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企業内で立ち上げる!新規事業を成功させるコツ

2019年2月にCNET JAPANが主催する「CNET Japan Live 2019 新規事業の創り方--テクノロジが生み出すイノベーションの力」というイベントで登壇をさせて頂きました。

このイベント登壇が、新規事業を立ち上げた過去を思い返すキッカケとなったので、noteに残そうと思います。

念のため事前にお伝えをすると、自身の経験談のため、新規事業全般を俯瞰した情報ではありません。マニュアル的な情報を求めている方には期待外れかもしれません。

とはいえ、未知だった不動産テックという領域で、どのように新規事業を作り出していったのかを自身の経験からなるべく具体的に書き残そうと思います。

新規事業の成功確率

新規事業に関連した情報サイトやビジネス書を読むと、新規事業の成功確率は3%だったり、5%だったり、はたまた10%〜30%だったりと、情報源によって成功確率に一貫性がありません。

※出典:日本政策金融公庫 2013 「中小企業の新事業展開に関する調査

何をもって成功なのか?など、定義次第で差がでるでしょうし、既存事業の横展開や、現行事業から派生する副次的な事業も成功確率が高いでしょう。とはいえ、一般的に新規事業の難易度は高いと考えることが普通だと思います。

こんな、失敗の可能性が高い新規事業を面白いと感じる理由は、私が単にドM?というわけではなく、新規事業でしか味わえない醍醐味があるからです。

なんというか、世の中に新しいものを生み出し、そのサービスを社会から評価して頂ける楽しさが味わえます。また、新規事業の立ち上げ前は泥臭さを味わうわけですが、そういった逆境と向き合うことで、自然と自身の能力が最大化されていく過程を感じることができます。これは、一緒に向き合ってくれるメンバーも一緒で、そういった各自の能力に出し惜しみがないチームワークがまた面白いのです。(やはりドMなのかもしれません…)

新規事業のテーマに興味がなかった

2015年のことですが、新規事業担当者として、インターネットメディアを運営する会社へ転職をすることになりました。社長直下プロジェクト的なやつです。

前職はamazonでウェブディレクターをしていたので、面接に行くなり『不動産は面白いんだよー!』と、社長自ら不動産業界の魅力について熱弁され、正直かなり尻込みをした記憶があります。

そのときは、不動産知らないし、正直にいえば興味がないかなぁ…という感じで。笑

当時の印象が薄れつつありますが、少なくとも一般的な見解として、不動産業界はレガシー産業であり、IT活用が浸透していない印象はあったと思います。

日常の中で、街で目にする光景から、そんなイメージを持っていました。例えば、新築マンションの看板を持ったまま、ヨロヨロスーツの人が終日立ち尽くしていたり、マンションのポストには未だに大量の物件チラシが押し込まれていますから。

そんなこんなで、不動産売買市場をターゲットとした新規事業担当者として、400名規模のIT企業に入社をすることになったのです。

残念ながら、この時点の私は、これから立ち上げようとしている「不動産」というものに興味がありませんでした。

新規事業を成功へと導く大切なポイント

さて、企業の中で新規事業を成功させる最大のポイントはなんでしょうか?

私が経験をした新規事業プロジェクトを思い返してみると、上手くいったプロジェクトには必ず共通項があります。

その、共通項は『権限のある役員レベルの人が、その新規事業にコミットメントをしてくれること』です。

なぜか?

企業内で新規事業を立ち上げることと、自らが起業をすることの大きな違いは、自身の上に決裁者がいるか、いないかです。起業時にVCから資金調達をしたり、資金援助をしてくれるオーナーが別に存在する場合は、少し違うかもしれませんが…。

そして、新規事業の事業担当者からすれば、この決裁者の有無がプラスにもマイナスにも作用します。

自らが起業をして事業を作るのであれば、社長となる自分の責任で、自由に事業方針や内容を決めることができます。

もちろん、起業は自らの資金を削るという恐怖や、事業で活用できるアセットが乏しいなど、企業内で立ち上げる新規事業とはまったく違う難易度があります。

ただ、企業に属した社員が新規事業を起こす場合、起業とは異なり決裁者から承認を受けるプロセスが不可避です。企業規模にもよりますが、アセットが一定潤沢にあるなどメリットもありますが、企業ブランドを傷つけないために、法務、経理、広報など、コーポレートサイドの規制も確認・調整しながら、事業の詳細を決定するなど、起業とは違った規制の中で立ち上げが求められます。

このように、各所で承認が必要となる新規事業は、権限が強い決裁者が味方にいることで、調整難易度が緩和され、事業に集中することができます。

決裁者や役員が敵陣ばかりの環境ですと、事業企画を一生懸命にプレゼンテーションしたところで、即刻ボコボコにされます。

『市場的に難しいのでは?』
『既存事業と重なって喰い合うのでは?』
『ターゲット選定は本当に合っているの?』

とかです。

担当者は何度も企画書を作り変え、数少ない役員会議の隙間時間を取りつけても、結果はダメ出しの連続となりますので、疲労困憊していきます。

これでは、新規事業のスタートができません。もちろん、企業としてのガバナンスも重要ですが、新規事業の企画というものは、ダメ出しがしやすいのです。役員陣の経験がない分野や、想像が難しい事業であればなおさらでしょう。

だからこそ、役員レベルの人がその新規事業のフォロアーにいなければ、プロジェクトメンバーは孤独な旅に出ることになります。

無事に承認がされたとしても、この孤独な旅の先で待ち受ける不可測な壁を乗り越えなければいけません。そんな難しい旅を進めているのに、『売上が上がっていないじゃないか!』『だから、最初から反対したんだ。』などと言われれば、いつしかプロジェクトメンバーの顔は暗くなり、最初に感じていたワクワク感も絶望感に変わり果てます。

本来、新規事業とはワクワクして楽しいものです。そこを一緒に共感し、応援してくれる役員がいなければ、プロジェクトは上手く前には進まないでしょう。

逆に新規事業の事業担当者は、どれだけ必死に役員レベルの人を巻き込めるかが重要です。

良くある失敗例としては、新規事業の担当者が『自分の考えが通らない!』と、不平不満に陥ってしまうパターンです。仮に、こんな感情が湧き上がってくるようであれば、社内で自分の意見が通りやすい仕組みが構築できていないのかもしれません。または、まわりが応援してくれる環境構築ができていないのかもしれません。新規事業担当者は企画の初期段階から、決裁者との信頼関係や、応援をしてくれる仲間作りという能力が求められているのです。

まとめると、新規事業を成功させる大切なポイントの1つは、役職者を味方につけ、社内環境整備や仕組み化に時間を使うことです。役職者に迎合をするとか、甘えるという意味ではなく、事前に権限がある人物を味方にして、共にコミットメントを分かち合わなければ、新規事業の成功は難しくなります。こういった巻き込み力や、人を中心とした社内環境作りが、新規事業に必要な工程であることを意識しているかどうかが、事業成功の分かれ道とも言えます。

新規事業の情報集め

先ほどの通り、私が新規事業にジョインをしたときは、不動産業界なんて知らないし、興味もありませんでした。

プロジェクト発足から2ヵ月程で、この事業に関わるメンバーは6.5名まで増員されています。

このメンバーと一緒に事業を作り上げるために重要なことがありました。それは私が事業の意義を心から感じることでした。

ここからは、新規事業立ち上げの経験から、より具体的で効果的だった手法に限定してお伝えします。

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