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現代応用心理学で『NARUTO』を読み解く【Ep43】

長編漫画『NARUTO』。
この漫画が貫く深いテーマ「争いの絶えない世界にはびこる憎しみとどう向き合い、どのように平和を作るか」であると考えています。
今回は、そんな『NARUTO』のテーマについて、これまでのMAP(現代応用心理学)の学び直しの配信内容を思い出しながら、改めて読み解いてみたいと思います。

漫画『NARUTO』では、その長編さゆえ、敵も味方も含め多くの魅力的なキャラクターが登場します。そこで、上記テーマに対する、主要なキャラクターの考え方を、陰と陽の性質に分けて、漫画を貫くテーマを俯瞰してみましょう。

長門(陰キャその1):「痛み」による恐怖で世界を支配する

「争いの絶えない世界に蔓延る憎しみとどう向き合い、どのように平和を作るか」について、真っ向から向き合ったストーリーは、「ペイン編」でしょう。「ペイン編」とは、主人公ナルトが長門(ながと)という敵キャラと対決したシリーズです。

長門は、木の葉隠れの里・砂隠れの里・岩隠れの里という3つの大国に囲まれた、雨隠れの里という「争いの絶えない小国」に生まれました。幼い頃、大国同士が争う戦争中両親が殺され、その後も、戦争に伴う権力争いの代償の結果親友を亡くしました

そんな長門が、争いに満ちた世界を平和にするために辿り着いた答えが、「本当の痛みを世界で共有する。世界が痛みを知れば、その痛みの恐怖が戦いの抑止力となり、世界に一時の平和が訪れる。そしてまた痛みを忘れた時には、また痛みを分かち合う。そうやって、終わりなき憎しみの連鎖に縛られた世界を、痛みによって成長させる」というものでした。

(詳しくは、こちらの過去の記事(Ep18)でも考察しています)

うちはマダラ(陰キャその2):幻術による「永遠の夢の世界」で平和を成す

続いては、「忍界大戦編」より「うちはマダラ」の思想を紹介します。マダラは『NARUTO』における終盤のボスキャラです。

マダラは、うちは一族だけに伝わる「うちはの石碑」を読み、忍世界の伝承を踏まえて、無限月読という大幻術によって、争いのない永遠の平和が続く夢の世界を造ることで、平和な世界を実現しようとしました。

現実世界で「争いをなくし平和をつくること」は無理だから、永遠の夢の世界でそれを叶えればいい、というわけですね。

(こちらも、過去記事(Ep39)で詳しく考察しています)

うちはサスケ(陰キャその3):自分が皆の憎しみを引き受け続ける

主人公ナルトが最後まで向き合い続けたサスケは、最愛の兄イタチの生き様から、憎しみと向き合い平和をつくる方法を考え、次のような思想に辿り着きました。

それは、この世界の憎しみはなくならない
だから、自分が、自分だけが、すべての憎しみを引き受ける存在になること。
そうやって、世界で成すべき「負」の部分は、全て自分が請け負い、
世界の「影」として一人孤独に生きる、というものです。

闇の中の憎しみはなくならん
それならいっそ⋯⋯。
そう⋯⋯、オレの言う火影とは、
五里全ての闇を己の炎一つで焼き尽くし、
その灰を喰らって生き続ける者だ。
(うちはサスケ)

巻ノ七十二

自来也(陽キャその1):信じて諦めず、意志を繋ぐ

陰キャの3名は、三者三様、(方法の是非はあれど)様々な方法で、平和をつくろうと必死に考えました。だから、敵キャラであっても魅力的なのだと思います。

一方で、『NARUTO』界の陽キャの思想についても紹介します。
一人目は、主人公ナルトの師匠、「自来也」です。
彼は、第三次忍界大戦を経験し、闇の世界に染まっていく友(大蛇丸)を引き留められず、陽キャなりにも苦悩に満ちた人生を送っていました。

争いによる憎しみと向き合い平和をつくるために自来也が考える思想は、
「いつか、人が本当の意味で理解し合える時代が来ること」を信じ、
最後の最後までそれを諦めない
そして、その思想を、弟子のナルトに託し意志を繋いでいく、というものです。

過去記事(Ep9)でも考察しています)

千住柱間(陽キャその2):コミュニティを作り、意志を託せる者を育てる

二人目は、木の葉の里を組織し、初代火影(木の葉の里の長)となった「千住柱間」は、手段としては「コミュニティ」を作ることだと考えているようですが、その究極目的は、「後ろをついて来て託せる者を育てておく」ことだと考えられます。

この思想は、三代目火影(猿飛ヒルゼン)にしっかりと引き継がれてゆくのです。

うずまきナルト(陽キャその3):先代が意志を繋ぎ、託された大成者!

最後の三人目は、もちろん、この漫画の主人公うずまきナルト」です。

始めは「落ちこぼれ」と言われ、皆から疎まれていたけれど、
まっすぐ自分の言葉は曲げない」ことを忍道とし、
その一生懸命に頑張る姿が、自然と人を惹きつけ
いつも仲間を信じて戦い抜き、
最後の最後まで友・サスケとの「繋がり」を切らず
憎しみに満ちた忍の世界を繋ぎ、変えた忍者

それが「うずまきナルト」です。
柱間や自来也が信じて託した集大成とも言えるでしょう。

そして、何よりナルトが他の陽キャと決定的に違ったのは
「他者を理解し受け入れていたこと」
だと考えられます。

自分と違う思想を持っている者に対しても、
その考えを聴き、理解しようとするその姿勢があるからこそ、
ナルトは、「人を繋ぐ」存在になれたのではないかと考えます。

(この内容も、ナルトとサスケの関わり合いに焦点を当てた過去記事があります)

MAPの目指す、
【①自分に気づき】
【②自分を管理し】
【③他人に気づき】
【④社会に良い影響を与える自分になる】

というステップを意識した時、
漫画『NARUTO』とその主人公ナルトの生き様は、
より一層深みが増すように感じました。

終わりに

「争いと平和」という答えのないテーマを扱っているわけではありますが、
主人公や、その他の登場人物言動気持ちの変化から、
読み手はその心に何かを感じずにはいられません

『NARUTO』という長編漫画は実に奥深く
漫画を読むたび、登場キャラの魅力を、作者・岸本斉史先生の偉大さを、
いつも感じているわたしですが、
今回、現代応用心理学を勉強したことで、
また別の角度から作品を味わうことができました。

最後にこれまでの配信記事で紹介したリンクを貼っておきますので、
興味のある人物や、心理学のテーマがあれば読んでみてください!
(『NARUTO』の登場人物の中でも屈指の人気を誇る「あのキャラ」は未登場ですが、8/6配信予定の記事(Ep47)で満を持して登場予定ですのでお楽しみに!)

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#心理学

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