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【生き物からのラブレター#17】生き物を守りたいのならまずは生物多様性を知ろう

私の専門はヒトデの系統分類学だ。その基礎を身に着け、方向性を決定づけたのが大学3年次の佐渡臨海実験所での系統動物学実習だった。

なぜ臨海実験所で系統動物学をやるのか?答えは簡単で、海のほうが圧倒的に多様な生き物がいるからだ。

人間は陸で生活しているから動物の生活圏は陸中心だと勘違いしやすいが、そもそも地球表面の7割は海だし、海の平均水深は3000m。圧倒的に海のほうが多い。

それに多細胞動物は海で生まれ、陸に上がってきたもののほうが少ない。だから系統分類学ではまず動物を体の特徴で約34のグループに分けるのだが、陸で見られるのはその半数。一方海ではほとんどすべての動物群を見ることができる。

なので系統動物学の授業はその約34のグループすべてを学ぶことから始まった。

ちなみにみんなに馴染みのある哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類はすべて背骨を持つ脊椎動物の仲間で、さっきの34グループの一つにすぎない。

普通の人がこれが動物だと思っているものはまさに氷山の一角なのだ!

いわゆる無脊椎動物と言われる残りのグループの生き物たちはヘンテコなものが多いし、顔がなかったり、顕微鏡でないと見えなかったり、、、一般的には馴染みにくい生き物たちだ。

気持ち悪いと思う人も多いかもしれない。見えない生き物、知らない生き物なんてどうでもいいと思うかもしれない。

でも彼らは確かに存在している。そしてプランクトンの世界の話と同じで、我々を支えてくれている地球の一員だ。

私はそんな海のほねなし(無脊椎動物)たちに夢中になった。一つでも多くの生き物をこの目で見たい、知りたい、存在を伝えたい。それが私のすべてだと思う。


生き物は神様が設計した完璧で不変な存在ではない。種というのはただの概念で実際には波の山の一部に名前をつけてるだけだ。ゆるやかにゆるやかに皆が繋がっている。

そして生き物は環境によって作られるものだ。環境に合わせて変化してゆく。私が過剰な生物保護があまり好きでない理由は、その生物だけを保護しても意味がないからだ。そして皆が大好きな可愛いらしく目立つものだけが声高らかに保護されるからだ。

それともう一つ。生き物は私たちに保護されなければいけないほどヤワじゃない。知ればわかる、見てれば分かる。なんと貪欲で逞しいか。

生き物は過去何度も大量絶滅を乗り越えてきた。それはやはり多様な生き物がいるからだ。どんなことが起こっても、その場を生き抜くものがいる。影響を受けない場所に適応しているものがいる。

そして絶滅が起こったからこそ生まれてくる新たな生き物たちがいる。私たちだって恐竜が絶滅しなければ存在しなかったかもしれない。

変化を恐れてはいけない。絶滅は悪いことだけじゃない。そのうちプラスチックやゴミに適応する生き物も出てくると思う。いや、すでにいるか。

困るのは人間だ。このまま汚染を続けていたら人間にとってはどんどん住みにくくなる。だから世界的にも危機感を持ち始めたのだろう。

勘違いしないでほしいのは、私は今ここに存在する生き物たちが大好きだ。人間も好きだ。決して絶滅して欲しいわけではない。

ただただ本当の生物多様性を知って欲しい。そして環境を画一的に平らに固めるのはもうやめよう。石の表と裏、それだけでも小さな生き物にとっては大きな環境の違いになる。

もっと系統分類学が一般的に知られるように、生き物の多様さとその重要性が分かるように、私はこれからも活動を続けようと思う。


☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

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