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#15羊の徒然言『面白ければALL OK人間との下らない話』

 知り合いとの会話。

「そういえば、またやられたんだよ。俺の後輩が。」

 引き笑いでその人は言った。
話を聞くと「俺の後輩」は、女に入れ込むタイプで、クラブの女に貢いでは逃げられるというのを繰り返しているらしい。

「でも今回はちょーっと可哀想に思えたよ。」

 その言葉とは裏腹に満面な笑みだ。

 東京で出会った「俺の後輩」と水商売の「女」。店外でのデートを重ねていたが「俺の後輩」は単身赴任で地方に半年移動しなければならなかった。

「行っちゃうの?寂しい。」

 女はしばらくの別れを名残惜しんだ。

          が

「寂しかったから私も来ちゃったの、◯◯っていうお店で働いているから会いに来て。」

 と女のメッセージがきた。 そこまで聞いていた私は、その女のメンタルを疑いつつ、まあでも自分のために追いかけてくるって嬉しい人は嬉しいか、と自分を納得させる。

「まあ、後輩としては嬉しいわけよ。で、毎晩毎晩店に行ってシャンパンを下ろすわけなんだけど。まあ、だからいつもいつも金がねえ。金がねえ。つって嘆いててさあ。」

 結局、お金は涌き出てくることはないのだし、金の切れ目が縁の切れ目がありありと分かる関係性だろうし。「俺の後輩」がどうにも首が回らなくなったことを察知したのか、女は店をやめ、目の前から姿を消したのだそうだ。

「な、可哀想だろう。いくら女に落としたんだっけなあ?そんで、まだ店に通いつめてた頃、よく俺に聞くんだよな。絶対、俺(後輩)のこと好きですよね?大丈夫ですよね?って。」

 私は、あなたはなんと答えたのか尋ねた。

「大丈夫大丈夫!絶対好きだよ!店通わねえと離れてくぞ!それでもいいのか!って。」

「あなたが沼に落としてどうすんの!」

「そうそう、最後にね、ポンと後輩の肩を押してあげたわけよ。そしたら、そのまま沼にトポーンとね。落っこちたわけよ。ああ、女に少しくらい金もらってもいいくらいだよなあ。」

 その人はひひっと笑う。

「こいつは全く、どうにかなってしまえ。」とため息をつきながら、「面白ければALL OK」「NO MORAL」を信条としている隣のその人がこれからも面白い話を私に提供してくれることを心から祈るまで。
 とはいえ、その人の口を衝いて出る話はほとんどが下世話な下ネタなので、やはり「こいつはどうしようもないな」と肩をすくめた、そんな話。
 

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