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映画『白い酋長』(フェデリコ・フェリーニ)

 ちょっとマニアックな映画を見たので。『白い酋長』は1952年公開、フェデリコ・フェリーニ初の単独監督作品。
 フェデリコ・フェリーニとはイタリアの映画監督で、『甘い生活』や『8 1/2』などの映画で有名。フェリーニの名前を聞いたことがない人の興味を誘う豆知識を書いておくとすれば、パパラッチ(セレブを付け回しプライベートの写真を撮る人)は『甘い生活』の登場人物パパラッツォから来ているし、『8 1/2』は『新世紀エヴァンゲリオン』や『君たちはどう生きるか』に影響を与えていると主張する人が多くいる。

あらすじ

 ある新婚夫婦がローマにやってくる。夫の親戚が上流階級のため、ローマで教皇に謁見することになっているのだが、妻(ブルネラ・ボーヴォ)が大ファンの"白い酋長"という俳優に内緒で会いに行き、そのまま帰ってこない。

 この白い酋長や他の俳優たちは海辺のロケ地で撮影を行うのだが、どうやらこの人たちが撮っているのは映画ではなく写真らしい。写真を挿絵みたいにした小説としか推測できず、いまいち妻が何のファンなのかわからなかった。これが時代の違いってやつか。なにせ70年以上前なのだし。

 初単独監督作品とはいえ、フェリーニらしさがふんだんに詰め込まれている。僕がフェリーニの映画で好きなところはあの「わちゃわちゃした」感じで、脇役がべらぼうにしゃべりまくり、怒ったり笑ったり冷やかしたりして、まるで何も考えてないようにドタバタ劇を展開するのだが、実際のところすべて計算されていて、ひとつひとつの身振りがとても洗練されているのだ。
 この「わちゃわちゃした」感じで絶えず観客を飽きさせないようにしながら、ふとヒロイン(ブルネラ・ボーヴォやジュリエッタ・マシーナ)が流す涙に突然我に返ったり、もしくはローマの虚無的な雰囲気を作り出し、観客を圧倒させるのである。

 ちなみに途中、少しだけジュリエッタ・マシーナが登場している。しかも連れの女性に「カビリア!」と呼ばれているのだ。カビリアと言えば後年の『カビリアの夜』があり、ジュリエッタ・マシーナが主人公になる。
 『カビリアの夜』は『白い酋長』と女性の境遇が似ていて、しかも『カビリアの夜』の方が悲しくて暗い。しかしカビリアはいつでも元気で明るい女性で、見る者に元気を与えてくれるキャラクターである。
 この明るくていつも元気なカビリアは『白い酋長』でも健在で、だからこそ4、5分程度の出演時間にもかかわらず、強烈な存在感を放っていた。

カビリアの夜

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