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私がBlenderのためにLinuxにした理由

BlenderはLinux上が一番速い

Macメインだった私がBlenderのためにWindowsに移行。その後しばらくしてLinuxに移行しました。その理由は、

・BlenderはLinux上が一番パフォーマンスが良い
・ベストパフォーマンスを引き出すのにMacという選択肢は(今の所)無い


からです。

LinuxでのBlenderのパフォーマンスに関する事は以前にも少しこちらのnoteで書きました。↓ 

最近新しいRyzen5000シリーズやAppleシリコン搭載Macが登場したりした事もありますし、今回は新しい情報を踏まえつつ、前回書き足りなかった部分をもう少し詳しく書いてみます。

Blender Open Dataを見てみると

「BlenderはLinux上が早い」は単なる私の憶測や妄想、あるいは特定OSファン的バイアスではありません。実際に同じマシン上でレンダリング速度を検証してみた結果と、前のnoteに書いた海外Yotuber達による「49%早い」というレビュー、そして公式の検証データでの結果に基づく「事実ベース」の話です。

まず、Blender公式サイトにある「Blender Open Data」の「Fastest CPUs」の項目を見て下さい。↓

こちらのグラフ上にカーソルをもっていくと、検証に使ったデータとBlenderのバージョン、そして実行されたOS名が出てきます。

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2020年11月現在、上位を独占しているのはAMDのRyzen Threadripperシリーズです。ここの中の殆どがLinux版となっています。Blenderへの移行に興味を持ち始めた去年辺りからこのOpen Dataをチェックしていましたが、今現在もこの傾向は変わりません。

ちなみに一番下の「Intel W-3245」の検証OSは「Darwin」となっています。「Darwin」はmacOSの基盤となっているOS名です。Xeonを積んでいるのはMac ProとiMac Proですが、iMac Proには16コアはありませんし使われているのはXeon W-2000シリーズです。

つまりこれは16コア版の「Mac Pro」と読み取れます。お値段「799,800円(税別)」(しかもRAM32GB・Radeon 580X・SSD256GBという最低構成で組んだ場合)のバージョンですね。
これだけの値段のマシンでもミドルレンジのPC(Windows/Linux)に及びません。

「Blenderのパフォーマンスを引き出すのにMacという選択肢はあり得ない」

というのがよく分かる結果です。Mac ProがいかにハイエンドMacと謳われようと、究極のワークステーションMacと謳われようと、Blenderの世界ではパフォーマンスを引き出すなら

Linux > Windows >>> Mac

です。あまりにコスパ悪すぎです。

(3950X+Linux) > (5950X+Windows)?? 


そしてまたここ最近、新たに興味深いデータ結果が出ていました。それは期待の最新Ryzen 5950Xでのデータです。・・・ところが、

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なんと、前世代の3950Xを超えていません。下回るスコア。これはおかしいぞ?と思って検証OSを見てみると、

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5950XはWindows、

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3950XはLinuxです。

どちらもBlenderのバージョンは2.90ですから、条件は一緒です。5950Xは3950Xよりかなり進化してるはずですが、この結果だけ見るとWindowsのパフォーマンスがボトルネックになっている可能性も十分にあります。
同じCPUでのLinuxでのパフォーマンスも早く見てみたいところです。

(※2021/4/16追記)
後日、使用OSがLinuxの最新5950Xデータで3950X(w/Linux)を超えたデータが追加されました。

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実際の私のマシンでの検証結果

次に、自分のマシンでの実証結果です。環境は
1) CPU : AMD Ryzen 3700X 
2) RAM : 64GB
3) GPU : NVIDIA GeForce RTX2060 SUPER

という構成です。WindowsとUbuntu Linuxをデュアルブートで切り替えながら、同じデータ・同じバージョンのBlenderを使い、Cyclesでのレンダリング速度検証を行いました。

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Windows 10:17.36秒
Ubuntu Linux 20.04LTS:13.66秒

という結果が出ました。何度かレンダリングさせたり他のデータも使って検証しましたがほぼ似たような結果が出ました。

公開されている一般的なベンチマークだけでなく、実際に自分が作業するデータではどうなのか?という部分が大事かと思います。

このような複雑な色を使っていないシンプルなデータのレンダリングでこのくらい差が出ると、これより複雑なデータはもっと差が出るように思います。

Blender界はWindowsとLinuxがマジョリティ

日本で一般的にOSといえば「WindowsかMacか?」ですが、Blenderの世界ではMacはマイノリティです。

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Windowsが圧倒的に多いのは理解出来ますが、OSシェアのイメージからすると意外な結果です。Macユーザーの貢献度が低いのか、LinuxユーザーにBlender愛があるのか、あるいはこのデータ通り単純にBlenderユーザーにはLinuxユーザーが多いのか。このデータだけから単純に実際のユーザー数を推測するのは難しいですが、「パフォーマンスデータ検証への貢献度」という観点で言えばこのグラフが概ね正しく表していると考えられます。

M1搭載MacでのBlender・ZBrushの未来は不透明

AppleがCPUをインテルからM1に移行したので今後変わってくる可能性はあります。しかしOpneGLやNVIDIAの非サポートでRTXなどBlenderと相性の良いGPUが使えない。ZBrushにしてもMac仕様インテルCPU瀑熱問題は未だ完全には解決されていません。

インテルMacにはもう期待できないのでMacでデジタルモデリングするならパフォーマンス向上を期待出来るM1搭載Macを選択肢に入れるべきですが、
とにかく現時点ではあまりに色々と未来が不透明です。

上位機種の高級高額マシンMac ProをもってすらミドルレンジWindows・Linuxマシンに及ばない現状では、「BlenderやZBrushを使いたいならMacはやめとこう」としか言えません。

こういうMacを下げるような事を書くとMacユーザーの怒りを買うかも知れません。しかし三股OSユーザーの私はまだMacも使ってるMacユーザーでもありますし、長年のMacファンです。なので

「元Apple信者の、バイアスを取り除いたフェアな意見」

と捉えて頂くと幸いです。

私としてはOS云々以上にBlenderやZBrushのパフォーマンスを少しでも引き出せる環境で使う事のほうが大事です。脱信者した途端に目が覚めてAppleのロードマップに合わせて生きる事が急激にバカバカしくなったので盲信はキッパリやめました。ギークですので製品発表プレゼンなどは今も見たりします。ただ、以前とは全く変わった視点・見え方で見ています。

「3 times faster than the best-selling Windows laptops!
(最も売れてるWindowsラップトップより3倍速い!)」


などとカッコイイプレゼンしても、今の私には全く響きません。シラフになってしまった私にはもうだめなのです。「一番早いWindows」ではなく「一番売れてるWindows」とかトリッキーな言葉ばかり。白々しくてもう信じません。なのでMacでBlenderやZBrushという選択肢は現時点では1ミリもなし、という結論です。

まとめ

Ryzen 5000シリーズの「5900X」の購入を検討中です。ですが初期ロットは発売日にあっという間に完売となり、現在全く入手出来ません。なのでここ最近はBlenderでのCPUパフォーマンス情報をいろいろと追っています。そこで拾ったり目にした情報と所感を備忘録としてまとめてみました。5950X以外の5000シリーズでのBlenderパフォーマンスも見てみたいですし、早く自分でも導入したいところです。

【追記・2022/04/16】M1登場その後

この記事を2020年11月に書いてからおよそ1年半が経過しました。この1年半の間に、
・M1の登場、AppleのBlender開発への支援参加、Metalの躍進
・私事=Ubuntu から Pop!_OSにメインOSを切り替え
・私事=Ryzen 3700Xから5950XへCPUをアップグレード

などなどの変化がありました。

Pop!_OSに移行した経緯はこちらに詳しく書きました↓。

超かんたんにまとめると、「NVidiaカードへの対応が一番良いLinux」というのが最大の理由です。あと、私もサブPCで使っているManjaro Linuxもなかなか良いです。LinuxでNVidiaのGPU使ってBlender使うならこの2つがオススメ。

Macに対するメリット


M1時代に入り、さらにM1 Ultraというマルチコアまで登場。Blender(というよりNVidia有利のBlenderに対する)塩対応だったAppleがまさかのBlender支援に参加。「MacでBlender」ユーザーも増えた印象です。

M1 Ultraを搭載したMac Studioも登場し、「Blender使うならMac」という選択肢も普通になりました。しかし、私の見解では、アップグレードやパーツの選択肢の自由度、トータルコストパフォーマンスの観点から見て、今の所まだまだカスタムPCでLinuxでBlenderマシンを組む方が上、というのは変わりません↓。

現在私の使用している「Ryzen 5950X(16コア)・64GB RAM・1T SSD+6T HDD)は30万クラスの予算で組んだものですが、同等のMac Studioを買うと50万超クラスになります。コア数も20コアと多いですがそれでもRyzenマシンより遅いので、割に合いません。

また、Blenderで3DCGデータを作っていくと、保存データも膨大になります。Mac Studioだと外付けの追加ストレージが必須になります。自作カスタムPCだと内蔵ディスクに追加SSDを増設したり、6TBとか8TBの保存用ディスクを安価で導入してそこに定期的に自動バックアップさせるシステムを1台完結で組めるのも大きいです。

Windowsに対するメリット

古いハードウェア(旧世代Core i3-i5やCeleron)のWindows10マシンに最新のBlenderをインストールしようとすると跳ねられる事もあります。しかし、LinuxならCeleron搭載の低スペックPCであってもBlenderはちゃんとインストール出来、簡単な作業ならそこそこ快適に動きます。

Windowsがどうしても捨てられない人も多いので、使っているハードがそろそろ古くなったなということで新しいハードを購入したら、旧マシンを捨てる前に一度Linuxを入れてBlender専用マシンにしてみる、というのが一般的には現実的なBlender+Linux導入方法かもしれませんね。私も最初のきっかけはそうでしたので↓。

ではまた。

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