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ハイライン攻略!(いまさらマッチレビュー):11月25日川崎フロンターレ対ガンバ大阪戦

 もう3週間も過ぎているので今更だけれど、川崎フロンターレが優勝を決めたガンバ大阪戦の「いまさらマッチレビュー」書きます(笑)。スコアとしてはフロンターレが5-0で快勝した試合。

 酔っ払いながらだけれど速報書いたし、時間も経ったしもういいかと思ったのですが、天皇杯決勝で当たる可能性あるし、三笘のプレーとかいつものように数えてみたのでやっぱり書くことにしました。いまさら何回かに分けるのもどうかと思うのでいつもより長いです。

まずはお互いのフォーメーション

 スタメンはこんな感じ。フロンターレは谷口彰悟が前節のレッドカードで出場停止の為、車屋紳太郎が代わりに入り、ガンバは井手口陽介が欠場。井手口を見るのは楽しみにしていたのでそこは残念。

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 かみ合わせてみるとこんな形になる。

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 中盤を見ると、ガンバはボックス状になり、フロンターレはダイアモンド状になる。この形の4バックは4-1-2-3に取っては攻めやすい相手になる。特に両ウイングの突破力・ボールキープ力を考えれば、ハーフスペースへの圧力が弱まり、インサイドハーフが動きやすくなるからだ。

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アンカー守田へのマークとフロンターレの対処

 これに対し、ガンバは守備時に2トップがアンカーの守田をマークすることで対応しようとした。

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 こうすると守田にボールを出しにくくなり、サイドにパスが誘導されやすい。ガンバは、そうやってサイドにボールを誘導し、しかも山根を押し下げることで、サイドにおける推進力も減殺させようとしていた。こうやってサイドから攻められたとしても、中央をボックスでしっかり守っていれば守備が破綻することはないということだろう。

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 実際、試合が始まってみると、守田へのマークのため、フロンターレが前進するときは、守田経由ではなく両サイド経由が多くなった。こういうときにここ何試合か見られるのが、田中碧が最終ラインに落ちて、擬似的な3バックになり、特に山根に高いポジションを取らせること。

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守田へのマークもかかっているから田中へのマークは甘くなり、結果として田中から多くのパスコースが形成される。また、山根と家長の距離が短くなって、右サイドの突破力を増幅することができる。

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こうすることで、前半のフロンターレは両サイドを崩していった(後述)。

ガンバのハイライン

 ガンバの守り方のもう一つの特徴は、ラインを高く保ったことだった。以下の2枚はそれぞれ前半と後半だが、フロンターレのサイドバックがボールを保持している時でも最終ラインは非常に高い位置を保ち、中盤の密度を高めている。

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 この試合、ダミアンの先制点を含め、フロンターレが裏を突く場面が多かったが、その背景としてはこのガンバのハイラインがその背景にある。

 現代攻撃サッカーで、ハイラインによって中盤の密度を上げていくことは必須のオプションだが、この試合に関して言えばフロンターレの有利に働いた。

 まず、前述したポジショニングの関係でフロンターレのインサイドハーフは前への推進力を得やすい状況にあった。しかも、ガンバは井手口が不在だったことで、中盤でのボール奪取能力が低下していた。確かにスペースは少なかったが、大島の調子が良く、わずかなスペースを作り出してはそこから素早くパスを繰り出し、チャンスを作り続けた。さらに三笘薫がドリブルで裏のスペースを攻め続けた。さすがにドリブルを受けるとラインを下げなければならないから、ラインの上げ下げや三笘への対処でガンバの最終ラインは消耗していった。
 しかも、フロンターレが先制したことで、後半のガンバはハイラインを維持しながら点を取りに来た。フロンターレも最終ラインを下げなかったので、中盤でのボールの潰し合いになり、ボールを奪取したフロンターレは素早く裏のスペースにボールを出してカウンターを仕掛けた。東口順昭の攻守に何度か阻まれたが、そうやってフロンターレは点を重ねていった。その結果の5-0だ。

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フロンターレの攻撃分析

 ではここからはいつものフロンターレの攻撃分析。まずは左サイドと右サイドをえぐった回数を数えてみる。

(前半)
 左サイド:10
 右サイド:10
(後半)
 左サイド:5
 右サイド:3

 この試合も、一時見られた左サイドへの偏重から脱却し、右サイドも同程度に使っていることがわかる。前述した、田中碧が最終ラインに落ちてビルドアップに加わることで、山根視来と家長昭博の連携性が増したことがその背景にある。その結果としての家長のハットトリックだ。
 また、後半はサイドをえぐった回数が少ないことにも気づく。これも前述の通り、ガンバが後半になっても、あるいは後半になってさらに最終ラインを上げてきたので、フロンターレとしては裏のスペースを突いてのカウンター攻撃を頻繁に行えるようになり、一度サイドをえぐらなくてもまっすぐゴール前に直進すればいい状況が数多く生まれたことによる。

次に三笘へのパスの出所(敵陣限定)。
(前半)
 登里享平:6
 大島僚太:6
 車屋紳太郎:4
 ダミアン:2
 田中碧:2
 家長昭博:1
 守田英正:1
 こぼれ球:1
 
(後半)
 ダミアン:3
 登里享平:3
 家長昭博:3
 大島僚太:1
 田中碧:1
 車屋紳太郎:1
 守田英正:1
 山根視来:1
 小林悠:1
 こぼれ球:1

 通常、登里が突出して多いのだが、この試合の前半は大島との絡みが多く見られる。これは最近の、「まずショートパスを交換してディフェンダーをずらしてからドリブルする」という「ミトマドリブルの下ごしらえ」をきちんとやったからだろう。

 後半、ダミアンや家長とのパス交換が増えている。これもまたガンバのハイラインと関係している。これは裏のスペースに抜けたときにまず3人で攻めていることが多いからだ。

 最後に三笘のプレー選択とドリブルの成功率を見てみよう。
 プレー選択は、
(前半)
 ドリブル:6
 パス:15
 シュート:1
 パス受け時にデュエルでロスト:1
(後半)
 ドリブル:6
 パス:10
 シュート:1
 パス受け時にデュエルでロスト:1

この写真は自分でコーナーキックを蹴り、リターンパスを受けたときにデュエルでロストした瞬間。

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 プレー選択を見ると、この日はドリブルよりもパスの方が多い。やはり、中盤の密度が高い中、ショートパスを交換してからドリブルを仕掛けていったことがわかる。

 ドリブルの成功率はどうか。
(前半)
 大成功:2
 成功:2
 失敗:2
(後半)
 大成功:3
 成功:3
 失敗:1

(〔大成功〕がシュート、シュートにつながるクロス、CKやファウル獲得、〔成功〕が味方へのパス成功、〔失敗〕がボールロスト)

 このように、合計でボールロストは3回。

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 ちょっと多い方ではあるが、成功率は14分の10で8割を超えている。十分な結果といえるだろう。

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 この試合は特に昌子源とのマッチアップが見応えがあった。お互いクリーンで、インテンシティの高い攻防だった。

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次は天皇杯?

次はガンバとは天皇杯の決勝戦で当たる可能性がある。

 正直グランパスとの最終決着が見たかったが、そこでまた昌子と三笘の対決を見たい。また、井手口のいるガンバの試合ぶりも見てみたいと思う(うっかり抽選販売に気づかず、チケット取れてないのだけれど・・・・)。

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