないが、あまりにも野生だった。
そして冷静になって考えてみると、番組で取り上げられている時点で色物扱いな気もしてきた。

いや冷静になるな!
これはただの甲殻類! 
つまりエビ!

そうだ、あれだ!
ザリガニだとしても、これは食用に改良されたザリガニなのかもしれない!
そう思って調べてみるとIKEAで提供されているのは普通に「アメリカザリガニ」だった。
自分が生まれ育った西日本にはそこら中のドブにいるやつだ。よく釣って逃がして同じのをまた釣って遊んでた。こいつら阿保だからな。

いやいや、エビ!
アメリカザリガニじゃない!
ドブにいたあいつらじゃない!
エビだから!
ほら美味しそう!!
そう暗示をかけて私はビニール手袋を手にはめた。


命を刈り取る形をしている

まずは腕?を引きちぎる。
「ザリガニの食べ方」によると、ハサミの稼働部分を引き抜くと身が引っ付いて出てくるらしい。


誰もお前を愛さない案件

身は出てこなかった。


続いて尻尾。
ここが一番大きい可食部分だろう。とはいっても小指サイズだ。
殻をむしり取るわけだが、めっっっちゃ堅かった。絶対に食べられたくないという意思を感じる。奇遇だな俺も同じ気持ちだよ。ウィンウィンだね。

そして一口。


……まぁエビだ。
暗示関係なく普通にエビ。なんなら濃厚なエビ。
添えられたディルでも消し切れていない若干の臭みはあって、それが雨季の樹皮のような独特な風味だったが、別に嫌な印象はなく、むしろ個性があって良い。美味いと言っていいだろう。

良いんだけど。
良いんだけど────いや、でもこれ以上は。
俺はIKEAが大好き。大好きだからこれ以上はね。

だからザリガニ話はやめて、変わりに牡蠣の話をします。全然カンケーない話ね。
自分は大洗にまで生ガキを食べに行くほど牡蠣が大好きだったんだけど、一回当たってノロウイルスにかかってから食べられなくなってしまった。食べても味がしなくて美味しくないのである。
でもそれって不思議な話だ。牡蠣は何も変わっていないのに、味が急になくなるなんて。
じゃあ味というものの正体って一体なんなんだろう。俺は何を基準に美味いやら不味いやらを判断してるんだ??
つまり何が言いたいかと言うと、味って言うのは味だけで決まらないように思う。日本語。
要するに食べてる人の境遇とか、食べてる場所の環境とか、食べてるときのシチュエーションとか、そういうので味は大きく左右される。
なのでザリガニ、じゃなかった牡蠣もそう言うことなのだろう。
なのでくっさぁ♡なドブの匂いを思い出してしま……いやノロウイルスの日々を思い出してしまうのだ。
味が美味いとか、関係ないのである。
カエルを食べた時もそうだった。味は鶏肉なんだけど、鶏肉じゃなかった。


というわけで帰りにIKEAでソフトクリームを買って帰った。
口直しをしたかったわけじゃない、決して。
ともかく改めて言いたい。
俺はIKEAのすべてが好きです。



おわり

実際、味は本当に美味しかったけど、「子供の頃に用水路で慣れ親しんだザリガニという存在の殻を手で剥いてそのまま食べるって流れ」が大変な気持ちになった。剥かれた状態のを出してくれたらまた食べたい。
ちなみにレストラン内を見て回ったけれど、ザリガニを食べている人は誰一人としていなかった。あっ消費期限をわかりやすくしてるのってそういう。

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