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【O-14】9/10 文学フリマ大阪 短歌集【サンプル】

9月10日㈰、下記の文学フリマ大阪に出店します。
この記事では当日頒布する本のお品書きとサンプルを掲載いたしますので、是非ご覧頂ければと思います。(余った在庫はBOOTHにて通販を行います)

お品書き

『きみ、想う恋のうた』私のYouTubeのメインチャンネルで投稿している、先生と生徒の恋をテーマにした短歌集です。
『空の青』私の短歌用チャンネルで投稿している、夏をテーマにした短歌集です。


サンプル

『きみ、想う恋のうた』


「誤解していて。」(新作)、「贅沢な願い」(過去作品)、「君休み」、短歌にまつわるエピソードを収録しています。
こちらのサンプルでは、「誤解していて。」から数首、「贅沢な願い」「君休み」から全文、エピソードを数話掲載しています。

「誤解していて。」

教員の君の言葉は平等で誰にでも降る雨と同義だ

提出するノートはきっと二人だけの交換日記と思いたい恋

「青春を謳歌しろ」と言う君に要らない春もあると言いたい

卒業は消えてゆかれることかもと竹物語に気付かされてく

犯罪と言われてむきになりそうになって〝子ども〟と思い知らされる

しばらくは誤解していて。好きの意味に齟齬がなければ居られないから


「贅沢な願い」

大好きな君の背中を見つめてる一番前の特等席で

赤い糸の行方をいつも探してるチョークを持った小指の先の

君からの「頑張ってるね」それだけを聞くためノートを綺麗にまとめ

放課後の二人きりの授業だけ呪文もすべて憶えていられる

吾にとってこの三年は青春であなたにとってはただの三年

片道の切符いつから持っていた? 叶わぬ恋の乗車の旅に

誰にでも優しいからこそ好きになり嫌いになりたい恋になったの

縮まらぬ距離と年齢、身長も 全てが空を切る遠い君

自転車を挟んで帰る夕日など「もしも」ばかりが膨らんでいく

教室の温度にひたる放課後は今日のあなたを記憶する時間

独り占めしたいと思う感情の暴走を知る初恋のふち

筆箱の中身も私服の色味さえ君のベストの藍色になる

少しだけ触れた手のひら思い出し赤いモミジと握手してみゆ

迷惑と分かっていながらわざとして許される時の特別に酔う

これ以上堕ちぬと決めた心さえ壊してしまう笑みは呪いだ

好きなのはただの憧れなんでしょと見下す本気を知らぬ人たち

「本気じゃん」嘲笑まじりのいじりには「当たり前じゃん」と笑ってあげる

叶わない恋だと笑いたけりゃ笑え青春賭けて闘えるなら

許されぬ恋だと決めた知りもしない賢い人を恨めしく思う

君といる幸せありて我といる不幸せある片恋の刻

朧気になってはいけない禁断の境界のふちに立っている我

踏み込めば砕けてしまう関係にヒビを入れたくなる在学中

我の世は君を核として廻ってる地球を見つめる太陽のごと

そばにいるだけで他には望まない謙虚なようで贅沢な願い

戻れない春想う君、今の恋願う君もみな間違ってない


「君休み」

迷信すら信じたくなる占いの本ばかり読む図書室の隅

もうすぐで八時を回るゆっくりと歩かなければ君に会えない

偶然を作り出すには必然を知らねばならぬ時間割から

恋人の別れ話の歌流行り付き合えている恋を羨む

縋りたくなる日は君と吾の星座占い結果で心慰め

いつもより丁寧に書く文字のなかあなたの名前の漢字が一つ

「可愛い」と思われたいの頑張れど言ってはならぬ立場の君に

成績表見た親の言う「数学だけよくなってるね」に目の泳ぐ夏

月曜日早く来いよと願ってる日本国民私だけ説

推しという文化に助かり推しという文化に妬むガチ恋の壁

汗さえも神の雫に見えるほど輝いている恋をしている

楽しみにしていた可愛い制服が三年間の足枷となる

その笑みも言葉も声音も本当であってほしいと願う関係

過ぎ去って行くのか青春 教室に私を残して行かないでくれ

憧れが好きのはじまりだったのか憧れゆえに好きになったのか

触れたれば弾け泡となる春に人魚のごとく溺れるでなし

この恋はドン・キホーテか十八禁のれんの向こうに行かねばならぬ

夏冬の長期休みも心根は二十四時間 君休みなし

寝入りばな羊の数に負けぬほど君に恋した理由も言える

ヒロインになればバレるわ脇役で虎視眈々と狙う娘であれ


〈実録〉 先生と生徒の恋エピソード ~短歌に乗せた想い~

提出するノートはきっと二人だけの交換日記と思いたい恋

 ノートって提出して、返ってきて、提出して、返ってきてを繰り返しますよね。それってなんだか、交換日記に似た性質を持っていると思うんです。
 ただ提出点をつけているだけの作業であるのはわかっているんだけど、自分が書いた小さなメモに花丸がついてあったり、「見ましたサイン」のスタンプが毎回変わっていたりすると、日々の変化を共有しているような気持ちになりませんか? もちろん、同じことを何十人、何百人としているんだけど、二人だけの空間だって思いたくなる。そんな恋だと思うんです。
 私はノートを提出するタイプの授業じゃなかったからこの経験をしたことなくって、ちょっと羨ましいなーと思いながら作りました。

卒業は消えてゆかれることかもと竹物語に気付かされてく 

 それは古典授業のこと。かぐや姫が記憶を消されて月に帰らされてしまうシーンで、私は先生の姿が頭を過りました。月に帰るという行為に、自分の卒業が重なったのです。
 私は卒業というものを、結構前向きに考えていました。先生と生徒じゃなくなるし、出来ることもやれることも自由になるのが卒業だと考え、卒業してからがスタートライン! と。けど、竹物語に気づかされてしまったんです。卒業したら、覚えているのは私だけかもしれないって。
 私が重ねたのは月に帰る姫ではなく、月に帰ってゆくのを見る男たちの方でした。
 恋していた、焦がれていた、それを証明する言葉や行為の全ても、私のなかにしか残らないんじゃないか? 彼の記憶は薄らいで私がいたことさえも、消えてしまうのではないか? 卒業して、彼がその後も関わってくれる保証はないという不透明さに、あまり気がついていませんでした。より、頑張らなきゃ! という気持ちにはなったのですが、焦燥感を持った頑張るにかわった瞬間でした。



『空の青』


「夜の余白」(新作)、「空の青」(過去作品)を収録しています。
こちらのサンプルでは、「夜の余白」から数首、「空の青」から全文掲載しています。


「夜の余白」

水色の景色の下でレモネード 私の体に夏閉じ込めて

玄関の扉を開ければ墓地である 空に焦がれて逝く虫の群れ

浅はかに夏を感じた飲めやしないクリームソーダーの洒落たポスター

海面は既にぬるくて深く深く夏を癒しに群青に染む

太陽に溺れてセピアの陽炎が浮かんで僕は死を垣間見る

セーラーの襟が夏風に攫われて下りの坂にカモメはためく

ボタボタと花火は音を立てながら垂れて夜の余白を埋める

思い返せば何も成し遂げぬ夏だった 現実的な夏を詠めない


「空の青」

エジプトのような夏から下校して冷えた麦茶のオアシスを知る

青空に架かりし虹を覗き見る雨の残した鏡の中で

空の青に煙のごとく立ちのぼる入道雲とその子どもたち

夏の陽がレースのカーテンすり抜けて陶器な肌にタトゥーを落とし

くすのきの相合傘で鳴いている蝉の求愛 我の告白

片恋を握りしめるたびぼやけゆく君の姿は陽炎になり

風情など気にしない君が風鈴の音に微笑む風情知る僕

輪郭をなぞって落つる君の汗ひとつぶ、ふたつぶ、ただただ眺むる

現代は凍えるよりも溶かされて消えそうになる夏越しの日々

懐メロの夏のうたの歌詞涼しげで時代感じる令和の酷暑

この星は人の利便に患った科学の病にうなされている

「かき氷シロップ全て同じ味」それでも選ぶいちごシロップ

杏色の電車とともに帰りたい一人じゃ切符も買えなかった頃

オレンジと紺が混じった濁色は夕日を立てる昼夜の境界

夕暮れが侵食してく空色は灯台照らす海の波のよう

オレンジが紫色と溶けあって夏の日暮れを思うカシオレ

星くずが海のほとりに降りそそぐ願い事さえオンラインから

ゆらゆらと光の粒を煌めかせ闇夜の波を泳ぐ夏星

海の青、空の青、葉の青は人にない色だからより美しき

日没の五時も日の出の五時も鳴く太陽時計のひぐらしの声


おわりに

最後に、文学フリマ大阪11は

場所:「OMMビル2F A・B・Cホール」
日時:9月10日㈰ 11時~17時
入場料:無料
となっています。

私のブースは会場の一番奥の【O14】、サークル名は【ひすみのうたつくり】です。

よかったら来てください~!
それではまた、どこかで~!







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