見出し画像

ヴァイオリンはじめました

今年11月14日から、ヴァイオリンを練習し始めました。

「フルートやってたんじゃないの?」と言われますが、フルートも引き続き毎日練習しています。追加でヴァイオリンです。
ということで、毎日練習するものが多くて、忙しいです。

ヴァイオリン購入を検討し始めたのは、8月ぐらい。
普段共演しているヴァイオリニストmaikoさんと牧山純子さんに、ヴァイオリンを始めるにあたって、エレクトリック・ヴァイオリン 、サイレント・ヴァイオリンってどうなのかと聞いていたんですよ。
ヴァイオリンといえば、ドラえもんのしずかちゃんの練習の印象が強く、きっと家族や近隣の皆さんは辛いことになるのではないかと、心配にもなる。自宅で練習するには、小さな音で練習できた方が、長続きするのではないかと思いました。

牧山さんが、YAMAHAのエレクトリックヴァイオリンの宣伝も関わっておられて、写真も見ていましたが、YAMAHAのこの楽器、物として格好が良いんですよね。琵琶みたいな形で、美しい。


牧山さんのモデルは、指板が赤です。かっこいい。



フルートをこの一年継続して練習して、知識としてでなく〈身体感覚として〉その楽器にフィジカルに接続すること、理解することは、音楽家として大きな財産になると実感しました。
それぞれの楽器に育てられる思考もあります。
ピアノは6歳からやっており、管楽器は中学から大学までサックスを、その後クラリネット とフルートをやってきたのですが、弦楽器は体験がなく、普段共演の多いヴァイオリンも身体感覚として理解したいと思うようになりました。今やっているピアノトリオ+プロジェクトに、ヴァイオリンも入れたいし。

ということで、〈身体感覚として知りたい〉という目的ならば、サイレント楽器より本物を触る一択かなと考え直しました。
幸い、私は楽器が弾けるマンションに住んでいる。そんな初心者、なかなかいないだろとも思いまして、いろいろ調べて、まあ良さそうな初心者セットを購入しました。

そこから、初めて手に取って弾いてみて思ったことを、つらつら書いてみます。これから始めたい人には、面白いかも。

・思ったより、手軽な価格で始めることができる

調べてみると、初心者向きのセットは1万円台からありました。
さすがに1万円台は、楽器の形はしていますが、材質や組み立てなどは絶対違いますし、楽器として美味しいところがどれぐらい残っているかは疑問。買った時は良い状態かもしれないけれど、良い状態の期間はおそらくかなり短いはず。(どの楽器も、極端に安いものは同じです)
ということで、私はこちらを購入しました。

ちなみに、メルカリでも見ていたのですが、さすがに中古で買う気はなかったのですけども、リサーチとして見ていたら、「一度弾いただけです」「弦が一本切れたままです」みたいな出品が多く、世の中にはヴァイオリンに憧れて購入したものの諦めた大人がいっぱいいるのだなと思いました。



・思ったより、楽器が軽い

これは、持ってみて驚きました。
まあ、空洞なので当然ですが、それにしても軽い。
私は中学から大学の副科楽器までサックスをやっておりましたので、ヴァイオリンは容積のわりにはものすごく軽い。嬉しい。


・(普段よく見ているのに)楽器本体以外のことを何も知らない

弓をどのぐらい張ったらいいのかわからない
松脂をどのぐらい塗ったらいいのかわからない
塗ったときの適切な色もわからない
肩当てって何よ
という感じで、お手上げでした。
ということは、楽器が届いても、最初に弾いてみることができない。

弓の張り加減や松脂の塗り加減など、〈加減〉というものは、You Tubeや教則本ではわからないところですね。

ということで、楽器をどうやっておろしたらいいのかわからず、一人ではどうにもならないので、maikoさんに連絡。
時間をとってもらい、楽器をおろす作業とレッスンをお願いしました。
音を出してみると、また色々ありました。


・思っていたより音が大きく、左耳に直撃する

左耳が非常にうるさい。
以前、maikoさんと牧山さんと3人でご飯食べた時に、「左耳があまり聞こえない」という話をしていたのですが、こんな爆音+骨伝導で幼少時から毎日ヴァイオリンを弾いていたら、そりゃ耳が潰れるわと思いました。
〈えっ、素人が出しただけで、こんなに音大きいの!〉と思いましたよ。しかも左ばかり直撃で、バランス悪いですしね。
これでコンサートホールで生音で弾くとか、そんな音量を毎日浴びてたら、まあ耳はダメージを受けますよね。


・弓を持つこと自体が難しい

ヴァイオリニストの皆さんの、優雅で美しい右手をいつも見ていましたが、これはすごい。すごいバランスで持っている。
あの、何も力が入っていなさそうな、ノーストレスの右手。
同じくヴァイオリニストの入山ひとみさんと共演の際に、「弓がうまく持てなくて…」と話していたら、子供に教えるやり方や、なぜそうするかを教えて頂いて、全くピアノと同じじゃないかと思いました。その後、maikoさんに一度チェックしてもらって、指の位置を修正したら、なんとか普通に持てるようになっていました。
ピアノもそうなのですが、腕全体を使って弾く楽器なので、他にピアノと考え方が共通するところも結構ありそうです。


・弦にピントが合わない、6本に見える

老眼なのか乱視なのか、最初の3日間ぐらい、弦が6本に見えました。
ぐわあ


・プロのヴァイオリニストのピッチ感は、やばい

楽器を演奏するのには、それぞれ〈運動範囲〉がありますが、ピアノは鍵盤の操作する部分は広く、運動範囲も広いですね。
管楽器はキーに指を置いているので、運動範囲は狭いですね。体内の筋肉の運動量は大きいですが。
ヴァイオリン は、操作する面積は狭い(指板)のですが、腕全体を使うので、運動範囲はかなり広いです。かつ、キーや鍵盤などピッチを当てる目安が全くない楽器なので、大きい運動のわりに何の手がかりもなく、狭いところを操作してビシッとピッチを当てないといけない。指の向きだけでピッチが変わってしまう。
やってみて思いましたが、よくこんなプリミティブでアバウトな楽器で演奏しているなと、どんな耳と体の感覚をしているのだと驚嘆しました。

そして、最初の日に、maikoさんが「調弦しとくわ」と、私の楽器を調弦してくれたのですが、ピアノもチューナーも使わずにぱぱっとその場でやってくれて、帰宅してチューナーで見たらビシッと440hz
うへえ、これはすごい。

そういえばフルートのレッスンでも、ある時、先生の坂上領さんが、チューナーの画面を私にだけ見えるように出して、「見といてね」と自分はチューナーを見ずにスケールを吹いた時、全部メーターの針がビシーッと真ん中に当たっていて、プロのピッチ感は恐ろしいなと驚きました。
このレベルじゃないと仕事できないんだなーと。
私、このレベルの何かを持って、ピアノを弾けてるんだろうかなどと、反省もしました。

ということで、ヴァイオリニストは特に、何の道具も持たずに山登りしているようなものだなと思いました。プロは、何の道具もなしに高い山に登れる人なんですよ。


・変な音が出ているのが楽しい

普段、なかなか変な音の出ない楽器を弾いているもので、ミなんだかファなんだかわからない音が出るだけで、楽しい。
いやあ、楽しい。適当な音が出ているのが楽しいんですよ。
めっちゃ、ゼロから音楽を作っていく感じがする。


・自分の持っている音程感に気付く

ヴァイオリンをやってみてわかったのですが、フルートは例えばAの音を吹いた時に正しい音高かどうかを判断していたのは、記憶=絶対音としてのAの音と比較して高いか低いかで判断していただけで、Gの後でAを吹いた、その手前のGとの距離=音程で、音をとっていなかったのです。
スケールを吹いていても、音程ではなく、音高で正しい音を吹こうとしていたみたい。
ヴァイオリンは、それが通用しないんですよ。
開放弦のAの音からBをとる時に、Bそのものの音高だけじゃなくAとBとの音程でとらないといけません。
やってみると、自分の音程感覚は、思っていたより狭く低かったんですね。
自分の感覚で弾いていたら、チューナーを見たら、絶対低くなってる。これは初めて気付きました。

ピアノだと鍵盤を押せば正しい音が鳴ってくれるし、管楽器だとキーを押せば一応それに近い音高は出してくれる。それが、ヴァイオリンは全く手がかりなし、距離で音をとっていくので、正しい音程感の訓練になりそうです。

注)音高(pitch)は一音の絶対的な高さ、音程(interval)は二音間の距離の話です。

と自分で実感すると、プロのヴァイオリニストは初見で正しい音を弾けるし、即興演奏までしているので、どれだけ長い時間かけて訓練してきた賜物なのかと、ものすごい技術の蓄積だなと思いました。

長くなってきたので、ここで一曲。



・私の大きなアドバンテージ二点


まず一つ、練習には向いてるんですよ。

基礎練習を積み上げてこの仕事をしているので、最初に良い指導者について正しいフォームで毎日していればそれなりに上達するという出口があることは知っています。
これが想像できるし、経験として知っているのは、とても大きい。
想像できなかったら、「自分には無理だったかも」とやめてしまう人も多いでしょう。大人から楽器を始めることの、大きなハードルだと思います。

もう一度書きますが、〈良い指導者について、正しいフォームで、毎日少しでも練習する〉は、楽器上達の必須項目です。逆に言えば、これだけクリアしたら、継続すればある程度は弾けるようになります。

そんなわけで、開放Aの音で上げ弓、下げ弓の練習だけをするのも、全く苦になりません。絶対これで上手になれるし。
フルートもロングトーンも苦にならないし、まあピアノも毎日やる基礎練メニューは毎日毎日変化をつけながらやっているし、地味な練習に飽きない人間にすでになってしまっているのが、私のアドバンテージ1つ目。


二つ目、ものすごく近い距離で、頻繁に素晴らしいヴァイオリニストの演奏を見ていること。

普通に暮らしていたら、ヴァイオリンの演奏を生で聴く機会はあまりないですが、私は頻繁にあります。
ジャズにおいて、ヴァイオリンはジャンル内でメインの楽器ではないので、ヴァイオリンと共演機会は普通は少ないですが、私は頻繁にあります。
ライブでは、お客さんは離れた距離からヴァイオリニストを見るばかりですが、裏面からも正面からも、ものすごく近くで見ています。手を伸ばせば届く距離の時もあります。楽器準備からリハから全部見ています。
ライブでは尊敬するプレイヤーとしかやっていませんので、常に良い姿勢、良い音だけを体感している。

イコール、私はすでに良い音を浴びまくって、イメージができている!

ということで、調子に乗らずに、しばらく練習してみます。
一年後どれぐらいできるようになっているだろうか…



早速12/20の配信で弾きました


関連過去記事


記事や音楽を気に入って下さったら、サポート頂ければ嬉しいです。今後の活動に使わせて頂きます。