見出し画像

雨の森に

今日は雨が降っています。

風が強い日の雨は心をざわつかせるけれど

今日の雨はなんとも穏やかで

雨垂れの音が微睡みを誘います。

こんなお天気の日でも

もの憂げに感じないのは

気持ちが落ち着いているからでしょうか。

そういえばもう何日も

羊を数える間も無く深い眠りに落ちています。

いろんなことに区切りをつけて

多少無理矢理にでも行動し

最後は導かれるようにして

ここに来れてよかったとそう思っています。


あの頃のぼくは

若い頃憧れた街に暮らし

魅力的な仲間たちに恵まれて

みんなの、そして自分自身の期待に応え

「魅力を伝える」という仕事に没頭して

それでもどこか根無草のような

急流に流されていく浮き草みたいな

そんな寂しさや虚しさを拭えずに

なんとかその空白を埋めようと

背伸びと挑戦と夜ふかしを積み重ね

だんだん上手く息継ぎができなくなって

いたのかもしれません。


こうして深い緑に抱かれて風を感じ

土にまみれていのちと向き合い

日々の小さな発見を粒立てて

自分の身体を通った生の言葉で

とつとつと綴って暮らしていると

ゆっくりと、でも着実に

新しい根っこが、広く、深く、

張り巡らされていくのを感じます。


おや、雨が上がりそうですね。

遠くにほととぎすの声がします。

窓を開けるとひんやり潤った森の匂い。

背伸びをして大きくひとつ深呼吸。

ああ、気持ちがいい。

吸い込んだ空気が

血液に乗って身体の隅々にまで

巡っていくのが見えるみたいです。


今日は聞いてくれてありがとう。

もっと話したいことはあるけれど

また今度、穏やかな雨の日にでも。



この記事が参加している募集

雨の日をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?