黄色い花束
今日は大切なものに気づけたお話を。
私と、大好きなお友達と、素敵な花束のお話です。
自己紹介でも書きましたが、私は音楽が好きです。小さいころからピアノ、中学生からは吹奏楽、大学からはアカペラを始めました。
これは大学生になって初めてのライブでの話です。
アカペラってご存知ですか?
楽器を使わない音楽です。だいたい五人か六人のバンド単位で歌います。サークルが主催するライブもありますが、今回は小さなライブハウスで開催される外部の「箱ライブ」での話です。
その日、私は初めてのライブでした。
アカペラサークルに所属していながら、特別歌がうまいわけではないので、人前で歌うことに慣れておらず、また歌う曲も自分たちでアレンジしていたため、「楽しみ」の気持ちに「不安」が圧勝してしまっていました。
外部のライブですから、当然、同じライブに出るバンドさんもみんな初対面です。
不思議ですよね。知らない人たちはそれだけで上手に見えるんです。
もう完全に緊張と雰囲気にメンタルがやられていました。
ライブには、当然ですがお客さんがいます。
私は高校で一緒に吹奏楽をやっていた友達に声をかけ、当日空いていた何人かが来てくれることになりました。
本番直前、友達からのLINE。
「無事着いた!たのしみ~」
それだけで、こころがふっと軽くなった気がしました。
友達は吹奏楽を続けている子もいれば、ダンスの道に転向した子、Jazzを始めた子など、卒業後の活動はさまざまですが、みんな努力家で才能にあふれる本当に素敵な子たちです。
大学生になってからも、私のライブのようなイベントを開催する人がいれば必ず誰かが応援に行く、そんな関係です。本当に素敵な仲間に恵まれたな、と常々思います。
本番、スポットライトを受けたステージから見る世界は思ったよりあっけなかった。狭い箱です。お客さんとの距離が近く、ひとりひとりの顔がはっきり見えるほど。
友達の顔を見つけました。目立つ場所。私に向かって手を振っていました。優しい笑顔。がんばれ、と動いた口。
それらは私の緊張を解きほぐすには充分すぎるものでした。
ステージは一瞬。よく覚えていませんが、悪い記憶がないということはそれなりの歌にはなったのでしょう。
終了後、ライブハウスの外で合流しました。
第一声は、
「おつかれ、よかったよ!」
それだけでもう充分でした。
かつて一緒に音楽を楽しんだ仲間が、違う道に進んだ私を応援し、認めてくれる。
ただ、それだけで私は救われたような気がしました。
しかしそれだけではなかったのです。
「あ、これ!みんなで選んだんだよ」
そういって渡されたのは、黄色い花束。
ライブハウスで花束。あまり見ない組み合わせじゃないですか?
なんで、と聞いたら、さも当然のようにこう言われました。
「だって演奏会には、花束でしょう?」
そのとき、はっとしました。
私の中でライブと演奏会は別物でした。自分の歌に自信がなかったからこそ、「地獄のような練習を乗り越えた吹奏楽のがちがちの演奏会」と「練習し足りないけど当日になったから本番のライブ」は無意識に違うものと考えてしまっていたのです。
でも、みんなの中では違った。
私がやってる音楽を認めてくれた。
そんな気がしました。
要するに、友達がだいすきだ、ということです。
そして、私と友達をつなげてくれた「吹奏楽」とそれを象徴するような「黄色い花束」。
私に大切なものが増えた瞬間でした。
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