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 人間が疑似的な性行為の相手と出来るように作られた人形のこと。男性型女性型ともあり、容姿や外見年齢も様々なものが存在する。かつて「ダッチワイフ」と呼ばれていたが、高品質なものを製作販売しているオリエント工業が自社製品につけた呼称が一般名詞化した。

様々なラブドール(オリエント工業ウェブサイトより)

 オリエント工業以前の「ダッチワイフ」には、南極越冬隊の性処理用に使われたことで知られる「南極1号」など、低品質で外見も美しいとは呼べないものが多かった。そのため美しく精巧に作られた高品質のものがラブドール、外見などが低品質のものをダッチワイフというイメージで呼び分けられることもある。
 なお、ダッチワイフとは直訳すれば英語で「オランダ人の妻」という意味であるが、由来については不明。特に差別語として問題視されたものではないが、2000年頃から単純に「ラブドール」の名称に押されてダッチワイフという呼び方が廃れてきているというのが実情のようである。
 2017年4月に高名な写真家・篠山紀信氏がラブドールの写真集『LOVE DOLL×SHINOYAMA KISHIN』を刊行、同年6月にはラブドールの展覧会『今と昔の愛人形』が開催されたが、女性に人気を博したという。

 ラブドールを「使用」する行為はあくまでも自慰であり、またそのドールの外見が何型であれ実際の人間の人権を侵害するものではない
 さらに通常はバイブレーターやSMグッズ等、他のいわゆる性具と同じカテゴリであるため、アダルトグッズの専門店や18禁コーナーで販売されているものであり「ゾーニング」された流通がなされている
 さらに上記オリエント工業は、創業者の土屋日出夫氏が知己の脳神経医から、障害者がその性生活に困難を来たしているという話を聞いて設立されたという。また使用済みのドールの回収も請け負っており、廃棄にあたっては人形供養も行うという“美談”を持っている会社である。

 以上の理由により、ラブドール全般を表現規制派が非難するのは困難であるが、そのため常套手段である「児童タイプ」(【小児性愛】などに対応しているもの)のドールに集中攻撃を仕掛ける傾向にある。
 
ネット論客の青識亜論氏はこれを「10年前の児童ポルノ規制法改正案の亡霊」と批判している。

実際にその通りであり、彼らの主張は黴の生えた「ポルノ有害論」や「ロリコン漫画規制論」のターゲットを丸々ラブドールに挿げ替えたものでしかない。単に「少女型」「児童型」ならば攻撃が通りやすいだろうと思って狙っているだけであり、内容に新規性はなにもない。

児童型ラブドールの主な規制論
 最もポピュラーな規制論は「児童への性犯罪を助長する」というものである。これは単純に児童にも何にも限らないポルノ有害論に、同情を買うことだけを目的に「児童への」と取ってつけただけのものである。
 このようなタイプのメディア有害論は現在学説上まったく支持されておらず、また実際のポルノと性犯罪との統計にも反する説である。現実にはポルノグラフィをはじめとする性欲の発散方法が自由であるほど、性犯罪は少ない傾向にある。ラブドールであれば違うというならその根拠を持って来るべきだが、そのようなものは存在しない。
 また、児童に実際の危険をもたらすのではなく単に児童を題材にした人形や、漫画やイラストなどの【非実在児童ポルノ】を犯罪化するのは、当然ながら本来、児童を現実の犯罪から守るべき捜査機関の予算や人員がそちらに割かれることを意味し、児童保護を手薄にすることにしかならない。

 次に彼らは「小児性愛の存在を知ることが親や子供にとって恐怖」と批判する。
 小児性愛の欲望が隠れていたところで、全く安全にはならない。むしろ本当に親が子供の心配をしているというなら、そのような情報を積極的に取り入れて判断をしていくべきところ「知ったら怖い」などというのは親の責任を放棄しているばかりか、子供の安全を真剣に保つ気がないとしか考えられない。
 事実、2019年にツイッター上で「6歳の女児が公衆トイレで乱暴され血まみれになり、子宮全摘出となった」という【トイレ暴行都市伝説】が流れたことである。このときデマ流しに加担し、なおかつ「デマであっても注意喚起だから構わない」と暴論で擁護し、さらには「デマだと批判する奴らは犯罪者予備軍!」とまでレッテルを貼ったのが、ツイッター上で活動するフェミニスト達であった。同じ人々が後に「小児性愛者の存在を知る事自体が恐怖で封印すべき」と叫んでいるのである。
 このように「小児性愛者の存在を知る事」が「加害」になるか「注意喚起」として尊重されるかは、子を心配する真の愛情から出たものではなく、自身の嫌悪感を正当化する方向次第でクルクルと掌返しをしているに過ぎない。

 さらに「児童をレイプする人形を売るのは、児童への『ヘイトスピーチ』である」というアクロバティックな(2番めも相当アクロバティックであるが)言明がある。
 一見意味不明だが、「もしも日本人をボコボコに【殴るための人形】が平然と売られていたら恐怖だろう!どうだ!女児を犯せる人形を売るのもそれと同じだ!」というものである。
 しかしながら現在の日本で党派的に彼らと重なる左翼・リベラル系のデモや、彼らがシンパシーを持つ中国や韓国といった国の反日デモなどでは、政治家(特に安倍晋三首相やトランプ米大統領)の人形を殴るどころか首を斬り落としたり焼き捨てるなどのパフォーマンスが平然と行われている。

 そんなものを支持しておきながら、一般に見せるのは売っているところだけで、犯して見せるわけでも何でもないラブドールを糾弾するなど、偏向が過ぎると言えるだろう。
 そもそも軍隊やヒーロー物のアニメなど、戦いごっこ遊び用の人形も明らかな「疑似的に危害を加えてみせる」ために売られている人形である。
 これら全てをスルーしてラブドールのみを槍玉に挙げる必要性は全く感じられない。

 以上のごとく、ラブドール全般も、また児童型のラブドールも、自由な表現として問題なく流通すべきものなのである。

参考リンク・資料:

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