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#006_【組織的公正】A Taxonomy of Organizational Justice Theories(#4-1)

Greenberg, J. (1987). A taxonomy of organizational justice theories. Academy of Management review, 12(1), 9-22.


本日の論文への惹かれポイント

「Justice」攻めをしてみよう、と決めてから、あさり始めて真っ先にあたった論文。大体レビュー論文とかTheoryとかついている論文は参考になることが多いよね・・・という軽い気持ち。
やや古い論文ですが、読んでいってみましょう!

この論文の目的は?

組織正義の理論を、反応的・積極的次元とプロセス・内容的次元という2つの独立した次元に関して分類する分類法が提示されており、更に、そこから4つのカテゴリーに分類することで、それぞれに含まれる様々な理論を概観していきます。
その上で、理論的相互関係の明確化、研究動向の追跡、必要な研究領域の特定に関して、分類法の意義が論じられています。

POINT1. 二つの次元

全く違う分類方法もあるかもしれないが、以下の2つに分けるのが非常にわかりやすい。

<a reactive-proactive dimension(反応的・積極的次元)>
反応理論とは、
人々が不公正な状態から逃れようとするか、あるいは不公正な状態を避けようとする反応に焦点を当てる。
どちらかというと「避ける」「逃げる」などNegative方面。

積極的な理論は、公正な状態を作り出そうとする行動、正義を促進するための行動に焦点を当てる。
よりよい状態にしていく、というPositive方面。

<a process-content dimension(プロセス・内容的次元)>
プロセスアプローチとは、
結果に対してどのように決定されるか、どのような手段を用いたかに焦点を当てており、組織の意思決定とその実行に使用される手続の公正さが注目される。

内容的アプローチとは、結果として生じる成果の分配の公正さに焦点を当てており、受け取る結果の相対的な公正さが注目される。

一番一般的でわかりやすい事例としては、本論文でも例に挙げられていましたが、報酬決定ではないでしょうか。
ベアアップで全員一律給与が上がるのは内容的アプローチ。昇給額はバラバラだけど評価昇給・降給基準が明確であることはプロセスアプローチにあたりますよね。

POINT2. 四つの分類

反応的・積極的次元とプロセス・内容的次元は互いに独立しており、それによって2つの次元が組み合わせると、正義の概念化には4つの異なる分類が生じるとしました。それが以下の図です。

P.10

① Reactive content theories(反応×内容)
個人が不当な扱いにどのように反応するかに焦点を当てた、正義に対する概念的アプローチ
組織における正義に関する一番メジャーな概念
詳細は別の機会にして、メジャーな理論はこんなところです。
・分配的正義理論(Homans, 1961)
・衡平性理論(Adams,1965、Walsterら,1973)
・地位価値版の平等理論(Anderson, Berger, Zelditch, & Cohen, 1969; Berger, Zelditch, Anderson, & Cohen, 1972)
・相対的剥奪理論(Crosby, 1976)

② Proactive Content Theories(積極的×内容)
①とは逆に、労働者が公正な結果配分をどのように作り出そうとするかに焦点を当てたアプローチ
正義判断モデル(Leventhal,1976)
正義動機理論(Lerner,1977;Lerner&Whitehead,1980)

③ Reactive Process Theories(反応×プロセス)
手続き的公正の理論
登場人物やプロセスを区分し、定義しています。
登場人物:紛争当事者双方(2人)+介在する第三者(1人)
紛争解決プロセスの2つの段階:証拠が提示されるプロセス段階+その証拠を用いて紛争が解決される決定段階
プロセス・コントロール:紛争解決に使用される証拠の選択と展開をコントロールする能力
決定コントロール:紛争の結果そのものを決定する能力(Thibaut & Walker, 1978)

また、登場人物が各段階をコントロールする度合いに関して手続きを分類しています。
独裁的手続き:結果も手続きも第三者がコントロールできる手続き
仲裁手続き:決定はするがプロセスにはかかわらない手続き
調停手続き:プロセスにはかかわるが決定はしない手続き
交渉手続き:プロセスも手続きもしない手続き
ムート手続き:紛争当事者と第三者が、結果とプロセスに関する支配権を共有する手続き

興味深いのは、意思決定プロセスにおいて被委託者に発言権を与える手続きは、好ましくない決定であってもその受け入れを高める傾向がある(LaTour, 1978; Lind et al., 1980.)、とのことです。
(確かに・・・)

本理論は様々な研究領域に展開されているようです。

④ Proactive Process Theories(積極的×プロセス)
著者は、この分類法で特定された理論の中で、おそらく最もよく知られていない分類であるとしています。
・配分選好理論ーAllocation preference theory(Leventhal、Karuza、Fry)
反応的プロセス理論に典型的な紛争解決手続きに重点を置くのとは対照的に、積極的プロセス志向は配分手続きに重点を置く傾向があり、この志向性を用いることで、人は正義を達成するためにどのような手続きを用いるかを見極めようとする、理論です。

この理論においては、正義の達成を促進するための手続きが8つ特定されています。
① 意思決定者を選択する機会を与える
② 一貫したルールに従う
③ 正確な情報に基づいている
④ 意思決定権の構造を明らかにする
⑤ 偏見に対するセーフガードを採用する
⑥ 不服を申し立てることができる
⑦ 手続きに変更を加える機会を提供する
⑧ 一般的な道徳的・倫理的基準に基づいている

一貫性最も重要な手続き的決定要因であると考えられていることを発見した。(Fry & Cheney, 1981; Fry & Leventhal, 1979)
また、一貫性が、様々な状況や社会的関係において、公正さの知覚の強力な決定要因であるとも言われています。

POINT3. 正義研究の方向性と期待

近年では、より積極的でプロセス指向の概念化が重視されるようになっているようです。つまり、リアクティブな理論からプロアクティブな理論へのシフトと、コンテンツ理論からプロセス理論へのシフトです。

特に、プロセスの分野で期待される研究は給与満足度であると言われています。
Heneman (1985)は「給与がどのように管理されるかについての認識は、人々の給与満足度に関係しているようである」(p. 132)と結論づけ、Henemanは、衡平性理論を超えて給与満足の理論を拡張する方向性をこのように主張する中で、ここで明確にした組織的公正の内容理論とプロセス理論の区別を認識した。

本稿で紹介した分類法が組織研究者の注意を喚起した程度には、様々な組織現象、そして正義そのものに対する理解を深める道が開かれたことになる。と締めくくられています。

感想

軽い気持ちで読み始めたけど、正義の歴史をおさらいして分類までしてくれて、組織論の中で、なぜ今「手続き的正義」が注目されているのかまでなぞれて思いのほかラッキーでした。

自分の備忘録的な意味合いもあり、長くなりましたが・・・
歴史や背景ってとても大事ですよね。


サポートしていただけると嬉しいです! ぴよぴよ社会人博士課程の学生ですが、Organization Justiceについて研究を進めています。また、理想だけでなく実務で壁となるGoing Concern(売上、利益)といった面も考えつつ・・・模索しています。