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ナルト×考察:「うちはマダラ」を社会心理学的に分析してみる【Ep39】

こんにちは、ひとかどさんです。
前回紹介した”社会心理学のキーワード”はいかがでしたか?
今回は、漫画『NARUTO』の中で「ある人物」を紹介することで、社会心理学に対する理解を深めたいと思います。

前回のおさらい

社会心理学のキーワード固定概念、先入観、差別です。
特に、社会は「差別」を問題視するわけですが、これに発展する前に、そもそも人は固定概念誇張された信念歪められた真実)や先入観(予備知識に基づく意見や態度)を持ち、バイアスのかかった態度を形成する、ということでした。

「うちはマダラ」とは?

自身を「世界の救世主」と称し、「無限月読」によって全人類を永遠の”幻術”にかけて、争いと憎しみに満ちた”地獄”の現世界を、争いがない永遠の平和が続く”天国”の幻世界(皆が夢の中にいて永遠に覚めることがない世界)へと導こうとした男ーそれが「うちはマダラ」です。

「平和な世界をつくる」ことが目的ではあるのですが、その手段が「幻術(いわば夢を見ている状態)」であることが、マダラを「ヤバい奴」にしています。
ですが、そんな思想を持つマダラのことも、彼の半生を振り返り、どのようにしてそのような思想を持つに至ったのかを社会心理学的に考察しようというのが今回の試みです。

マダラの半生

まだ『NARUTO』の舞台である「木の葉隠れの里」が存在していなかった時代ーうちはマダラは、後に「木の葉隠れの里」をつくり、里の長である初代火影となる千住柱間と出会いました。
世は戦乱の時代にあり、忍は一族で結託して争っていました。忍同士の争いでは、子供も含めて戦いに巻き込まれていたことから、平均寿命は30歳前後。そんな中、争いのない平和な世界にしたいと願っていたのが千住柱間です。
そして、うちはマダラも全く同じ気持ちを持っていました。マダラは5人兄弟でしたが、忍同士の争いにより今は唯一一人の弟を残すのみとなっていたのです。
二人は意気投合し、忍の世界の「平和な未来」を語り合う日々を送っていました。

でも具体的にどうやったら変えられるかだぞ
先のビジョンが見えないと…(千住柱間)

まずはこの考えを捨てねェことと自分に力をつけることだろが
弱い奴が吠えても何も変わらねェ(うちはマダラ)

『NARUTO』巻ノ六十五 ナンバー623:一望

そんな日々が続いていたある日、お互いの親が、違う一族の忍の子供同士(いわば敵同士)であるはずのマダラと柱間が仲良くしていることに勘づき、奇襲をかけたことからマダラと柱間は袂を分つことになります。そして、二人は気付けば、互いに一族の長になり、「成し遂げたかった夢」から一番遠い所にいました。

さて、その後、一旦はマダラと柱間は和解し、二人は念願の「里」を組織するに至るのですが、「木の葉隠れの里」の運営方針をめぐって、柱間以外の里の者達を信頼できなかったマダラは…「ある信念」を持つようになります。それが「うちはの石碑」を読んで知り得た情報をもとにした「固定概念」と「先入観」とも言えるものだったのです。

マダラの固定概念の源流=「うちはの石碑」

これはうちはに代々伝わる石碑
他族に見せたことは一度もない
解読するには瞳力が必要な特別な読み物
今オレが解読できるところまでにこう書いてある
”一つの神が安定を求め、陰と陽に分極した。相反する二つは作用し合い、森羅万象を得る”
これは全てに当てはまる道理だ
(うちはマダラ)

『NARUTO』巻ノ六十五 ナンバー625:本当の夢

これが、「うちはの石碑」に関して柱間と交わした会話で、その後の会話ではこう続きます。

オレは別の道を見つけた
現実をどうとらえるかだ、柱間…
…ただ卑屈なのはヤメにしよう…
この世はただの余興と見る方がまだ健全だ
オレと対等に争えるのはお前だけ
本当の夢の道へ行くまでの間…
お前との闘いを愉しむさ
(うちはマダラ)

『NARUTO』巻ノ六十五 ナンバー625:本当の夢

マダラの先入観=柱間にはわからない

そして、その考えを制止しようとする柱間に対して…

本当の夢って何だ…?
オレ達の目指したモンはこの里にあるんだろーが!!
(千住柱間)

お前には見えないのさ…
さらにこの先が…
先の夢が…
(うちはマダラ)

『NARUTO』巻ノ六十五 ナンバー626:柱間とマダラ 其ノ弍

「うちはの石碑」の内容が正しいことを信じて疑わないある種の「固定概念」を持ち、「柱間(そして他の里の者達も)にはわからない」と決めてかかる「先入観」を持ったマダラは、どんどん「うちはの石碑」を解読し、遂には行動に出るのですが…。

強まる「固定概念」

「うちはの石碑」は瞳力に応じて解読できる内容の深さが変わります。
徐々に瞳力を上げて、解読できる内容が増えることで、マダラの「固定概念」はさらに強くなります。

「うちはの石碑」には、人々は古来から互いに争いあっており、一人の姫が、争いを断つために「神樹」に宿る特別な果実により神の力を得て、一旦は争いを治めたものの、姫の子孫達が、引き継がれた神の力を利用したことで争いはどんどん凄惨になっていったと、記されていたのです。

それを知ったマダラは…

オレは…それを知って絶望した…
この世界に本当の夢は無いのだよ柱間!
その実に人が手を付けた時より
人は呪われ…より憎しみ合うことを決定付けられたのだ!
(うちはマダラ)

『NARUTO』巻ノ六十七 ナンバー646:神樹

最初の姫が得た神の力は、『NARUTO』の世界では「チャクラ」と呼ばれるもので、それは本来「繋ぐ力」でした。つまり、人と人精神エネルギーを繋ぎ、言葉がなくても人々が互いの心を理解し合うためのものだったのです。
しかし、人々は、いつしかその「繋ぐ力」を人同士の心を繋げるためではなく、自分自身の精神エネルギーと身体エネルギーを繋ぐために使い出したのです。
その結果、常軌を逸するほど身体能力の向上により得た「武力」、それが”忍術”であり、それを扱う人が”忍者”となったのです。こうして”力”を得た人が争い合うようになるのは「チャクラ」があるが故であったとも言えます。

この現実は”チャクラという力”によって無限の苦しみを強いられている
力があるから争いを望み、
力がないから全てを失う
オレはそれを乗り越えた新たな世界を造る!
無限月読によりいまわしきチャクラ無き夢の世界を造るのだ
(うちはマダラ)

『NARUTO』巻ノ六十九 ナンバー665:今のオレは

行動に出るマダラ

「うちはの石碑」を読んで知り得た情報から、無限月読という大幻術によって、争いのない永遠の平和が続く夢の世界を造る
そんな”高尚”な思想は誰も理解できないからこそ、そこに皆を導く救世主が必要で、それが自分だというのが「うちはマダラ」の物語であり、遂には無限月読を発動します。

出典:巻ノ六十七 ナンバー646:神樹

それに対して主人公ナルトやその仲間達がどう立ち向かうかは是非原作を読んでいただけたらと思います!

終わりに

「うちはマダラ」の物語はいかがでしたでしょうか。
そのラストは、かつては親友として接し、後に戦友となった千住柱間が、最期にマダラに語りかけた言葉で締めくくるとしましょう。

…急ぎすぎたな…
オレ達は届かなくてもよかったのだ
(前を歩き、皆を先導するよりも)
後ろをついて来て託せる者を育てておくことが大切だった
(千住柱間)

『NARUTO』巻ノ七十二 ナンバー691:おめでとう

漫画『NARUTO』を貫く深いテーマ「争いと憎しみ」が蔓延る世界とどう向き合うか、であると考えています。そんな『NARUTO』が問いかけるテーマについて、これまでのMAP(現代応用心理学)の学び直しを経て、7/9配信予定のEp43で改めて読み解いてみたいと思います!

【参考資料】
巻ノ六十五 柱間とマダラ
巻ノ六十七 突破口
巻ノ六十九 紅き春の始まり
巻ノ七十二 うずまきナルト!! 

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#考察
#社会心理学

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