ヒトリトウキョウ#0「トウキョウについて」
プロローグの締めくくりとして、「トウキョウ」について。
「トウキョウ」
東京という都市を本格的に意識し始めたのは社会人になってからだった。新卒で入社すると「出身はどこ?」という質問を必ずと言ってよいほどされたから。「東京です。」と答えると、なんとなくその場がシラけるあの感覚も何度も味わった。それだけ「東京」は誰でも出てくることができる都市。誰ともかぶらないような小さな村や島出身だったら、きっと映画のような人生だったのに。
それでもやっぱり自分は生まれも育ちも東京。素敵な田舎で映画のような人生を送れない代わりに、自分が好きだと思う「トウキョウ」をコレクションして表現したいと思うようになった。
大学時代に芸術分野を専攻し、若さも邪魔してか、20代はとにかく東京が醜い都市にしか思えなかった。とても無機質でとても人工的。ただ、こんなコンクリートジャングルの中でも、ところどころにオアシスのような空間は存在していて、東京出身の人々はそういうオアシスを渡り歩きながらなんとか人間的な生活を送っている、そんな感情を抱いていた。美しい生まれ故郷を去り、東京に移り住む人の気持ちがわからなかった。
30代になってからは、自然と東京という都市を受け入れられるようになった。正直に言ってしまえば、諦めに近い感情も手伝ったのかもしれない。けれども、誰に教わることもなく東京の魅力に気づけたのは、自分なりの「トウキョウ」のカケラをかき集めることが出来たからだと思う。
次回から「ヒトリトウキョウ」コレクションを少しずつ記録していきたい。
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