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【高校生AV出演解禁デマ】

 2018年6月に成立した民法改正案による、契約などで成人とみなされる年齢を20歳から18歳に引き下げる変更についてのデマ。改正は2022年4月1日から施行される。国際的にも成年年齢を18歳とする外国が多いことに加え、2016年から選挙権の付与も18歳からとなったことなどに合わせた改正である。
 いわゆるAV新法の引き金となったデマである。

 ただし法律上のすべての「年齢制限」が20歳に一本化されるわけではなく、飲酒・喫煙、公営ギャンブルでの投購入、大型・中型自動車免許の取得、家庭裁判所の許可なく自身の意志のみで養子となることなどに関する年齢制限は20歳以上のままとなる。
 ちなみに公営ギャンブルについては賭けることに年齢制限があるだけで、競馬などのレースを観戦すること自体は現在でも未成年も自由であり、【ぐんまちゃん(アニメ)】でも、主人公のぐんまちゃんがおじさんと一緒にボートレースを観戦する場面があるが、法律上全く問題の無い行為の描写である。

改正の概要

 今回の民法改正で影響を受ける主な点は婚姻と契約である。
 婚姻ができる年齢が、従来は男子18歳、女子16歳であったのを一律18歳に(731条)。これによって婚姻可能年齢と成年年齢が一致することとなったため、未成年者の婚姻に伴う父母の同意(737条)、婚姻した未成年者の成年擬制(753条)などの規定が削除された。

 また、未成年者は制限行為能力者とされ、法定代理人(通常は親)の同意なくなされた契約は、一部を除いて5年以内なら未成年者本人・法定代理人のどちらもが後から取り消すことができる。
 取り消された契約は最初から無効であったことになり、お互いに原状回復の義務を負う。つまり売買契約なら、お金を返してもらえる代わりに商品も返さなければならない。しかし未成年の場合は、現存利益(例えば使ってなくなってしまうものであれば、残っている分だけ)の返還のみでよいとされる(121条但書)
 この「特典」が今回の改正にともない、18歳・19歳にはなくなることになるため、悪徳商法などに関する注意喚起が各省庁や自治体により進められている。

宮城県消費生活センターのポスター

デマの発生

 ……のだが、4年前に成立していたものの施行直前の2022年3月になって、立憲民主党の参議院議員・塩村あやかや、【伊藤和子・AV制作会社社長名誉棄損事件】の加害者である伊藤和子、ポルノグラフィーを敵視する性表現規制団体の「ぱっぷす」「ヒューマンライツ・ナウ」などが唐突に騒ぎ出した。
 いわく「高校生のAV出演が解禁されてしまう!」というのである。
 塩村氏らは、18歳の高校3年生女子がAVに出演する契約を結んだ場合、その契約には未成年者取消権が使えなくなる。そのため「高校生AVがポピュラーになってしまう。日本は『アダルト大国』と言われていてる。こんな恥ずかしいことを許していいわけがない」と主張する。

弁護士ドットコムニュースより

 ……酒やタバコが20歳からであることと整合していないなどと言い出すなら、AV出演契約にだけ未成年者取消権を要求する方がよほど「整合性していない」のだが。

 結論からいうと、この塩村らの主張はデマである

真相

 実態としては、AV人権倫理機構が高校在学中の18歳少女の出演を禁じており、また高校在学中かどうかにかかわらず、ここ数年の実年齢18・19歳のAV出演数はゼロとなっている(同機構の業界アンケートによる)。もちろん、AVのストーリー上でセーラー服などを着用しているものも実際は成人が出演している。
 また年齢確認は口頭確認ではなく書類提出が求められ、どれほど明らかに成人している人(男優も含む)も本人確認がなされるのが実際の状況である。「強要」だの「未成年出演」だのというのは大昔の話なのだ(そもそも今回のデマの主犯の1人である伊藤和子弁護士も、無実のAV会社社長を「出演強要した鬼畜」呼ばわりした【伊藤和子・AV制作会社社長名誉棄損事件】を起こし敗訴した人物である)。

 さらにその契約内容も、女優側は契約後も女優側から解除できる仕組みになっており、また円満に契約がなされ販売開始された後であっても、AV人権倫理機構が販売停止等を求める申請を受け付けている(申請無料)。

AV人権倫理機構の作品販売等停止申請書フォーマットより

 この点が法改正に伴って変更されるわけではもちろんない。AV人権倫理機構自体も改めて出演者を20歳以上とすることを強く推奨し、高校等の在学者の出演を厳に戒める通達を発出している。

 それでも「AV人権倫理機構は法律じゃないし、モグリの事業者がやるかもしれない!」と言い出すなら、そもそも最初から禁止されていないことになる(民法上の取消権があるだけ)ので、結局「解禁」はデマとなる。

 ちなみに、AV人権倫理機構の成立以前の時代でさえ、高校在学中の者の撮影は禁じる慣例があった。たとえばバクシーシ山下【ひとはみな、ハダカになる。】(2007)は次のように述べている。

 たとえば、十八歳になっていない人間のことは撮影できないんですが、じゃあ、十八歳になっていれば誰でも撮っていいかというと、そうではない。十八歳のフリーターはいいが、十八歳の高校生はだめ。高校の卒業式がすんでも、三月三十一日まではだめ。

ひとはみな、ハダカになる。

 過去に実際に高校生がAV出演がした例外的な事例も、出演女性が年齢を偽っており、本人確認も家族の保険証を冒用したというものであって、制作事業者側が騙された事案である。
 こうした場合ではそもそも未成年者取消が使えないことが別途民法で定められているので、今回の改正は全く関係ないケースである。

(制限行為能力者の詐術)
第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

民法


 そして、この成年年齢引き下げをプッシュしていたのは他ならぬ、塩村あやか自身が所属する立憲民主党の前身である民主党である。
 同党は「18歳は経済的自立が可能な年齢であり、現に結婚や深夜労働・危険有害業務への従事、普通免許の取得、働いている場合は納税者であること等、社会生活の重要な部面で成人としての扱いを受け」ているとして、成年年齢の引き下げを主張していた。

民主党ウェブサイトより(アーカイブ

 なお塩村氏は自身が若い頃にグラビアアイドル等に出演して人気を得、のちに規制派に転じたタイプの、いわゆる【まんこ二毛作】型の運動家である。

参考リンク・資料:

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