〈教える〉前に読むnote
仕事を後輩に教えたい!
仕事を引き継ぐためにマニュアルを作りたい!
……でも、なんだか巧くいかない!
そんなあなたに贈る、考えかたのコツをまとめました。
人にものを教えたり、伝えたりする仕事を長く続けてきた私が、これまで身につけてきた「伝えかた」のお裾分けです。応用すれば、問い合わせ対応にも使えます。お役に立てましたら幸いです。
【こんなあなたに】
・後輩に初めて仕事を教えようとしている人
・自分の仕事を後任者に引き継ごうとしている人
・マニュアルを作ろうと思った人
・初めて講演をしようとしている人
・電話対応/窓口対応が苦手な人
・そのほか、「伝える」仕事の初心者
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【目次】
A 考えかたの手順
B ポイント
C 応用編
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【A 考えかたの手順】
更地に家を建てることを想像してください。
あなたの話を聞く人は、あなたの話を基にして、更地に家を建てるのです。そのイメージがあると考えやすいと思います。
①目的を伝えましょう
家の完成図、全景を伝えます。
そもそもこの仕事はなぜ必要なのか? いちばん初めは、相手がそれを理解していないことがあります。
例えば、「請求書を仕分けして番号を振る仕事」の本質は、「予算の出所を振り分けること」にあったりします。「番号を振ること」そのものが目的ではありません。この仕事をなぜ行うのか、が解ると、聞き手も道筋を立てやすくなります。
教えることは、相手と情報を共有すること。初めにゴールを共有しましょう。
②あらすじを伝えましょう
家の設計図を共有します。
いつ終わるかわからない話を聞くのは退屈なものです。単純な作業であればいきなり手順の説明に進んでも良いですが、例えば「エクセルシートAで計算をして」「その結果をもとにしてシートBに表を作って」「所定の形式に加工して保存する」……など、複数の工程が必要な場合は、あらかじめ簡単に伝えておきましょう。聞き手に心の準備ができます。本の章立てを想像してみると良いでしょう。
③手順を単純化して説明しましょう
ようやく本題に入ります。あなたの知っていることを相手に説明しましょう。ただし、前のめりになってはいけません。大前提として、あなたと相手の間には知識量の差があります。一気に注ぎ込んでも相手のキャパシティを超えてしまうことがあります。あるいは、内容が相手の中で繋がらず混乱することがあります。まずはもっとも基本的な手順に絞り、順を追って伝えましょう。補足や応用はあとから付加したら良いのです。
【B ポイント】
①本筋と補足は分けましょう
初めて聞く話において、細かすぎる内容を消化するのは難しいものです。聞いた直後は、「重要な本筋」と「些末な補足」を分けることもできません。なぜなら相手はその話を初めて聞くからです。
例えば、エクセルでSUM関数の使いかたを教えるとき、いきなりオートSUMのショートカットキーまでを伝える必要は無いわけです。仮に伝えたとしても、その情報は「SUM関数の使いかた」と等価ではありません。(後述しますが、相手に事前知識がある場合は除きます)
②どこまで深掘りするかを検討しましょう
相手にどこまでの情報を伝える必要があるのか、教える前に考えてみましょう。
エクセルでの表作成を教えよう、ということになったとき、「表のかたちを整える」「自動計算できる関数を入れる」「それを基に分析する」……どこが相手にとってのゴールになるのか。それによって、伝えるべき情報量が異なります。情報の総量が多いときほど、A②のあらすじが重要です。
特に初心者を相手にしている場合には、相手のキャパシティを超えないように気をつけましょう。逆に、経験者が相手であれば、細かいプラスアルファを付け加えても良いでしょう。経験者相手に浅すぎる内容では意味がありません。
③マニュアルを作りましょう
これまで説明した内容を書面やデータで残すとマニュアルができあがります。
マニュアルを残す最大のメリットは「あとで見返せる」こと。例えば次のような状況では有効です。
・手順が煩雑で復習が必要であるとき
・教えるタイミングと実行するタイミングが合わないとき
・複数の相手に一律の内容を教えたいとき
逆に、相手によって伝える内容を変える必要がある場合には、マニュアル作成は不向きです。ただし、場合によっては資料を残しましょう。復習できる環境を整えることは重要です。
【C 応用編】
ここから先は応用です。
一方的に伝えるのではなく、相手とやりとりをしながら、必要な情報を提供していきます。電話対応や窓口対応をスムーズに行うコツとしても使えます。
①相手の状況を確認しましょう
相手が家を建てようとしているその場所は、更地ではないかもしれません。
エクセルを教えてほしい、と頼んできた人がいたとして、その下地は人それぞれです。「触ったことがない」という人であっても、「ワードならそれなりに使えます」という人と「キーボード操作がおぼつかないです」という人では下地が違います。
説明の前に、相手がどこまでの知識を持っているのかを確認しましょう。問い合わせ対応の場合、なるべく正確に相手の状況を把握しましょう。それを確認するための質問をいくつか用意しましょう。yes/noや2~3択で答えられる簡単な質問がベストです。howやwhatで尋ねると、相手が「なぜその質問をされるのかわからない」ために、こちらの求める回答が得られないことがあります。
②相手の要求を確認しましょう
B②の内容と重なりますが、相手の要求の意図を確認しましょう。例えば「エクセルの使いかたを教えてほしい」と言ってきた人が、「エクセルを使う」ということにおいてなにを想定しているかを確認しましょう。「SUM関数を使った簡単な表を作れれば充分」なのか「ピボットテーブルを使いこなしたい」のかによって、教える内容の解像度が変わります。
③相手に解る言葉を使いましょう
説明の際には専門用語を避けましょう。例えば「ドラッグ&ドロップ」という言葉が通じる相手かどうか。「マウスで長押ししてそのまま引っ張ってください」と伝えるべきかどうか。それがあなたにとってどんなに基本的な言葉であったとしても、目の前の相手に伝わるかどうかを常に考えましょう。特に社内で用いる専門用語は、初めてのお客さまを相手に使わないように気をつけましょう。
④相手を責めてはいけません
解らないこと、知らないこと、なかなか覚えられないこと、そのすべてにおいて、相手を責めてはいけません。「こんな簡単なこともできないなんて」は禁句です。それはあなたにとって簡単な仕事であるにすぎません。ただし、相手が明らかに努力を放棄している場合には注意しましょう。
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以上、少しでも参考になりましたら幸いです。
ポイントは、「相手の状況を確認する」こと。「私がなにを伝えたいか」よりも、「相手がどのように受け止めるか」を考えると、きっと巧く伝わるはずです。
お役に立てましたらコーヒーでも奢ってやってくださいませ。
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